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エアライン・グループに属さない独立系の総合グランドハンドリング企業であるIACTは、50社を超える航空会社の業務サポートを行なっている。羽田空港にも営業所を、また中部国際空港にも関連会社を置く。
取材が許可されたのは深圳=成田=シンシナティのルートで飛ぶ747-8F。成田路線では今もなお多くの747フレイターが活躍しており、間近に見るとその機体サイズに圧倒される。
IACTによると、747フレイターのノーズカーゴドアを使用して搭降載を行なう作業は多くないという。なお、エアラインによっては搭降載中の尻もち防止のため、ノーズギアと地面を専用のロープで結び固定するケースもある。
搭載作業はメインデッキ、ロワーデッキを同時進行で行なっていた。最大約130トンの貨物を搭載できる機体ゆえ、用意されるULDの数とサイズも圧巻だ。
欧米の大手貨物エアラインからハンドリング業務を受託しており、747や777といった大型フレイターへの搭降載作業も数多く担当。メインデッキローダーも10台を保有する。
96インチサイズのULD(パレット)で34台を搭載できる747-8Fのメインデッキ。大型の貨物が次々とカーゴルームに収められてゆく。
ランプエリアに並べられ、搭載を待つ多数のULD。ピタリと整列した様子、保護用ビニールシートの丁寧な施工からもIACTの作業クオリティの高さが垣間見える。
トーイングトラクターの運転や搭降載作業といったランプハンドリング業務。こうしたIACTの現場では女性も多く活躍している。決して男性だけの仕事ではない。
747-8のロワーデッキ後方貨物室には、最大96×125×64インチのパレット5台が収まる。その手前には隣接するバルクカーゴ室用のベルトローダーが待機。
リフトの位置を適宜チェックしながら、慎重にロワーデッキ前方貨物室に搭載される88×125インチのコンテナ。
インサイド業務と呼ばれる輸出ドキュメント作成部門のオフィス。エアラインとの情報共有や貨物スペースの確認など、調整の役割も担っている。1人1日あたり2便程度を担当するという。
積み付けプラン作成時は貨物の重量や個数だけでなく、危険物の有無や扱いも発着地ごとの規則を確認する。航空貨物では許可済の放射性物質なども取り扱う。
取り下ろした貨物の解体を行なう輸入上屋内。パレットなどのULDから降ろされた貨物は、書類に応じて荷受人ごとに振り分けられる。広い構内をフォークリフトが行き交う。
パレットから解体された貨物は、到着貨物情報と相違がないか個数などのチェックを入念に行なう。同時に破損や雨濡れなどがないかといった状態確認も行なわれる。
輸入上屋内には特殊な貨物のための施設も用意される。写真は動物室で、入退室時の注意が掲示されていた。動物園で飼育されるような希少生物の取り扱い事例もある。この他、危険物室や貴重品庫などを完備。
温度管理専用上屋は取り扱い貨物に適した温度管理がなされる。構内は内容点検を行なう定温庫のほか、冷蔵庫(+5℃)、冷凍庫(-20℃)などに分かれる。
左は医薬品や化学薬品を保管する薬品庫1(+2~+8度)と薬品庫2(+15~+25℃)、右は野菜やチーズなどを保管する冷蔵庫(+5℃)。
貨物が整然とならぶ冷蔵庫内。使用状況がひと目で分かるよう、壁面には床面積の何%を占めているかを表示するラインが記されていた。
冷蔵庫のさらに奥には冷凍庫(-20℃)があり、冷凍加工食品や薬品などが保管される。入口上部に見えるのは現在の温度と酸素濃度を示す電光掲示板。
輸出上屋では、積み付けの完了したULDの実重量を1台ずつ計測、プランに記載された重量と相違がないか確認のうえ、エアラインやロードプランナーに共有される。
もしも事前に提出された重量と計測された重量が異なる場合には、積み残しや積み間違いがないかチェックして原因を探る。なお重量計にはドーリー込みの重さが表示されるので、その分は差し引く。
輸出許可済貨物の取り下ろし作業を行なう輸出上屋の搬入口。このエリアではアシアナ航空とユナイテッド航空の旅客便に搭載する貨物が運び込まれていた。
整理整頓が行き届いた輸出上屋内。奥は積み付け用のスペースとなっており、作業後は速やかに搬出できるよう運搬用のドーリーが待機している。
プランどおりに積み付けが完了すると、雨濡れから貨物を保護するカバーと落下防止用ネットが掛けられる。保護カバーは再利用するなどSDGsへの取り組みも推進している。
(1)輸入航空貨物の取り扱い、保管業務からスタートしたIACT。現在は貨物ハンドリングをはじめ、総合グランドハンドリング企業として就航エアラインの業務を多岐にわたりサポートしている。
(2)航空機のプッシュバックなど、特殊車両を用いたランプハンドリング業務も担当航空機の定時性を維持しつつ、安全かつ迅速な作業が行なえるよう作業者の管理や監督業務も行なっている
(3)大型機の移動に対応したトーイングタグ車を6台保有。写真は国内主要空港でお馴染みのトーバー式コマツWT500E。
(4)ロワーデッキへのバルク貨物搭降載で使用するベルトローダーは10台を保有。メインデッキローダーやハイリフトローダーも合計19台が活躍している。
(5)2010年からはランプさらに旅客ハンドリング業務を展開。デアイシングカーやウォーターサービスカーなど多彩なGSE車両を有している。
IACTは“安全・確実・迅速”を社是に掲げる。50年を超える歴史で培った、丁寧で正確なサービスは国内外のエアラインから高く評価されている。