連載
コンコルドの復活は実現するのか。超音速への挑戦~ 連載【月刊エアライン副読本】

【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
超音速旅客機コンコルドには、機体価格や運航費の高さ、燃費の悪さや航続距離の短さ、離着陸時の騒音の大きさなどの欠点があったが、最も深刻なのはソニックブームだろう。
これは超音速で発生する衝撃波が地上に到達したときに発する轟音で、多くの国が陸上での超音速飛行を禁止した。現在ではコンコルドに限らず、超音速旅客機は陸上では亜音速でしか飛べない。
衝撃波は超音速飛行では必ず発生してしまうが、ソニックブームを弱めることはできる。
それを研究するのがJAXAのD-SENDや、それをさらに進めたRe-BooT(ロバスト低ブーム超音速機設計技術実証)といったプロジェクトだ。NASAも2025年に低ソニックブーム実験機X-59を初飛行させており、FAA(米連邦航空局)は地上への影響が小さいことなどを条件とした陸上での超音速飛行許可を検討している。
こうした中で開発が進んでいるのが、ブーム・テクノロジーのオーバーチュアだ。
これはコンコルド(100席、マッハ2.02)よりもやや小型で低速(60~80席、マッハ1.7)だが、すでに3分の1スケールの技術検証機XB-1が飛行試験を完了している。試験ではマッハ1.1までの超音速飛行も行なわれ、大気の密度差により地上にソニックブームを到達させない飛行にも成功した。
ただしその効果もオーバーチュアのマッハ1.7では期待できず、ブーム・テクノロジーは洋上でのみ超音速飛行を行なうとしている。
オーバーチュアにはJALが約11億円を出資して20機のオプション契約を結んでいるが、もし実現したらどんな路線で活躍できるのだろう。
航続距離は7,870kmなので、太平洋横断はむずかしい。東京からシアトルまでは約7,700kmだが、旅客機は風の影響や空中待機、代替空港への目的地変更なども考慮しなくてはならないからだ。アンカレッジ経由なら問題ないが、ノンストップの亜音速機に対するスピードの優位性は損なわれてしまう。
現実的な航続距離として参考にできるのは、オーバーチュアと同程度の航続距離を持つA321LRだ。同機を運航するジェットスター・ジャパンは、最大航続距離7,400kmのA321LRで5500km圏内に就航可能としている。東京からだと、ぎりぎりシンガポールまでといったところだ。
一方でアメリカの航空会社は、ドル箱の大西洋路線には問題なく就航でき、さらに陸上での超音速飛行が可能になれば東海岸と西海岸を結ぶ大陸横断路線にも投入可能になる。そこでユナイテッド航空は15機、アメリカン航空は20機を発注している。
残るは時差の問題で、コンコルドでは朝ヨーロッパを出発するよりも早い時刻にニューヨークに到着する西行き便は人気が高かったが、東行き便は昼前にニューヨークを出ても到着は夜で何もできない。ならば高い超音速料金を払うまでもないとして、空席が多かったという。もちろんオーバーチュアも、同様の悩みを抱える可能性はある。
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