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背もたれが動かない!? ちょっとユニークなビジネスクラスのフルフラットシート

背もたれを「倒さない」ビジネスクラス。常識を覆すその構造は、むしろ快適性を高める設計でした。「ひっくり返す」「固定されたまま寝る」——シートはいま、まったく新しいかたちで進化しています。

文:『航空旅行』編集部
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Photo:Masahiro Ohashi

「倒す」のではなく「ひっくり返す」シートとは?

 通常、ビジネスクラスのシートは背もたれを後方に倒して、フルフラットのベッドポジションを作る方式が一般的です。しかし、すべてのビジネスクラスがこの構造とは限りません。
 たとえば、ニュージーランド航空の「ビジネス・プレミア」や、シンガポール航空のエアバスA350-900(長距離仕様)、ボーイング777-300ERでは、背もたれを前に倒し、その背面をベッドとして使用するという、珍しい構造のシートが採用されています。
 この方式のメリットは、シートの凹凸をそのまま寝床にしないという点です。従来のリクライニング方式では、背もたれや座面の形がベッド面に残ってしまい、「座席の延長」のような感覚が拭えません。一方、背面を使うこの方式では完全にフラットな面が確保され、まるで本物のベッドのような寝心地が得られます。
 ただし、このタイプのシートには少し慣れが必要です。通常のように背もたれを後方に倒すものだと思い込んでいると、ベッド展開の操作に戸惑うこともあります。そのようなときは、遠慮なくキャビンクルーに声をかけましょう。個人用モニターに、ベッドの作り方を紹介するビデオプログラムがある場合もあるので、事前に確認しておくと安心です。

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Photo:Konan Ase
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Photo:Air New Zealand
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Photo:Masahiro Ohashi
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Photo:Masahiro Ohashi

背もたれが固定!? フィンエアーの「AirLounge」

 さらにユニークな構造を持つのが、フィンエアーのビジネスクラス「AirLounge」です。最大の特徴は、なんと“背もたれがリクライニングしない”という点。『航空旅行 vol.49』ではこのシートを取材するため、ヘルシンキ経由でポルトガルまで飛びました。
 搭乗前は「背もたれが動かないのに快適なのだろうか」と不安もありましたが、実際に座ってみるとその心配は杞憂でした。「AirLounge」は広々としたシート幅と奥行きを備えた、まるで上質なソファのような設計。背もたれにホールドされない分、体勢の自由度が高く、さまざまな姿勢で快適に過ごせます。
 ベッドポジションにすると、横幅の広さが特に効果を発揮します。肩回りにも十分なスペースがあり、寝返りも容易。日本人にとっては、まるで畳の上でくつろいでいるような感覚かもしれません。クッションは2個用意されており、腰当てや枕として使いながら、自分好みの“寝床”がつくれるのも魅力です。
 これまでの常識にとらわれない、新しいビジネスクラスのあり方を提案する「AirLounge」。まもなくANAも、パリ航空ショーにてボーイング787-9向けの新ビジネスクラスを発表予定です。航空機のシートは、今後も時代のニーズに合わせて進化を続けていくことでしょう。
 なお、ANAの新ビジネスクラスについては、7月14日発売の『航空旅行 vol.51』でもご紹介します。どうぞお楽しみに!

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「AirLounge」は背もたれが固定されています。あらかじめ用意されている2個のクッションを自由な位置に配置しながら、好みの体勢を取ることができます。
Photo:Hidehiko Kuwata
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「AirLounge」専用の寝具でベッドメイキングした状態。肩の位置の幅が広いので、寝返りも無理なくできます。
Photo:Hidehiko Kuwata
背もたれを「倒さない」ビジネスクラス。常識を覆すその構造は、むしろ快適性を高める設計でした。「ひっくり返す」「固定されたまま寝る」——シートはいま、まったく新しいかたちで進化しています。