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似顔絵ぬいぐるみ「じぶんぐるみ」が羽田空港の“行けない場所”へ。JALサンライト企画のツアーに密着
FUNDARDが販売している「じぶんぐるみ」は、自身の似顔絵を元に作られたぬいぐるみだ。この分身ともいえる存在が、自身では行けない場所を訪れて思い出を作る「じぶんぐるみツアー」だ。JALサンライトが実施した「JAL SKY MUSEUM&格納庫&羽田空港バックヤード潜入 じぶんぐるみツアー」は、そんなじぶんぐるみたちが羽田空港のさまざまな場所を巡るもの。そのツアーの様子を追った。
JALサンライトとFUNDARD(ファンダード)が2月18日に募集を開始した「JAL SKY MUSEUM&格納庫&羽田空港バックヤード潜入 じぶんぐるみツアー」が、3月18日に催行された。
まずは、この概要を紹介しておこう。「じぶんぐるみ」とはFUNDARDが展開している、自分の似顔絵(オンラインでアバターパーツを組み合わせて作れる)を元にして作り出すオリジナルのぬいぐるみだ。もちろん世界に一つだけの存在となる。衣装に凝るなど、愛着のある存在として大切にしている人が多いようだ。
そして、FUNDARDでは、このじぶんぐるみが持ち主の代わりに旅をして、その動画や写真を思い出として残す「じぶんぐるみツアー」を展開している。「ぬいぐるみが…旅?」という疑問も浮かぶが、じぶんぐるみをFUNDARDが預かり、各地で写真や動画を撮影。SNSでの発信のほか、「思い出アルバム」を制作・配送する。
今回の「JAL SKY MUSEUM&格納庫&羽田空港バックヤード潜入 じぶんぐるみツアー」は、じぶんぐるみたちが、羽田空港のJAL格納庫やパイロット&客室乗務員のオフィス、貨物地区など、普段は立ち入れない場所を訪れるものだ。10名の募集に対して10名と満枠となった。じぶんぐるみはツアー代金に含まれず、自身で用意する必要があるが、今回のJALのツアーをきっかけに新たに購入した参加者もいるという。
では、実際にどのようにツアーが行なわれているのか、そして、どのような思い出フォトが撮られているのかを写真を中心に紹介する。
この日のツアーは、まず羽田空港第1ターミナルのチェックインカウンターでチェックインし、オリジナルのチケットを受領後、JAL SKY MUSEUMやJAL格納庫を見学する。その後、羽田空港第1ターミナルにある客室乗務員やパイロットのオフィスを訪問。最後に貨物地区へ行くという旅程が予定されていた。
ツアーでは、FUNDARD 代表取締役の村瀬和絵さん、過去にじぶんぐるみツアーを実施した大分県日出町の地域おこし協力隊で、この日の撮影を担当した義川沙也佳さん、同ツアーの発案者であるJALサンライト 収入管理センターの田川舞衣さんを中心としたグループが、参加者から預かったじぶんぐるみをそれぞれの訪問場所へ持参。じぶんぐるみを並べて撮影していく、という流れだ。実際の人間では実現できないシチュエーションや、全員の存在感が出るような配置や工夫など、その場その場で試行錯誤が繰り返されながら撮影が進められる。
ここでリアルな話をしてしまうと、「3月18日に催行」としているものの、実際の撮影は複数日にまたがって実施されているほか、行程も順番どおりに進めて撮影しているわけではない。これは暗黙の了解のようなもので、持ち主から預かっている10日間ほどのうちに撮影を行なうというスタイルになっている。こうして“行程を固めすぎない”ことで、自然や天気の影響で希望の写真が撮れないようなときでも、日程や時間を変更して撮影することができる。実際、今回のJALのツアーでは、2日間の予定を組んでいるほか、空模様や格納庫にいる機体の状況に応じて、その予定も一部変更して撮影が進められた。こうした柔軟に対応しながら、最高の一枚を目指していくのだ。
ツアーを企画したJALサンライトでは、各所に協力を依頼し、普段は使われていない有人カウンターを利用した撮影や、客室乗務員やパイロットのブリーフィングへの参加、さらには幸せの黄色いコンテナとピンクコンテナを並べての撮影など、かなりレアなシーンを実現した。各所で対応に協力した人たちも、かわいらしい訪問者を前に笑顔を見せており、なごやかな空気で撮影が進んだ。
また、このツアーではお土産として、JALサンライトが制作するオリジナルパッケージの飛行機サブレも用意された。
JALサンライトと「じぶんぐるみ」の深い関係
ところで、JALサンライトは障害者雇用を目的としたJALの特例子会社であるが、設立後から長らくはJALグループ内の仕事を受託することが多かった。例えば旅客収入の管理に代表される事務的な業務や、グループ社員向けのカフェやラウンジサービスなど、主にグループ内で下請け的な業務を中心に展開していた。
