連載
翼の縦横比を大きくすることで、抵抗を減らすことができる ~ 連載【月刊エアライン副読本】

【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
翼の前後幅(翼弦長という)と翼幅の比をアスペクト比(縦横比)という。モニターの画面や写真などでも使われている言葉だが、旅客機の主翼の平面形は単純な長方形ではなく、後退角がついていたり先端ほど細くなっているものが多い。
そこでアスペクト比は、「翼幅の二乗÷翼面積」と定義されている。また航空以外の分野ではアスペクト比は「2:3」のように表すことが多いが、翼のアスペクト比は1に対する比率として表す。たとえば「2:3」ならば「1:1.5」だからアスペクト比は1.5だ。
アスペクト比が大きい(横に細長い)翼ほど効率がいいというのは、直感でも想像しやすい。
飛行機の主翼は下面の圧力が上面よりも高いから、翼端では下面から上面に向けて空気が逃げてしまう。ただしアスペクト比を大きくしていけば、翼全体に対する翼端におけるロスの割合を小さくできるだろう。
また翼端で下面から上面に逃げる空気は渦を巻く。これを誘導渦というが、その影響によって主翼まわりの気流は少し下向きに曲げられる。揚力は気流に対して直角に働くから、気流が下向きに曲げられると揚力は後ろ向きに傾く。つまり揚力が、翼を少し後ろに引っ張るようになる。これを誘導抗力というが、同じ翼でも翼端があるというだけで余計に抗力が生じてしまうのである。
ただし渦の影響は、距離が遠くなるほど小さくなる。だからアスペクト比を大きくして翼端を、つまり誘導渦を遠ざければ主翼全体としては誘導渦の影響は小さくできる。
とはいえ、やたらとアスペクト比を大きくすることはできない。細長い翼は丈夫に作るのがむずかしいから、構造が重くなりやすく、空力的な利点を帳消しにしかねない。また翼幅が大きすぎると空港内での移動やスポットに制約が加わってしまう。
そこで翼幅を大きくせずに誘導渦の影響を小さくしようというのがウイングレットだ。
ウイングレットによって誘導渦は翼本体から離すことかできるし、渦を拡散して弱める効果も期待できる。とりわけ主翼から滑らかにつながるブレッデッドウイングレットやシャークレットには渦を弱める効果が大きい。
メーカーもそう自慢しているが、乗客として窓の外を見ているときにも「なるほどな」と実感できる。747-400やA330/A340などではしばしばウイングレットの先端からの雲(強い渦の存在を示している)が見られたのに、ブレンデッドウイングレットではまったく見られなくなったからだ。
ちなみにウイングレットで誘導渦を弱めることは、誘導抗力を減らすだけでなく後続機の安全性を高めるためにも役立っている。
誘導渦は重量が大きいほど強くなるため、A380のような大型機では後続機がそこに巻き込まれると危険である。誘導渦を弱めることは、特にA380の開発では重要な課題だったのだ。
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