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着陸時に一斉に開くスポイラー、上空ではエルロンの補助も~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
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【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

スポイラーは通常は主翼上面と一体になっているが、開くことで空気抵抗を増して減速したり降下することができる。
スポイラーは通常は主翼上面と一体になっているが、開くことで空気抵抗を増して減速したり降下することができる。

 旅客機に乗って居眠りしていると、ガタガタという振動で目を覚ますことがある。窓の外を見ると主翼の上のパネルがちょっと開いていて、「そろそろ着陸か」と思う。

 このパネルはスポイラーという飛行機のブレーキだ。ただしスピードを落とすときだけでなく、高度を下げたいときにも使われる。スポイラーという名前は、翼まわりの空気の流れを台無しに(spoil)して、空気抵抗を増やすといった意味だろう。ただし操作するレバーには「スピードブレーキ」と書かれている。

きわめて空気抵抗が小さなグライダーは、最終進入でスポイラーを開いて降下角を調整する。
きわめて空気抵抗が小さなグライダーは、最終進入でスポイラーを開いて降下角を調整する。
スポイラーを操作するレバーにはスピードブレーキと書かれており、開く角度も自由に調整できる。
スポイラーを操作するレバーにはスピードブレーキと書かれており、開く角度も自由に調整できる。

 またスポイラーは、エルロンと共にロール(左右の傾き)のコントロールにも使われる。エルロンは左右の主翼で反対に動いて揚力をアンバランスにする舵だが、着陸前などに速度が落ちてくると効きが低下する。

 そこでスポイラーを片側ずつ開くことによって、低速時のロールコントロールを補強するのである。なおロールコントロールをエルロンだけで行なうかスポイラーを併用するかは速度などに応じて自動的に決まるから、パイロットが判断する必要はない。

ボーイング787のスポイラーは低速ではエルロンと連動してロールコントロールを補助する。
ボーイング787のスポイラーは低速ではエルロンと連動してロールコントロールを補助する。
エルロンとスポイラーが連動する様子は、出発時の舵のチェックを見ているとわかりやすい。
エルロンとスポイラーが連動する様子は、出発時の舵のチェックを見ているとわかりやすい。

 そして着陸すると、スポイラーは全開になる。このときには何枚にも分かれたスポイラーのうち、上空では開かなかったものも含めて全てが大きな角度で開く。これは、通常は着陸と同時に自動的に開くようにプリセットしておくが、何らかの理由で自動的に開かなかったとき(レバーが動かないことで判断できる)には、パイロットが手動で開くこともできる。

 ちなみに着陸時のスポイラーには空気抵抗を大きくするという効果もあるが、翼の揚力を小さくして車輪にかかる重量を大きくするという効果もある。その方が、車輪ブレーキの効きをよくすることができるからだ。

787やA350のスポイラーは、フラップと共に少し下がって、翼上面からフラップへの流れがスムースになるようにしている。画像はA350。
787やA350のスポイラーは、フラップと共に少し下がって、翼上面からフラップへの流れがスムースになるようにしている。画像はA350。
着陸と同時に全開となったスポイラー。
着陸と同時に全開となったスポイラー。飛行中には開かなかったものも含めて大きな角度で開く。

 スポイラーはすべての旅客機に装備されているわけではなく、装備されていても上空では使わないもの、ロールコントロールには使わないものなど、さまざまなケースがある。

 たとえばかつてJALが運航していたダグラスDC-8のスポイラーは地上でのみ使用され、空中で減速したいときには4つのエンジンのうち2つのエンジンを逆噴射させていた。

DC-8のスポイラーは地上でのみ使用したため、上空での減速にはエンジンの逆噴射も使用した。
DC-8のスポイラーは地上でのみ使用したため、上空での減速にはエンジンの逆噴射も使用した。

 ところで上空での居眠りを妨げたスポイラーによる振動だが、これはスポイラーを開くことによって乱された気流が水平尾翼に当たることによって生じる。このように飛行機の振動には、すべて何らかの理由がある。

 たとえば失速が近くなったときにも同じく乱れた気流が水平尾翼に当たり、その振動からパイロットは失速が近いことを知ることができるのである。

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