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エア・インディア塗装の787-9に、PD-8エンジン搭載のSJ-100も。「Wings India」現地ルポ

2年に1度開催されるインドの民間エアショー「Wings India」。1月末に開催された2026年の模様を、現地からレポートする。

文:Arjun Sarup 写真:Arjun Sarup
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エア・インディアが初めて自社仕様で受領した美しい787-9が、エアショーでの展示に向けて夕刻のベーガムペート空港に到着。

軍用エアショーの「Aero India」と交互に、2年に一度開催

 2008年から開催されているインドのエアショー、「Wings India」。2026年は1月28日から31日にかけて、ハイデラバードのベーガムペート空港で開催された。エアショーの開催が珍しいインドだが、「Wings India」は防衛系のエアショー「Aero India」の民間版として位置付けられ、両イベントはそれぞれ隔年で交互に開催されている。

 インド商工会議所連合会(FICCI)が民間航空省および空港局と共同で開催するこの小規模なエアショーは、実態としては貿易イベントであり、毎回新たな試みをもたらすことを目指している。人口14億7,000万人を擁すインドの需要を支えるために拡大を続ける、成長著しい自国の民間航空・航空宇宙産業の現状を発信するプラットフォームなのだ。

 民間航空担当大臣によれば、インドは世界第3位の国内航空市場を持つ国となった。インドで運用中の空港の数は現在160以上にのぼり、2014年の74空港から2倍以上に増加している。インド政府の地域航空網拡充計画「UDAN」の下、この数は2047年までに350空港となる計画だ。中でも最後まで残る空白地帯を埋めるために、運賃の上限額を設定し、一般市民でも飛行機を利用できるよう空の旅を“民主化”するとしている。民間航空担当大臣も「空の旅はもはやエリート層の特権ではない。インドの空は今、飛ぶことを夢見るすべての人々を歓迎する」と述べている。

 「Wings India」には、航空機やヘリコプターメーカーから航空会社、航空機機器や設備のメーカー、MRO企業、グランドハンドリングや貨物会社、空港インフラ関連会社、エアタクシーやドローン関連会社、技能開発機関まで、約144の参加者が出展し、業界関係者向けのトレードデーと一般公開デーの両方で高い来場者数を記録した。エアバスが広大な展示スペースを用意したほか、ボーイングが子会社であるウィスク・エアロの4人乗り電動垂直離着陸機(eVTOL)エアタクシーのコンセプトモデルを展示。またインドが島嶼部の接続性向上のため水上機導入を推進する中、自国の航空機メーカー、ヒンドスタン航空機(HAL)が手がける水陸両用仕様のドルニエDo228などの展示も注目を集めた。

ボーイング機の展示のうちの1機、エア・インディア・エクスプレス初の自社仕様の新造737-8。尾翼はパーシー・ガラ刺繍のデザインだ。同社は全機体にインドの豊かな文化と伝統を反映した独自のモチーフを施している。
エアバスA220でフリートが統一されているエア・バルティック。今回は2025年12月30日に納入されたYL-BTBが展示された。

エア・インディア・エクスプレスの最新機材など、ジェット旅客機の展示機

 ボーイングの地上展示機としては、アカサ航空とエア・インディア・エクスプレスの737-8が並べられた。後者(登録記号VT-RNT)はエア・インディア・エクスプレスにとって初めて自社の仕様で製造された新造機であり(これまでは他社向けに製造され、引き渡されなかった機体を受領していた)、これまでの機体と同様、1機ごとに異なる塗装の垂直尾翼や客室のムード照明を備えている。登録記号のVT-RNTは、インドを代表する実業家・慈善家であり、エア・インディアの親会社、タタ・グループの会長であった故ラタン・ナバル・タタ氏に敬意を表して付けられたものだ。

