連載

ジャンボの“真の完成形”。ルフトハンザ・ボーイング747-400の優雅な旅〜連載【パイロットが乗客に! マニアック搭乗記】

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揺れまでも優雅、往年の華やかさに想いを馳せる

 機内はところどころアップデートされ、独特な形の読書灯やシートベルトサインもLED化されています。アッパーデッキのOHS(オーバーヘッド・ストウェージ)も大型化されていて、見た目はモックアップのようです。

 そしてシートベルト着用サインが消されますが、この「ポン」という音ひとつとっても「懐かしい!」となるのはなぜでしょう。色々なところで747-400の華やかだった時代を思い出します。

今となっては旧型の部類に入るビジネスクラスのシートですが、掛け心地はとても良く、もちろんフラットにもなります。色使いもさすがルフトハンザ、洗練されています。個室感覚が好まれる現代では敬遠されがちな2人掛けですが、隣の人と仲良く会話しながら旅を楽しむ往年のスタイルをルフトハンザが尊重している結果でもあります。そして747の2階席といえば、壁際に設置された荷物スペースです。ビジネスクラスでも、毛布や手荷物などの置き場所に困ることは意外と多い中、このスペースはとてもありがたいのです。
無骨な読書灯とPAX CALLサインが当時のボーイングらしさです。よく見ると読書灯が電球色のLEDに更新されていることがわかります。

 それにしても、なぜこんなに-400が愛されるのでしょうか? 私は747-400がデビューしたときのあの衝撃が忘れられません。アッパーデッキを延長し、主翼フェアリングの形も変わり、そして翼端には最新鋭機の象徴、ウイングレット。コクピットには6面のCRTが並び、どこから見ても「完成された空の女王」の風格が漂っていました。後に出る747-8よりもバランスが良い感じがします。「-400に乗りたい」と子どもながらに何度も親にお願いし、海外旅行でも-400を選んだほどです。

 航空会社に就職しても、やはり747へのあこがれは強くなるばかり。新しい777や747-8、787よりも魅力を感じていました。パイロットとしては残念ながら-400を飛ばすことができませんでしたが、運航経験のある先輩が皆「最高の飛行機」と謳う-400に、おそらく個人的には最後の機会であるものの、乗客として搭乗できて本当に嬉しいです。

メインデッキの窓から見た747-400らしいウイングレットとCF-6エンジン2基の共演。そして1人しか通れない幅のアッパーデッキへと通じる階段。何をとっても懐かしい雰囲気にあふれています。
機内食はもちろん陶器で提供されます。乗るといつも思いますが、ルフトハンザの機内食は他社と比べてコストがかかっていると感じます。

 今回は9時間少しのフライト。-400にとっては性能的にまだまだ余裕がありそうです。東京=ニューヨークや東京=ロンドンをノンストップでフライトしていた1990年代のような華やかな路線は、もう与えてもらえないのかと寂しくなります。初期レベルオフは3万3,000フィート。バンクーバーへ向けて北上します。

 しかしフライトしていると、本当に機齢を感じさせません。とても安定していて揺れないのです。さらに、揺れても翼が吸収するので、ゆさゆさと心地よいものになります。あと何十年でも飛んでいてほしい、本当にそう思いますが、残念ながら機械には寿命がある……。いくら天下のルフトハンザ・テクニックでも、ついに退役予定が公表されてしまいました。本当に寂しい限り……。

機内スペースはさすがワイドボディーの女王、ゆったりとしています。天井に見えるキャビンクルー用のコールサインの形状も懐かしいですね。すべてが重厚、堅実。働いているクルーに聞いても、後継機の777と比べると、床の踏み心地まで違うと言います。右写真は747-400に乗っていることを証明する安全のしおりです。
747-400に乗っていることが個人モニターでも確認できます。新塗装になっているところが嬉しいですね。

 さて、フライトの途中、目的地まで約4時間というところでライトプラスからモデレート近い揺れが5分ほど入りました。747にしてはとても大きい揺れでしたが、それでもロールすることなく、細かい機首の上げ下げのような、小さな階段を上下するような揺れ方。決して不快なマイナスGを感じさせない、やはり安定した飛行機なんだなぁと感じます。

 降下中も揺れはなく、快晴の空の下、カナダの雄大な景色を楽しませてくれました。アプローチ中は山に近いので、パイロットとしてもあまり気持ちの良いものではないでしょうが、まるで遊覧飛行のようでした。フラップを降ろして進入態勢に入り、着陸も大変スムーズなタッチダウン。バンクーバー国際空港68番ゲートのVDGSには、「747400」の文字が。何もかも特別なフライトが無事に終わりました。

 他社が退役させた-400を、今でもたくさん飛ばしてくれているルフトハンザに感謝し、1日でも長く-400が飛んでくれることを願ってやみません。

雄大なカナダの景色を機窓から眺める。パイロット視点では「今日は風が弱くて良かったなぁ」と思ってしまいます。
バンクーバー国際空港への東からの進入では、フレーザー川を右に見ながらILSのファイナルコースをフォローします。遠く北に見える山々はノースショア山脈です。

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