ただ、近年はJAL国際線のラウンジでカフェのハンドドリップサービスや靴磨きサービスを行なうなど、グループ社員向けサービスで培ったノウハウや、JALサンライト社員個々の特技を活かしたサービスの展開を始めている。
その流れのなかで、JALグループ外からの受託業務として始めたのが、じぶんぐるみの梱包と発送の作業だった。FUNDARDの村瀬和絵社長は前職でJALとコラボをしたことがあり、そのときの縁がつながったものだ。さらに、JALサンライトには支援学級での学びから縫製を得意とする社員が多く、当時FUNDARDが依頼していた服飾関連の専門学校生に習いながらじぶんぐるみの縫製もスタート。2025年12月からは、FUNDARDが受注したじぶんぐるみの半数以上の縫製を、JALサンライトが引き受けるようになっているという。
また、じぶんぐるみツアーに参加すると記念ステッカーをもらえるが、そのステッカーを御朱印のように集められる「じぶんぐるみ用パスポート」が有料で用意されている。この表紙デザインもJALサンライトの社員が手がけた。
このような背景があるなか、JALサンライトが社内で募集した新事業提案のなかから生まれたのが、今回の「JAL SKY MUSEUM&格納庫&羽田空港バックヤード潜入 じぶんぐるみツアー」なのである。
発案者である田川舞衣さんは、そのきっかけを、「アイドルが好きで、ロケ地やライブに行ったときに(好きなアイドルの)ぬいぐるみと一緒に写真を撮ることをしていました。じぶんぐるみも弊社が梱包と発送を受託したときに興味を持ち、そこからツアーができるのではないかと考えました」と話し、ぬい活と推し活のなかから生まれたアイディアだったそうだ。
元々FUNDARDでもツアーを展開しているが、「人の代わりに自分が行けないところに行く。それは日程的に行けなかったり、なんらかの事情で行けなかったり、日常では行けなかったりなどさまざまな事情があると思いますが、そこで誰かの助けになってることもあるのかなと思ったこともあります」と、村瀬社長はこのツアーの目的と意義を語る。
また、JALサンライトに縫製、梱包、発送といった作業を委託していることについては、「梱包と発送をお願いしていたときに、この仕事は楽しい、と言ってくださったのがすごくうれしかったです。ほかにもいろいろな仕事を掛け持ちしてやっているようなのですが、仕事が楽しいです、と社長の前でも話してくれたそうで、単に作業をお願いしているだけでなく、そのような楽しい仕事を提供できたっていう喜びがありました。そうしたこともあって縫製もお願いしてみたのですが、半年ほどの練習でできるようになりましたし、やりがいがあるって言っていただいています」と、単なる業務の受発注に留まらない価値を両者が感じているようだ。
さらに、今回のツアーの前には、大分県日出町でのツアーも背景にあった。これは、FUNDARDと日出町のコラボレーションだが、JAL大分支店が協力している。その日出町の地域おこし協力隊で、今回のツアーでも撮影を務めたのが義川沙也佳さんだ。「元々ツアーがあるのは知っていましたし、JAL大分支店のスタッフも皆さん、じぶんぐるみを持っているというので、みんなでお迎えするようにツアーをやろうということになりました。自治体と一緒になって、地域活性化のような見せ方ができればよいと思いました。町長にも面会して、15名の参加者から抽選で1名に、マイスターに掛けた“ぬいスター”に任命していただきました」と当時のことを振り返る。
撮影については、「じぶんぐるみの視点で撮るように、そして写真を撮るというより、伝えることを心がけています」と、じぶんぐるみが主役であることを大切にしているそうだ。
実際にツアーを実施してみて発案者の田川さんは、「お客さまが写真を見たときに、どのような気持ちになるかを考えながら撮影をしないといけないと思いました。やはりお客さまに、じぶんぐるみが空港でいろいろな体験をしてワクワクしている気持ちを伝えるには、自分もワクワクしないといけないと思いましたし、楽しむように意識して、実際楽しく撮影に参加しています」と話す。
その雰囲気は先述の写真からも伝わるだろう。村瀬社長が「ぬいぐるみの表情が出る」と話すが、実際にじぶんぐるみたちも、どこか楽しげに映る。ツアーを実施すると毎回参加するリピーターの方もいるといい、「急に育つものではありませんが、皆さん普段から写真などをSNSにアップされています。知らないところで広がっているのかも知れません」と、“じぶんぐるみ界隈”ともいえるコミュニティも育ちつつあるようだ。
今回は羽田空港での実施となったが、他地域のJAL支店からも早速要望が寄せられているとのこと。今後の展開が気になる取り組みだ。