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“アジアから最も近い北米都市”へ。現地支店長に訊く、ANAがバンクーバー線を増強する理由
ANAが夏季限定で成田=バンクーバー線を増便し、東京=バンクーバー間は1日2往復体制となる。背景には旺盛な訪日・乗り継ぎ需要があるほか、北米とアジアを結ぶハブとしての役割強化も見据える。現地支店長に、その戦略と現況を聞いた。
ANAは、2026年6月5日~8月31日の期間に成田=バンクーバー線を期間限定で運航する。現在デイリー運航している羽田=バンクーバー線に加えて、東京=バンクーバー間を1日2往復体制で結ぶことになる。この増便の背景やバンクーバー線の現況について、ANAバンクーバー支店長の西田章吾氏に話を訊いた。
バンクーバーのベストシーズンに挑む、成田線運航
この時期の増便は、夏がバンクーバーのベストシーズンであるのが大きな理由だ。欧州便も増便する航空会社があり、夏場のリゾート地として、長期にわたって滞在する人が増える時期だという。「このような需要があるなかで、シーズナルに増便することで、どの程度お客さまに来ていただけるかトライする」と西田氏は話す。
もちろん機材が限られているなかでデイリー運航を行なうという挑戦になるが、「機材を最大限活用するという意味でも、夏のバンクーバーは非常に魅力があるのではないか」と期待を込めている。
ちなみに夏のカナダ、特にバンクーバーの気候について、2025年4月に同地に赴任した西田氏は、経験を交えて絶賛する。「私も2025年に初めて夏を経験しましたが非常に過ごしやすく、北海道に近いと思いますが非常にカラッとしています。そして、蚊がほとんどいません。窓を開けていても、公園などに行ってもほとんど刺されることがありません。また、夜も21時ぐらいまでは明るく、非常に過ごしやすいと思います」。
アジアと北米、2つのハブが生む“中継需要”
ANAのバンクーバー線の利用動向について、日本人旅客は約2割となっており、外国籍利用者が目立つ状況だ。さらに外国籍の4割から5割弱ほどが乗り継ぎのある旅客となっている。
まず日本人旅客について西田氏は、「シニア世代のオーロラを中心とした観光利用と、留学関係やワーキングホリデーの学生さんといった若い方々がほとんどを占めているといってもよいです」と、二極化している現状を語る。シニア世代についてはイエローナイフなどでのオーロラ観光などが人気だそうだ。
留学やワーキングホリデーは移民が多い国ということもあって人数は多いという。少し余談にはなるが、ANAのバンクーバー支店も、このワーキングホリデーの制度の恩恵を受けている。「ワーキングホリデーの制度があるので、日本語を話す若い日本人の人材が一定数、定期的に働きに来てくれるのです。委託先で、彼らが安定したリソースとして働いていることは、お客さま対応の面でも非常に頼もしく、ありがたい環境です」。
一方、カナダから日本への渡航需要についても大きな伸びを見せている。「円安などもあって、2025年のカナダ国籍の方の日本向けの旅行者数は前年比で180%増となっています」と説明。一方で、日本の酷暑が知られつつあることから、敬遠される可能性には懸念を示した。
そして、「アジア全体と北米の乗り継ぎのお客さまも非常に多い路線になります」と西田氏も話すとおり、バンクーバーは北米大陸のなかでもアジアから最も近い大都市であるし、北米から見た場合に東京も同じような立地である。今回の成田増便には、成田とアジア各地、バンクーバーと北米大陸北部をつなぐハブとして、その流動を捉えようとする狙いもある。
アジア側の乗り継ぎは日本国内のほか、東アジア、東南アジア、インド方面と広範囲が対象となる。特にインドはバンクーバーに移民が多く集まる街もあることから利用者も多いという。南アジア圏とバンクーバーは大西洋ルート、太平洋ルートのどちらも所要時間に極端な差がなく、「中東情勢の緊迫化以降、中東や欧州ではなく、日本を経由してバンクーバーを目指す方も増えているようです」とのことで、この需要は大いに期待されている。
ダブルデイリーで高まる東京=バンクーバー線の利便性
ところで、東京=バンクーバー間は、ANAのほか、JAL、ZIPAIR、エア・カナダの4社が運航している。そのなかでANAは唯一の羽田路線という点に特徴がある。「年間を通じて、80%後半のロードファクターです。239席に対して200席以上が羽田発、バンクーバー発のどちらもお乗りいただいています」と好調さをアピールする。
