連載
コクピットのワイパー。過去には搭載していない旅客機も~ 連載【月刊エアライン副読本】

【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。
旅客機にも、自動車と同じくワイパーがついている。高速で飛んでいるときには雨粒は何もせずとも吹き飛ばされてしまうが、タキシング中や低速の離着陸時にはワイパーが必要になる。
かつてYS-11を世界中にフェリーした経験を持つ坂崎 充さん(後にエアーニッポン機長)は著書で、YS-11のワイパーは強い雨の中では浮き上がってしまって役に立たなかったと書いている。電波に導かれるILSアプローチでも、最終的には滑走路を視認できないと着陸できない。仕方なく、緊急脱出用の側面窓をスライドさせて水浸しになりながら前方を見たこともあったそうだ。前面窓(ウインドシールド)の角度が立ちすぎているのが原因(設計ミス)ではないかとも書かれている。
現代の旅客機ではそんなことはないだろうが、ワイパーの形はさまざまだ。停止位置にしても、ブレードを縦にするものと横にするものがある。
縦に止める方が空気抵抗が小さそうだが、こうした止め方は787やA350のようにウインドシールドが曲面で機首のラインと段差なくつながっているものが多い。それに対してウインドシールドが平面で、外板のラインとのつなぎ目に段があるものは横に止めるものが多い。また曲面ガラスであっても周囲と段がある747やトライスター、Dash 8(DHC-8)はワイパーを横向きに止めている。
ちなみに過去には、ワイパーがない旅客機もあった。
それはJALでも使われていたDC-8で、エンジンから抽出した高圧空気で水滴を吹き飛ばすようにしていた。しかし着陸進入時にパワーを絞ると抽気も弱くなって効果が低下するという問題があり、類似のウインドシールドを持つDC-9にはワイパーが装備された。
雨滴対策ではないが、737ではワイパー前方に小さなボルテックスジェネレーターが並べられている。737はウインドシールド前方の段差部分にできる大きな乱流がコクピット内の騒音の原因になっていたため、ボルテックスジェネレーターによる小さな渦で乱流の成長を防止したのである。
ひょっとしたらYS-11のワイパー問題もこうした方法で改善できたのではないかとも思うが、ついに解決されないまま退役した。
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