連載

”旅客機用の輸送機”、ずんぐり胴体の特殊飛行機 ~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
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【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

 エアバス旅客機は、胴体や主翼などをヨーロッパ各地で分担して作り、それを専用に作られた特殊輸送機で最終組立ラインに集めて組み上げている。

初期のエアバスで輸送用に活躍したスーパーグッピー。
初期のエアバスで輸送用に活躍したスーパーグッピー。もともとはNASAがロケット運搬用にC-97輸送機を改造したものだが、さらにエアバスが改良して4機が作られた。

 最初に作られた特殊輸送機は、中古のC-97(ボーイング377旅客機の軍用型)を改造して巨大な貨物室を設けた377SGTスーパーグッピーだ。

 エアバスはこれを4機改造して使用したが、おかげで「エアバスの旅客機はすべてボーイング機で運ばれている」と揶揄されることにもなった。そんな声は無視するとしても、もともと古い機体を改造したものなので、老朽化につれて整備などの維持がむずかしくなった。

スーパーグッピーはコクピットを含めた機首を開いて貨物を搭載する。
スーパーグッピーはコクピットを含めた機首を開いて貨物を搭載する。操縦ケーブルなどは開閉のたびに切り離しと接続が必要で、その教訓はベルーガに活かされた。

 そこでエアバスは、1994年に新たにベルーガSTを開発し、5機を製造した。これはA300-600をベースにしているが、改造ではなくすべて新造機だ。さらに2018年にはA330-200FをベースとしたベルーガXLを開発し、6機を製造している。

A300-600をベースに新造されたベルーガST。
A300-600をベースに新造されたベルーガST。コクピットを低く下げることで長くフラットな貨物スペースを確保した。「おでこ」にあたる部分が上方に大きく開く。
エアバス施設にはベルーガの専用ドックがあり、天候に影響されずに搭降載作業を行なうことができる。
エアバス施設にはベルーガの専用ドックがあり、天候に影響されずに搭降載作業を行なうことができる。また高所用の作業台を仮設すれば一般空港でも運用できる。
ベルーガSTの基本形はそのままに、A340-200Fをベースにより大型化したベルーガXL。
ベルーガSTの基本形はそのままに、A340-200Fをベースにより大型化したベルーガXL。機体規模はドリームリフターより小さいが、貨物室のサイズはずっと大きい。

 またボーイングも、787用に特殊輸送機ドリームリフターを開発し、4機が日本を含む各地の製造拠点を結んでいる。

 ドリームリフターは、中古の747-400を改造したもので、エアバスの歴代特殊輸送機よりもさらに大きいが、貨物室のサイズは小さい。

セントレアでは常連のドリームリフター。
セントレアでは常連のドリームリフター。747-400がベースで、貨物室の前に機首を長く伸ばしているため、機体全長のわりには貨物室が小さくなってしまった。

 エアバスの資料によれば、ドリームリフターの貨物室は幅6.3m×高さ6.9m×長さ30mだが、ベルーガSTは7.1m×6.7m×39m、ベルーガXLは8.1m×7.1m×46mだ。

 スーパーグッピーは、最も太い断面部分が7.6m×7.7mで、細い部分も含めた長さは33.8mある。

胴体後部を尾翼ごと折り曲げてカーゴドアとしている。
胴体後部を尾翼ごと折り曲げてカーゴドアとしている。尾部の開閉や搭降載のためには専用の地上支援車両が必要になるため、限られた空港のみで運用可能だ。

 ドリームリフターは787の輸送に特化しているため、貨物室のサイズもそれに合わせてぴったりに決められた。スーパーグッピーは787よりも胴体が細いA300(A330やA340も同じ径)の輸送に使われたが、こちらは太いサターンロケット(S-IVB。直径6.6m)の輸送用に開発された飛行機なので十分すぎる余裕があった。

ドリームリフターは、787のコンポーネント輸送専用に747-400を改造して作られた。
ドリームリフターは、787のコンポーネント輸送専用に747-400を改造して作られた。貨物室内径は787の胴体ぎりぎりに作られており、無駄はないが余裕もない。

 とはいえ太い胴体は空気抵抗でも重量でも不利になる。そこで新規開発のベルーガSTはやや細身にしたが、余裕は残していたので胴体が太いA350も積むことができた。そしてベルーガXLは貨物室の断面、長さ共にさらに拡大したのである。

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