ニュース

国内唯一のMRO専門会社、MRO Japanが10周年。この先も新たな挑戦を

国内唯一のMRO専門会社であるMRO Japanが9月12日に創立10周年を迎えた。沖縄を拠点に事業を拡大する同社。新制服のコンセプトも発表し、次の10年への挑戦をスタートした。

文:柏 博幸 写真:柏 博幸
X Facebook LINE
9月12日にMRO Japanの格納庫で行なわれた式典。約120名の来賓と280名の社員が参列した。

 MRO Japanが9月12日に創立10周年を迎えた。同社はANAホールディングス出資のもと2015年に伊丹空港で事業を開始し、2019年に那覇空港へ拠点を移して第二の創業を迎えた。MROは「Maintenance, Repair and Overhaul」の略で、国内では同社が唯一の専業会社。事業内容はドック整備を中心に、ライン整備、機体塗装、自衛隊機の洗浄など多岐にわたり、国内はもとより、アジアの航空会社や官公庁の航空機も扱っている。

 航空機整備は自動車の車検と同じく、定期的に実施する必要があるため、世界的なロックダウンの影響もあまり受けなかった。また沖縄には地理的優位性があり、アジアで増加する航空機整備需要にも大いに期待できる。2026年の売上は2022年度の約150%となる45億円を目標にしているが、これも1年前倒しで推移しているという。

式典の後に開かれた祝賀会では新制服のコンセプトを披露した。「着るだけで涼しく、安全」な制服は、ドック整備向け(写真右)にファンを装備。通常はベルトで腰に巻き付ける墜落制止用器具は背中に付けられている。ライン整備向け(写真左)は高通気速乾性ポロシャツを採用し、どちらも高温多湿に負けない、高通気、吸汗速乾性に優れた仕様。また琉球紅型(びんがた)と首里城をモチーフとした肩のデザインからは、沖縄の誇りが感じられる。

 沖縄県も航空関連産業クラスターを推進しており、それを支える中核が同社の整備事業。なかでも最も重要なファクターは人材であり、ここまで成長した理由も人材の育成にあるという。ANAグループの出向社員180名で開始した事業は、現在470名もの規模に拡大し、生え抜き社員の約9割は県内出身者が占めている。新卒者も県内の高卒者が最も多く、学科も不問なため、だれでも挑戦できる環境が揃っている。

 これまでに手がけてきた航空機はドック整備だけで645機。機種もATRから747-8までと幅広く、2022年には世界基準であるEASA認定を取得。今後は長年の知見を活かし、整備に何か月もの期間を要する「リース返却整備」や、まだ世界で4社しか認定されていないA320ファミリーの旅客型から貨物型への改修(P2F)にも挑戦してゆきたいという。

MRO Japan株式会社 代表取締役社長 湯川恭史氏(左)と、同取締役の伊東英孝氏(右)。

 MRO Japanの湯川恭史社長は式典で「2022年には欧州航空安全庁のEASA認定を取得したことで、名実ともに世界のMROと伍する整備能力を獲得し、世界中の願客をお招きする準備が整いました。私たちは、顧客の皆様の航空機の安全と品質の一翼を担う会社として、確かな品質と高い技術力で、これからもお応えしてまいります。沖縄県は国内外有数の航空ネットワークを誇り、若く活気溢れる人材にも恵まれています。この最良な環境を活かして、近隣諸国で高まる航空機整備需要をしっかり取り込み、『アジアを代表するMRO』を目指して挑戦し続けてまいります。また、沖縄県をはじめとする航空産業ならびに地域の発展に尽力してまいります」とあいさつ。

ANAホールディングス株式会社 取締役会長 片野坂真哉氏(中央)。

 片野坂真哉 ANAホールディングス株式会社 取締役会長は祝辞で、「事業の内定をいただいたとき、県からはANAグループが代表企業となってしっかりと整備事業を進めてほしいというメッセージをいただき、航空機の安全を担う事業が世界に向けて沖縄からスタートするんだということを皆さんと一緒に決意しました」と当時を振り返った。

国内唯一のMRO専門会社であるMRO Japanが9月12日に創立10周年を迎えた。沖縄を拠点に事業を拡大する同社。新制服のコンセプトも発表し、次の10年への挑戦をスタートした。

関連キーワードもチェック!

関連リンク