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路線担当者に訊く、ZIPAIRの成田=クアラルンプール線。就航の裏側と戦略
東南アジアの新市場・マレーシアへ満を持して乗り込むZIPAIR。10月20日に就航する成田=クアラルンプール線は、初日からデイリー運航で挑む。しかもクアラルンプール国際空港ではフルサービスキャリアが集う「第1ターミナル」への乗り入れを実現した。この就航にまつわる背景と路線戦略を訊いた。
ZIPAIRは10月20日から成田=クアラルンプール線の運航を開始する。
思えば同社のネットワーク展開は、就航初期のソウルやバンコクといったアジア路線から始まった一方で、2024年のバンクーバー線や2025年3月のヒューストン線など、ここ数年は北米路線の拡大が目立っていた。
久々のアジア圏における新規就航先として、なぜクアラルンプールが選ばれたのか。現地のLCCターミナルではなく、なぜ第1ターミナルへの乗り入れとなったのか。本路線の立ち上げに携わった大橋理紗氏に、クアラルンプール線就航までの背景を訊いた。
大橋氏はJALで地上旅客スタッフやDX推進部門でのECサイト構築プロジェクトなどに携わったのち、2024年にZIPAIRの路線事業部に出向。路線マーケターとして、アジア路線全般の運賃設定やプロモーションの立案など、一連のマーケティング活動を担当している。今回は新規就航となるクアラルンプール線の立ち上げも担当した。
Q:新規就航地にマレーシア・クアラルンプールが選ばれた主な理由をお聞かせください。
大橋氏:タイやシンガポールといった既存の就航地からの訪日者数は、コロナ禍前と比較して往来が完全には戻りきっていません。一方でマレーシアからはコロナ前を上回る勢いで来訪者数が伸びています。東南アジアのハブという位置付けに加え、著しい経済成長を背景に、観光だけでなく留学や移住といった目的での渡航にかなりのボリュームがあります。友人や親族を訪問する需要も一定数あるなど、特定のニーズに集中せず、バランスが取れています。
また、他のアジアの就航地と比較して、日本から、あるいはマレーシアのいずれも、まだまだリピーターの数が多くないなど、双方向に潜在的な渡航ニーズがある新しいマーケットであると判断しました。
Q:現時点(取材日は2026年10月9日)の予約状況について聞かせてください。
大橋氏:就航直後の10月および11月については、予約率は4割前後で推移しています。しかし、マレーシア現地で約1か月間の長期休暇に入る12月については、すでに6割ほど予約が埋まっており、年末年始にかけてはほぼ満席となっている日もあります。
最近の傾向として、タイやシンガポールのようにLCCが多数競合しセールが頻発する市場では「早く買えば安い」という認識が薄れつつあります。そのため、3か月前からの予約ではなく、直近1か月以内になってから急激に予約が入る傾向は強いと思います。
Q:10月、11月の予約を見る限りでは伸び悩みも見えますが、プロモーションについてはどのように展開していますか。
大橋氏:マレーシアではZIPAIRの知名度がまだ低く、聞いたこともない新しいLCCに乗るハードルは高いと思います。口コミもない状態では一部の人にしか利用してもらえないため、まずはしっかりとお求めやすい価格をご提供し、実際に搭乗して体験してもらうことを重視しました。「意外といい」と感じる人を地道に増やす戦略です。
そのほかのプロモーションは、オンラインチャネルの活用はもちろんのこと、同じターゲット層を持つ現地パートナー企業と協力する形が中心になると考えています。10月にはクアラルンプールで開催される「Nihon Matsuri 2026」にも参加する予定です。また、現地のクレジットカード会員向けのイベントにスポンサーとして参画するなど、現地の企業や組織の力を借りたコラボレーションを中心に知名度向上を図っていきます。
Q:運賃の面では他のアジア路線と比べて日本からの直行便が少ない市場ですが、単価などはどう見ているでしょうか?
