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重量・バランスが適正でなければ飛行機は安定しない~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
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【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

飛行機は重すぎたら飛べないが、バランスも大切だ。
飛行機は重すぎたら飛べないが、バランスも大切だ。もし重心が前すぎたならば、こうして機首を上げることもできないだろう。

 ウエイト・アンド・バランス(W&B。日本では「ウエバラ」とも俗称する)は、飛行機の重量と釣り合いのことだ。重量が重すぎても、バランスが取れていなくても、飛行機は安全に飛ぶことはできない。そのためフライトの前には、そのつど必ずW&Bを確認しなくてはならない。

小型機では、乗客一人ひとりの体重も重要になる。
小型機では、乗客一人ひとりの体重も重要になる。体重計に乗せる場合もあるが、遊覧飛行などでは体系などから推定するのが無難だ。

 重量は、機体の重さに燃料の重さ、上記員・乗客や貨物の重さ、さらには機内食の重さなどを足しあわせていけば計算できる。乗客の体重は一人ひとり計った方が正確だが、旅客機では標準的な数値で計算している。

 ただし小型機を使った訓練中には、自分の体重はもちろん教官や試験官の体重も聞いて、正しくその数値を使わないと不合格になる。だからパイロット同士では相手に体重を聞くのは失礼とはされていないが、素人相手の遊覧飛行などではトラブル防止のために見た目で乗客の体重を推定することが多い。

重心の位置は空力平均翼弦の前から何%かで表す。
重心の位置は空力平均翼弦の前から何%かで表す。A320の場合、空力平均翼弦は、だいたいエンジンの付け根あたりとなる。

 バランスは重心(CG)が主翼の前後を結ぶ線(翼弦)のどこにあるかで表し、搭載するモノ(物や者)がそれぞれ飛行機のどこに積まれるかで計算できる。ただし主翼に後退角やテーパーがある場合には、どこの翼弦を取るかで結果がまるで違ってくる。

 そのため翼の空力特性を示す代表的な場所の翼弦を「空力平均翼弦(MAC:Mean Aerodynamic Cord)」と定め、その前縁を0%、後縁を100%として重心の位置を表している。パーセントを使うことで、大きい翼でも小さい翼でも同じように比率で重心の位置を表せるわけだ。

航空会社には専門のロードプランナーがおり、W&Bの規定を満たすように搭載計画をたて、重心位置を計算している。
航空会社には専門のロードプランナーがおり、W&Bの規定を満たすように搭載計画をたて、重心位置を計算している。

 W&Bはフライトごとにパイロットが確認する必要があるが、航空会社の場合は専門のロードプランナーが重量や重心位置が規定内に収まるよう貨物の搭載位置などを決め、最終的な結果をパイロットに提示している。

旅客機では貨物の位置を調整することでバランスを取る。それでも十分でなければ錘を使ったり乗客の席を制限することもある。
旅客機では貨物の位置を調整することでバランスを取る。それでも十分でなければ錘を使ったり乗客の席を制限することもある。
搭載燃料や貨物、乗客の数と着席位置が決まったら、確定した重心位置がACARS(データリング)などでパイロットに伝えられる。
搭載燃料や貨物、乗客の数と着席位置が決まったら、確定した重心位置がACARS(データリング)などでパイロットに伝えられる。

 ちなみに重心は、空力平均翼弦の20~30%くらいの場所にあることが多く、これは揚力が働く点(風圧中心という)よりも前にある。そのままでは飛行機はバランスを崩してしまうが、それを補うのが水平尾翼である。旅客機では、計算された重心位置のデータをもとに水平尾翼(水平安定板)の角度をセットして離陸する。

重心位置が決まったならば、パイロットはそれに応じて角度に水平尾翼(水平安定板)をセットしたうえで離陸する。
重心位置が決まったならば、パイロットはそれに応じて角度に水平尾翼(水平安定板)をセットしたうえで離陸する。

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