連載

機体の離陸を手助けするセミレバード・ランディングギア ~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
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【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

 ボーイング777-300ERのメインランディングギアは、セミレバードあるいはセミレバー式と呼ばれる仕組みだ。わかりにくい名前だが、「レバー」は「てこ」のことで、小さな力や動きを大きな力や動きに変換する。

 ただし777-300ERのメインランディングギアは「てこ」とまったく同じとはいえないので「セミ(準)」と冠している。日本語には、まだ適当な訳語はない。

777-200と777-300ERの離陸。
777-200と777-300ERの離陸。メインランディングギアはどちらも同じように後部が下がっているが、777-300は油圧の力によってこの角度に固定されている。

 777のメインランディングギアは、翼から伸びるショックストラットに、ピンを介して6本のタイヤをつけたトラックビームをつないでいる。

 地上ではすべてのタイヤが地面に接しているが、離陸滑走で速度を増すと主翼に発生する揚力によりメインランディングギアにかかる荷重が小さくなり、さらに機首を上げることで地面を離れる。

離陸する777-300ERのメインランディングギアのアップ。
離陸する777-300ERのメインランディングギアのアップ。機首を上げることで揚力が増しているため、最後方のタイヤだけでも機体を支えることができる。

 ただし、同じく胴体が長い777-300のメインランディングギアはセミレバー式ではない。その違いは重さにある。

 777-300の最大離陸重量が約300トンであるのに対して、長距離を飛行するために多くの燃料を積む777-300ERは約350トンだ。

 より重い機体を離陸させるためには、より大きな揚力が必要であり、そのためにはより速度を大きくするか、より迎角(引き起こし角)を大きくするといった方法がある。しかし重い機体は加速に時間がかかる(長い滑走距離を要する)し、胴体が長いと引き起こし角にも限界がある。

 そのままでは就航できる空港が限られてしまうので、777-300ERは推力の大きなエンジンを装備するとともにセミレバード・ランディングギアを装備したのである。

777-300と777-300ERのメインランディングギア(左右の向きは違っている)。
777-300と777-300ERのメインランディングギア(左右の向きは違っている)。ショックストラットとトラックビームを結ぶ油圧アクチュエーターの有無が識別点となる。
セミレバード・ランディングギアの油圧アクチュエーターのアップ。
セミレバード・ランディングギアの油圧アクチュエーターのアップ。構造が複雑化し、重量も増えるので、同じく胴体の長い777-300には採用されていない。

 同様の機構は、787ファミリー最長の胴体を持つ787-10にも採用されており、こちらは国内線用でも国際線用でもセミレバード・ランディングギアとなっている。

787-8の着陸と787-10の着陸。
787-8の着陸と787-10の着陸。やはりどちらも同じように後方が下がっているが、787-10のメインランディングギアはセミレバー式となっている。
同じ角度から見た787-8と787-10のメインランディングギア。
同じ角度から見た787-8と787-10のメインランディングギア。787-10には777-300ERと同様にショックストラットとトラックビームを結ぶ油圧アクチュエーターがある。

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