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羽田空港で学生向けグランドハンドリング見学会。前年参加者から航空業界への内定者も輩出
空港グランドハンドリング協会が2024年に初開催した学生向けの見学会。2025年も同様の取り組みが実施され、13名の学生(うち12名が1年生)が参加。初開催の見学会に参加し、実際にグランドハンドリング企業に内定を得た学生も複数名誕生したという。

空港グランドハンドリング協会(空ハン協)は6月5日、学生を対象とした空港見学会を開催した。これは、2024年に埼玉学園大学、川口短期大学からの働きかけで始まったもので、前年に続いて2度目の開催となった。
今年の参加者は両大学合わせて13名。ともに航空に特化した学科を有しているわけではなく、経済・経営系の学科に観光や旅行に関するコースで学ぶ学生が集まっている。学校としては学生に対する就職先の新たな選択肢として、空ハン協としては学生がグランドハンドリング分野へ就職を希望することを期待して、とそれぞれの希望がマッチした取り組みだ。
見学会はランプハンドリング業務の見学からスタート。普段は立ち入ることができないランプへ入り、ANA機の間近でANAエアポートサービスや羽田タートルサービスのスタッフが業務を説明。前年以上に機体の近くまで寄り、到着したばかりの便に次々と車両が取り付けられて作業が進められていく様子を見学した。
ランプの見学中、ちょうど隣のスポットから航空機が出発するとのことで、ランプエリアの先端近くまで出て手を振っての見送りも体験。手を振って、福岡へ出発する777-200ERを見送った。
ちなみに、ターミナルに戻る際にはバゲッジハンドリングのエリアも通過し、こちらも普段は見られない業務の現場を体感しながらの移動となった。






旅客業務やオペレーションの現場を見学
続いて、ターミナルを移動し、JALの出発ロビーへ。ここでは旅客ハンドリングの業務を見学・体験する時間となった。出発ロビーでは、上級会員向けの特別な動線や、お手伝いが必要な方向けのスペシャルアシスタンスのカウンターなどの説明とともに見学。
また、自動チェックイン機と自動手荷物預け機を実際に体験。記事冒頭の写真に自動運転TTが登場しているが、今回の見学会はこうした自動化技術の紹介がキーポイントになっていた。
その後、JALオペレーションセンターの見学へ。いわゆるステーションオペレーションの業務となるが、パイロットとの連絡、スポットの調整など、実際にPCに表示された画面で具体的なイメージを持てるような状態で説明を受けた。また、パイロットのブリーフィングについても、フライトプランの説明と併せて紹介された。






すべての見学が終わったあとには、スタッフと学生との意見交換会が開かれた。開会に先立ってあいさつした空ハン協の宍倉幸雄 会長は、「業界では自動化、省力化を進めようとしている。入社後にはまず基本的な仕事を覚えていただくが、そうした知識を知恵に変え、業界を変えていく若い方の力、想像力が必要」と話した。また今年から実施されている、航空分野における特定技能2号資格を取得してグランドハンドリングに従事するJALグランドサービスの韓国人スタッフが参加していることにも触れ、「多種多様な人がいて、いろいろなアイディアで盛り上げていく仕事。(集まっているスタッフは)いろいろな経験を持っているので、なんでも質問をして、有意義な時間を過ごしていただければ」と学生の関心を喚起した。
意見交換会では、業務についてだけでなく、実際に就職したあとに関する疑問なども投げられ、学生たちにとっても将来のイメージを具体化する機会であったことがうかがえる。


今回初めて参加した久松さんは、元々航空業界への就職には興味があったという。「ほかに興味があることもあって、そのなかの一つとして参加した」「実際に働いている人に直接質問もできて内容を聞けたので、それを活かして、自分の将来の選択肢に入れて検討していきたい」とコメント。
見学会では接客以上にオペレーションセンターのような間接業務に興味を持ったそうで、現場を経験してから間接業務へと進むキャリアの積み方もあると知れたことが有意義だったそうだ。
また、前年度も参加した池間さんは、元々旅行会社を志望していたが、前年この見学会で現場を見て興味を持ち、実際にグラハン企業から内定をもらったという。今回の見学会では、自動運転TTなど、進化している現場を見ることができたのが有意義に感じられたという。インターンなどを通じて業務やキャリアプランなども描きながら将来に向けた準備を進めているようだ。
両大学の石井大貴 学長は、「普段は見られないところを見せていただいて、学生達も刺激を受けていたように感じた。今後もこのように連絡を密にして、日本の観光業界、航空業界に貢献する人材を輩出していきたいと思っている」と話し、今後の継続的な実施にも期待を寄せた。


また、前年、見学会を発案して実現にこぎつけた川口短期大学の冨吉光則 准教授は、「昨年以上に機体の近くまで行けたり、運航管理の現場を見せていただいたり、学生の参考になるようにかなり内容に注力していただいたのが印象に残った。(航空業界への人材輩出について)重点的に伸ばしたいと考えており、これはインバウンド政策にもつながっているので貢献したいと考えている。ホテル業界はある程度の実績になっており、次はこの航空業界だと思っている。あまり知られていない業界で、今までは学生が“目指そう”という意欲に欠けていたところもあったが、企業数はすごく多いし、人材も不足している。これから自動化も始まるので、若い人に向いている仕事。ここに目を向けてもらうには、現場を見るのが一番いい」とコメントし、今後の継続的な開催に期待を寄せた。

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