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ボーイング777-300ER、JA731Jの退役整備を見た! JALを離れるその日まで、整備士とともに歩む

5月27日、JALでの21年あまりの活躍に終止符を打った同社のボーイング777-300ER初号機、JA731J。現在は売却先へ引き渡される前の退役整備を受けている。長年、整備士とともに紆余曲折を乗り越えてきた機体。パーツ一つひとつ細部にわたるまで、JA731Jの最後の姿を目に焼き付けた。

文:本誌編集部 写真:阿施光南
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JALメインテナンスセンター1で退役整備を受けるJA731J。コクピット窓には、保存整備の一環として保護シートが貼られている。

退役整備は数か月をかけて

 21年間、JALの長距離路線を支えてきた同社のボーイング777-300ER初号機、JA731J。5月27日にラストフライトを迎えた同機が、羽田空港のJALメインテナンスセンター1で退役整備に入った。

 退役整備とはその名の通り、退役後、売却先への引き渡しにあたり行なわれる数か月の整備作業。基本的には通常の定期整備と同様だが、売却先のリクエストに応じた作業も実施される。

 筆者は6月3日、実際に退役整備中のJA731Jを取材した。一定の間飛行しない機体は保存整備と呼ばれる作業も同時に必要となり、汚れや虫など入り込まないようコクピットの窓や胴体のセンサー類はシートやカバーなどで養生されていた。そして、777-300ERの象徴である巨大なGE90-115Bエンジンは取り下ろされ、別途検査へ。こうしたパーツが取り外された機体は軽くなるほか、重量バランスが通常の状態と異なることが原因で不用意に動く恐れがあるため、メインギア付近と後部の3か所をジャッキが支えていた。

機体のあらゆる箇所の整備を受けるJA731J。足場でみっちり囲まれていた。
ポートサイドの「JAPAN AIRLINES」タイトルの周囲は、すでに塗装作業に向けたマスキングが施されていた。塗装作業は取材翌日の6月4日に実施予定だ。

 格納庫内では、通常は離着陸時のみ開くホイールウエルなども開いた状態。胴体のパネルなども外し、中を検査したり、交換が必要な部品を取り替えたりする。さらに、人間に例えれば間接に当たるジョイント部も、機体に何万とある箇所すべてに油を注すという。

 また、JAL機の象徴である尾翼の鶴丸ロゴと、胴体の「JAPAN AIRLINES」の文字は、上から白く塗られてしまう。この塗装が消えると、いよいよ「もうJAL機ではない」という実感が湧いてくる。

エンジンは専門の整備施設で別途検査中のため、取り下ろされていた。写真はエンジン後方、逆噴射時にパカッと開くリバーサー部分のカウリングだ。

感謝を込めて毎日整備、整備士とヒコーキが過ごした時間

 取材当日はJALエンジニアリング株式会社 羽田航空機整備センター 機体点検整備部・機体整備技術室第2課の壽福耕司(じゅふく・こうじ)さんが各所で実施されている整備作業を解説してくれた。壽福さんは、「自分が携わってきた機体の退役は寂しいですが、“これまで長い間、安全に運航してくれてありがとう”と伝えたいです」と話す。壽福さんはこれまで20年近く777の整備に携わっており、退役した777-200ERがビクタービルへと渡る際に送り出したこともある。

 前述の通り、JA731Jはこれから数か月の退役整備を経て、売却先へと引き渡される。長年たくさんの人々を運び笑顔にしてきた機体が、最後は誰に見送られるのだろうかと考えたとき、一番間近で見て、触れてきた整備士が見届けるというのは、なんだか感慨深い。いつ幾度となく機体に寄り添い、昼夜問わずその活躍を支え、そしてJAL機としての役目を終えるその瞬間までも向き合う。整備士は、そのヒコーキと最も濃い時間をともにしてきた人たちと言っても過言ではない。私たちはJA731Jと整備士の強い繋がりを、同機がJALを離れるその日まで、見守っていきたい。

ファーストクラスの機内の様子。一部の部品は取り下ろされ、JALが保有する他の777-300ERで再利用される。
エコノミークラスのキャビン。整備中はエアコンが作動していないため、写真の黄色いダクトで機内に冷気を送り込んでいる。
胴体後部、JA731Jの登録記号表記の横で記念撮影に応じてくれた壽福さん。
5月27日、JALでの21年あまりの活躍に終止符を打った同社のボーイング777-300ER初号機、JA731J。現在は売却先へ引き渡される前の退役整備を受けている。長年、整備士とともに紆余曲折を乗り越えてきた機体。パーツ一つひとつ細部にわたるまで、JA731Jの最後の姿を目に焼き付けた。

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