連載

737NGの主翼上面に描かれた黒いライン~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
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【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

 旅客機の燃料は主翼の中に入っている。前後の桁と、それらと結ぶリブで囲まれた箱状の構造(ボックスビーム)を水密構造にして、燃料タンクとして利用しているのだ。

 この部分は色が違う旅客機もあるし、黒いラインで仕切っている旅客機もある。ボックスビーム以外の構造はごく薄いので、整備のときなどに乗らないようにという注意のためだ。

A340の主翼。
A340の主翼。中央の色が濃い部分がボックスビームで、内部は燃料タンクになっている。
A320の主翼。
A320の主翼。ボックスビーム部分を黒いラインで囲って、その外を踏まないように注意喚起している。

 ただしボーイング737NGシリーズの主翼上面の黒いラインには、ちょっと違う意味がある。

 旅客機は翼に雪や氷がついた状態では飛んではならないが、この黒いラインで囲まれた部分については、霜があっても除氷しないでも飛ぶことをボーイングが認めているのだ。

737NGの主翼にも黒いラインがあるが、これは他の旅客機と違ってCSFFの許容範囲を示している。
737NGの主翼にも黒いラインがあるが、これは他の旅客機と違ってCSFFの許容範囲を示している。

 ここで想定されている霜は低温の燃料に由来するもので、CSFF(Cold Soaked Fuel Frost)という。

 高度10,000m以上の気温は氷点下50℃近くまで下がり、そこを飛んでいるうちにタンクの中の燃料も冷やされる。そのため着陸後の翼表面(つまり燃料タンクの表面)には、冷たい飲みものを物を入れたグラスのように水滴がつく。いや、氷点下数十℃もの燃料に接したところには水滴どころか霜がつく。それがCSFFだ。

737NGよりも厚い翼型が使われている737クラシックの主翼にはCSFFラインはなかった。
737NGよりも厚い翼型が使われている737クラシックの主翼にはCSFFラインはなかった。

 このCSFFラインは、737NGから引かれるようになった。それ以前の737や他の旅客機でも同じ理屈で霜がつくことはあったはずだが、737NGは新設計の翼がやや薄くなったために翼上面が低温の燃料と接してCSFFが発生しやすくなったのだ。

 また737以外の旅客機についていえば、ターンアラウンドタイムの長い大型機ならば、燃料が温まるにつれてCSFFも自然と消えてしまうので問題にならないということもあるだろう。しかし737クラスでは、その前に再出発ということも珍しくない。

飛行中に冷やされた燃料のため、着陸後には翼表面に水滴がついて見えることがある。
飛行中に冷やされた燃料のため、着陸後には翼表面に水滴がついて見えることがある。さらに温度が低ければ、水滴ではなく霜になることもある。それがCSFFだ。※画像は露出調整によりコントラストを強調している。

 ただしCSFFラインの内側の霜であっても、その厚さは1.5mm未満でなくてはならず、左右の翼で同程度でなくてはならないという条件がある。

 また外気温は氷点(0℃)以上で、翼表面に水分(雨や雪など)や空気中に見える水分(霧など)がないといった条件もある。

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