 またエアバスは、エア・バルティック向けの最新のA220-300(YL-BTB)と、インディゴのA321neo(VT-NHL)を展示。後者は2クラス仕様で、横2-2配列の「インディゴ・ストレッチ」リクライニングシート12席を備える。なお、インディゴは1月に同じ2クラス仕様のA321XLR初号機を受領している。

 さらにエンブラエル機については、E195-E2「プロフィット・ハンター」がインドで初めて展示された。用意されたのはモンゴルのフンヌ・エアの機体(登録記号EI-HUU)で、ウランバートルからカザフスタンのアルマトイでの給油を経て、ハイデラバードへやって来た。なお、フンヌ・エアはデリーへの定期便就航を目指している。また、今年の「地域接続性における最優秀航空会社」に選ばれたスター・エアのE175LRも展示。同社は地方路線にビジネスクラスを装備した2クラス仕様の機材を投入するインド唯一の航空会社である。

2025年12月23日納入のフンヌ・エアの最新機、E195-E2は、印象的な塗装が会場で際立っていた。本イベントに参加するため、はるばるモンゴルからやって来た。
スター・エアーが保有する8機のE175LRのうちの1機が夕方の出発に向けタキシング。同社は最近「地域接続性における最優秀航空会社」に選ばれた。
スター・エアはE175LRにビジネス12席、エコノミー64席の2クラス仕様の客室を装備するインド唯一の地域航空会社であり、温かくプロフェッショナルなホスピタリティが魅力だ。

今回も最新の導入機で注目を集めたエア・インディア

 前回の「Wings India 2024」でインド初のエアバスA350を公開し話題を呼んだエア・インディアは今回、同社専用仕様で納入されたボーイング787-9を商業運航に入る前に披露し、再び注目を集めた。 2026年1月9日にデリバリーされたこの登録記号VT-AWAは、輝きを放つ新塗装を纏い、ビジネスクラスには横1-2-1配列のスイート30席を装備。このシートは全長約200cmのフルフラットベッド(シートピッチ約107cm)と17インチの4K QLED HDRタッチスクリーンを備える。

 またプレミアムエコノミークラスは横2-3-2配列で28席あり、シートピッチは約81cm、13.3インチの4K QLED HDRタッチスクリーンを装備。そしてエコノミークラスの客室には快適性を向上させた238席が並ぶ。また客室では新たなムード照明に加え、一新されたドリンクとグローバルな機内食メニューが提供される。

エア・インディアの最新の787-9には、横1-2-1配列のビジネスクラススイートが30席設置されている。
ビジネスクラススイートはフルフラットベッドと17インチ4K QLED HDRのタッチスクリーンを装備。機内食では一新されたグローバルメニューを提供する。
一方のプレミアムエコノミークラスは、シートピッチ81cmの座席が横2-3-2配列で28席並ぶ。

“空のブガッティ”など、ジェネラルアビエーションの展示機

 一方、ヘリコプターの展示において最も注目を集めたのは、ヘリコプター運航会社であるチップサン・アビエーションが保有するエアバスH125と、インド初のエアバスH160BであるVT-RGRであった。 “空のブガッティ”の異名を持つほど完璧に造形されたこの機体は、先進的な空力特性、軽量な複合材料、グラスコクピット、そしてパイロットの作業負荷を軽減しつつ安全性を高めるデジタル計器システム「Helionix」が特徴。さらにローターには騒音と振動を低減する「BlueEdge」ブレードを採用している。特に注目に値するのは、12度傾斜した「Fenestron」尾部ローターと複葉式の水平尾翼で、低速安定性を向上させている。また、2基のサフラン製アラーノ1Aターボシャフトエンジン(1,300馬力)は、片発停止状態での飛行も可能としている。

 ジェネラル・アビエーションの分野では他にも、地元のパイロット養成学校で使用されている訓練機がいくつか展示されていた。航空会社が機材を増強する中、パイロット養成の強化も必要なのは明らかである。こうした背景から、国立航空宇宙研究所(NAL)が製造する国産の訓練機、Hansa-NG(登録記号VT-HNH)もイベント期間中毎日飛行した。一方でビジネス航空機の分野では今回、ピラタスPC-24が1機展示されたのみであった。