大橋氏:より気軽に日本とマレーシア間を移動できる、新たな選択肢を提供できると思っています。需要に勢いがあるなかで、私たちが290席をデイリー(毎日)運航で飛ばすことによって、フルサービスキャリアでは予算が合わなかった方や、これまで年に1度しか行けなかった方に2度、3度と渡航してもらえるようになると考えています。他区間に比べてLCCの競合も多くないため、しっかりとポジショニングを取って需要を取り込めると見込んでいます。
Q:ポジショニングを取るうえでのZIPAIRならではのベネフィットは何でしょうか。
大橋氏:もちろん最大の利点は、価格です。そして日本のLCCであるという安心感も大きいと思います。機内設備については、LCCでありながらビジネスクラスのようなフルフラットシートを提供している点は唯一無二の特徴です。復路は深夜便ですので寝るだけでよい人や、機内食などの追加サービスを必要とせず、座席だけは広く快適にしたいというニーズに低価格で応えることができます。また、高速な機内インターネットがすべての座席で無料利用できる点も特徴です。
Q:路線の立ち上げにおいて苦労した点は何でしたか。
大橋氏:マレーシア側の関係機関との調整に非常に苦労しました。我々は現地にオフィスを持っていないため、対面で会話できる機会は非常に限られています。さらに、お互いに第二言語での会話のため、確認をしたつもりでもうまく伝わっていなかったり、関係者が多いため、なかなか物事が進まなかったりと、物理的な距離があるなかで、短期間で信頼関係を構築しながら準備を進めていくことの難しさを痛感しました。
Q:就航時点のデイリー運航は当初から考えていたものでしょうか。
大橋氏:アジア全般に言えることですが、クアラルンプールは年度の下期、とくに12月から3月にかけてが繁忙期になります。また、2026年にマレーシア政府が展開している「マレーシア観光年」キャンペーンが2027年も延長されることが決まりました。需要に拍車がかかると思います。そうしたタイミングが重なってデイリー運航でのスタートが実現しました。
Q:ダイヤについてはどのような工夫や利点がありますか。
(参考)ZIPAIR 成田=クアラルンプール線の運航ダイヤ
ZG61便:成田(16時50分)発→クアラルンプール(23時40分)着
ZG62便:クアラルンプール(01時10分)発→成田(09時00分)着
大橋氏:ダイヤ設定はこだわっています。特にクアラルンプールを早朝に出発するか、深夜に出発するかで議論がありました。
早朝発の場合は、公共交通機関が動いておらず空港へのアクセスに難があります。日本からのお客さまであれば、ホテルに1泊して、朝の2時や朝3時に起きて移動しなければならないなどの負担があります。深夜1時出発であれば夜遅くまで起きて行動できる時間帯であり、機内で寝て、朝、日本に着いてからすぐに行動できるため、利便性が高いと考えています。
Q:クアラルンプール国際空港の第1ターミナルに乗り入れることになった背景をお聞かせください。
大橋氏:クアラルンプール国際空港にはターミナル1と2があり、ターミナル2はLCC専用として機能しています。当初、現地の関係機関からはターミナル2を利用するよう打診がありましたが、何度も現地に足を運び、さまざまな観点で議論を重ねた結果、ターミナル1の利用が決定し、乗り入れが実現しました。
Q:お勧めのクアラルンプールでの過ごし方を教えてください。
大橋氏:クアラルンプールは物価が安く、高級ホテルでも1万円台で宿泊できるなどコストパフォーマンスのよさが魅力です。また、インド系、中華系、マレー系とさまざまな文化が混ざり合っているため、多様な食や文化を一度に楽しむことができます。
都会的な楽しみ方としてルーフトップバーでお酒を飲んだり、リゾート地を満喫したり、ゴルフを楽しんだりできるのもお勧めです。
Q:最後に、利用を検討している読者へメッセージをお願いします。
大橋氏:マレーシアは、他のアジア諸国にはない独自の魅力にあふれた国です。昔ながらのレトロな街並みや東南アジアらしい雑多な雰囲気が色濃く残る一方で、近代的なビル群が立ち並ぶなど、今まさに急速な発展を遂げている成長段階ならではの活気を感じることができます。10年前に訪れたことがある方でも、まったく違う景色に驚かれるはずです。また、公共交通機関が発達しており、治安も比較的安定しているため、旅行者にとって非常に過ごしやすい環境が整っています。
食事やホテルステイを楽しむのはもちろんのこと、ゴルフなどのアクティビティ、さらには英語留学や移住の視察など、目的を問わず多様な楽しみ方ができるのがクアラルンプールの強みです。ZIPAIRがデイリー運航で就航したことで、価格を抑えて、いつでも気軽にマレーシアへ渡航できる選択肢が増えました。これまでマレーシアを訪れたことがない方も、ぜひこの機会に新しい魅力を体感しに訪れてみてください。
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