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LCCでビジネスクラス体験! ソウル発福岡行き、ティーウェイ航空A330-200搭乗記

ソウルから福岡空港への帰国便。この日は韓国のLCC、ティーウェイ航空が運航するエアバスA330のビジネスクラスを選んだ。わずか1時間ほどのフライト、しかもLCCのビジネスクラス、気になるそのインプレッションやいかに?

文:芳岡 淳 写真:芳岡 淳
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福岡到着時には、もう辺りは真っ暗だった。ソウルから1時間程度の短いフライトではあったが、ビジネスクラスらしさをしっかりと体感した充実の時間だった。

ティーウェイ航空によるワイドボディ機運航の背景

 大韓航空によるアシアナ航空の吸収合併、新興のフライカンウォンは倒産したもののパラタエアの名で復活する計画が報じられるなど、何かと話題が尽きない韓国の航空業界。多くの航空会社が激しい競争を繰り広げる中で、ナローボディ機の737-800を主力としたフリート構成で国内線および近距離国際線を中心に展開していたティーウェイ航空の急成長は、韓国のエアライン業界を語る上で欠かせない存在になりつつある。

 しかしティーウェイ航空は、ここ数年で中古ワイドボディ機の導入も急速に進めており、2022年2月に導入した元タイ・エアアジアXのA330-300(HL8501)を皮切りに、2024年6月に大韓航空からリース導入したA330-200を、そして今年2月には元キャセイパシフィック航空の777-300ERを導入するなど、すっかり大手航空会社の風格すら感じられるほどだ。

 これらのワイドボディ機導入は主に、大韓航空がアシアナ航空を吸収合併する際の独占禁止法上の問題解消措置のため、ティーウェイ航空へと譲渡された欧州線向けなどで運用されているが、A330については高需要の日本路線にも投入されることが珍しくない。今回はこのうち、ソウル(仁川)発、福岡行きTW295便においてA330-200のビジネスクラスに搭乗した際のレポートをお届けしよう。

ティーウェイ航空は仁川国際空港第1ターミナルを使用。LCCはサテライトゲートを使用することも多いが、この日は本館側48番ゲートから出発。
ビジネスクラスの乗客にはしっかりと優先搭乗が用意されている。しかし、ビジネスクラスの乗客でも優先搭乗を利用する人は少なく、筆者が一番乗りで搭乗。
仁川国際空港の第1ターミナル本館から出発する際は、このようにフロア1階分、降りてから機体に搭乗するスタイルなのだが、このときの景色が美しい。

乗機HL8227は大韓航空時代のシートをそのまま使用

 ティーウェイ航空の737-800はオールエコノミークラスで運航されているため、同社でビジネスクラスを体験できるのもワイドボディ機だからこそ。このA330-200には2種類の客室仕様が存在するが、今回搭乗したのは昨年夏に大韓航空から移籍してきたHL8227で、大韓航空時代のシートをそのまま使用している。しっかりフルフラットシートで、乗客にとってはお得感の高い座席だ。

 座席配列は2-2-2で合計18席が配置されている。筆者は、その中でも最前列窓側の1Hを選択。フライトタイムはわずか62分と短いものだが、ビジネスクラスの利用率は8〜9割と好調のようであった。この日は韓国の休日が絡みエコノミークラスの価格が高騰し、ビジネスクラスとの差額が数千円程度とあまり開いていなかったことも、予約率に影響していたとみられる。

ビジネスクラスは機内最前方に2-2-2の配列で3列、全18席が配置されている。
シートは大韓航空時代そのままだが、ヘッドレストカバーはしっかりとティーウェイ航空の仕様だ。
このような短距離路線においてもビジネスクラスの乗客にはブランケットとスリッパ、飲料水が用意されており、ビジネスクラスの利点を感じられる。
シートはフルフラットで、足元の広さも十分。ぜひ次回は長距離便で体感したいところ。座席横には充電用のUSBポートも配置されている。昨今のモバイルバッテリーの持ち込み制限強化もあり、ケーブルがあれば充電できる装備が用意されていることは安心材料だ。
ビジネスクラスのサービスを解説した専用冊子も用意されている。

予想以上の“ビジネスクラスらしさ”に好印象

 格安航空会社(LCC)のビジネスクラスというと、フルサービスキャリア(FSC)ほどの利点は享受できないと思われるかもしれないが、ラウンジの利用ができない以外は、預け入れ荷物の上限が30kgまで増加していることや、優先搭乗などもありビジネスクラスらしい待遇を受けることができる。搭乗後には、客室乗務員がビジネスクラスの乗客一人ひとりに挨拶し、フライトの概要やサービス内容に関する説明を行なうなど、FSCさながらの対応だ。

 ティーウェイ航空の欧州路線では、エコノミークラスにおいても機内食が提供されるとのことだが、短距離の日本路線においては有料サービスのみであることは事前に承知の上であった。それでもビジネスクラスにおいて、どのようなサービスが展開されるかは気になるところ。客室乗務員からは、このフライトでは機内食の提供がないことと、「スナックおよびお好きなドリンクをお持ちします」という説明があった。

 提供されたスナックは、韓国の人気緑茶店OSULLOCのプレミアム抹茶ワッフル。選択式のドリンクはアイスコーヒーをチョイスした。ソウルから福岡までのフライトは、東京から福岡へのフライトよりも短いためアッという間に到着。こうして、予想以上の“らしさ”を感じながら、ティーウェイ航空のビジネスクラス体験が幕を閉じた。

 今度はぜひ、欧州路線でも体感してみたいところだ。

仁川発、福岡行きTW295便は18時10分発とあって、暮れゆく空を眺めながらのフライト。外の景色をゆったり楽しむほどのフライトタイムではないが、美しい夕暮れにはうっとりする。
座席のリクライニングも肘掛のボタンで操作可能。一世代前の雰囲気を感じるが、FSCとの価格差を考えると十分過ぎる設備だ。
軽食として提供されたOSULLOCのプレミアム抹茶ワッフルとアイスコーヒー。スリーブには、欧州進出をアピールする「T’WAY TO EUROPE」の文字が。
ソウルから福岡空港への帰国便。この日は韓国のLCC、ティーウェイ航空が運航するエアバスA330のビジネスクラスを選んだ。わずか1時間ほどのフライト、しかもLCCのビジネスクラス、気になるそのインプレッションやいかに?

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