 リージョナル機部門の展示機には、HALライセンス生産するドルニエDo228、ヒンドゥスタン228の姿もあった。ヒンドゥスタン228は現在、アライアンス・エアで17席仕様機が1機運航されているのみである。他にもガーミン製G3000グラスコクピットを搭載し、客室をエア・アンビュランス(救急搬送機)仕様にすることも可能なLET L-410NGが展示された。なお、前回開催時にもエア・アンビュランス機であるエアバスEC135 P2+(チップサン航空が保有)とセスナ・サイテーションジェットCJ2+が展示されていて、インドにおける救急医療サービス(EMS)機の需要拡大を示唆している。

闇夜にまるで宝石のように輝く、チップサン・アビエーション所有のインド初となるH160B。「BlueEdge」ローターブレード、「Fenestron」尾部ローター、複葉式スタビライザーなど、68の特許技術を搭載。先進技術と優雅さが調和している。
H160Bのキャビンには、MAG製のプレミアムレザーと木目調のパネルを掛け合わせた回転式のアームレスト付きシートなどを装備した「STYLENCE」内装を採用している。

他のエアショーでは見られなくなったロシア勢。インドでライセンス生産へ

 HALは1960年代にホーカー・シドレーHS.748のライセンス生産を行ない、同機種は1980年代に大半が退役するまでインドの航空会社において主力機として活躍した。それから数十年を経たいま、HALはロシアの統一航空機製造会社(UAC:United Aircraft Corporation)と100席級のヤコヴレフSJ-100(旧・スーホイ・スーパージェット100)を共同生産する契約を締結。これはモディ首相が掲げる国内製造業振興のための施策、「メイク・イン・インディア」構想とも親和性がある。

 インド産SJ-100の初号機は3年後のロールアウトを予定していて、今回の「Wings India」では、これまでのSaM146(仏スネクマ=現・サフランと露サトゥールン科学製造合同の合弁事業、パワージェットが製造)に代わって、ロシア製アヴィアドヴィガーテリPD-8エンジンを搭載した“制裁回避型”のSJ-100と、VIP仕様機「Aurus」が地上展示された。そしてSJ-100と同時に展示された70席級のイリューシンIL-114-300は、2028年よりハイデラバードを拠点とする航空機メーカー、フラミンゴ・エアロスペースがインド国内で最終組立を実施し、地域航空網の拡充に貢献する計画だ。

夜間にテストフライトを実施したPD-8エンジン搭載のSJ-100。この最大離陸重量49,450kgのリージョナルジェットは、ここインドでHALと共同生産される。
VIPの「Aurus」仕様のSJ-100。
IL-114-300の試作3号機。クリモフ製TV7-117ST-01エンジンとアエロシラ製AV-112-114低騒音複合材ブレード6枚を搭載。この68席のターボプロップ機もインドで共同生産される。

エアショー恒例、発注関連のニュースも

 イギリスの曲技飛行チーム「グローバル・スターズ」が毎日見事な演技を披露し、盛況で幕を閉じた今回の「Wings India」。期間中は航空会社と航空機メーカー各社による契約締結も行なわれた。エア・インディアはボーイング737 MAXを30機追加発注し、総発注数は600機に。またインディゴはA321neo×15機分の発注をA321XLRに変更した。さらにHALは半官半民のヘリコプター運航会社、パワン・ハンス社にDhruv NGヘリコプター×10機を販売する契約を獲得。商工大臣が最近、今後約800億~1,000億ドル相当の航空機や関連製品が必要との見通しを示すなど、インドの民間航空分野は大幅な発展が期待される。

イギリスの曲技飛行チャンピオン、マーク・ジェフェリーズ率いる「グローバル・スターズ」は開催期間中、毎日ベーガムペート空港上空でエクストラ300を使用して見事な技を披露した。