また、羽田発便の出発は深夜に近い時間(今夏スケジュールでは21時55分発)、バンクーバー発は夕方(同16時45分)となっており、「出発の日の日中時間帯を、比較的ゆっくりご活用いただけると思います」と語る。
加えて、NH116便がバンクーバーに到着する時間帯は、ほかの到着便が少ないのもメリットだろう。西田氏は「弊社が到着する時間帯は、入国審査場が非常に空いているので、ほぼ並ぶことなくスムーズに通過できる」と話す。実際に、このインタビューのためにNH116便を利用した際も、キオスク端末で入国の手続きをしたあとは窓口での審査もないので、ほぼ待ち時間はなく審査場を抜けた。その時点ですでにターンテーブルで荷物の返却も始まっており、このスムーズさは特筆していいだろう。
さらにいえば、バンクーバー空港では、アメリカ行きの入国審査を出発地側で事前に受けられるシステム(プレクリアランス)があることから、米国内が最終目的地である旅の場合でも、入国審査がスムーズに進む経由地として有力な選択肢ではないだろうか。バンクーバーからの接続先については、「デンバーをはじめとするアメリカ北西部や、サンフランシスコ、ロサンゼルスといった西海岸への接続、さらにはシアトルなど近場のアクセスも充実しています」という。
一方、増便される成田便については「バンクーバー発便が15時までに成田に着きます。この時間に到着することで、大阪や名古屋など成田発の国内線に乗り継いで、その日のうちに帰れるのがいいね、という声をいただいている」と、成田発着便でありながら、日本人にとって乗り継ぎ利便性が高いという意外な一面を紹介した。
【ANAの東京=バンクーバー線】
NH116便:羽田(21時55分)→バンクーバー(14時50分)着
NH115便:バンクーバー(16時45分)発→羽田(翌19時00分)着
NH136便:成田(17時55分)→バンクーバー(10時40分)着
NH135便:バンクーバー(12時30分)→成田(翌14時40分)着
※NH136便/NH136便は6月5日~8月31日運航
ちなみに成田便の予約動向だが、「エコノミークラスは好調です。ビジネスクラスはやや苦戦していますが、旅行や乗り継ぎの需要が高い路線ですので、ある程度は予想の範疇です。残りの期間に挽回できればと思っています」と現状を話す。
なお、この増便期間中にダブルデイリー運航となるにあたって、バンクーバー国際空港公団との間では、チェックインカウンターや搭乗ゲートについて、同じ日にはできるだけ同じカウンター、同じ搭乗ゲートとなるよう調整をしているという。
このほか、バンクーバーはスターアライアンスのパートナーであるエア・カナダの拠点でもある。西田氏は「日々の細かいオペレーションのなかで、エア・カナダとのコネクションの最適化はしています。エア・カナダの昼発の便に乗れなかったお客さまを、後続のANA便に振り返るといったことも日常的に行なわれています」という。もちろん現地のネットワークも強く、「近辺のカナダの国内線は多くの便がありますので。ビクトリア島ですとか、カルガリー、エドモントン。また、東海岸方面のトロントやモントリオールなどもあります。カナダ市場においてエア・カナダとパートナーであるというのは強みです」と、アライアンスのメリットも強調した。
“バンクーバーで最も静かなワイドボディジェット”
ところで、ANAは2025年7月、バンクーバー空港が実施している「YVR Fly Quiet Award」の、ワイドボディジェットカテゴリで表彰されている。
バンクーバー空港は、離陸して上がっていくポイントなどに騒音計を設置してリアルタイムで騒音を計測し、そのデータをWebサイトで公開している。この計測結果に基づき、一番静かだったワイドボディジェット機の運航会社として表彰されたのである。
西田氏によると、この表彰のための特別な取り組みは認識していないというが、当然、結果として評価されたことは乗務員の部署やパイロットにもフィードバックしており、環境や品質に対する意識向上につなげたいと話す。
同社の羽田=バンクーバー線は通年ボーイング787-9を中心に運航しており、他社でも787シリーズを使うなかで、ロールス・ロイスのTrent1000を採用しているANAがこのアワードを獲得したのは興味深い結果だ。
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