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ANA、北海道にオペレーションマネジメント拠点「NOS」を開設。首都圏一極集中から分散へ
ANAは、大規模災害時にも社会的役割を果たせる規模の運航を維持するため、北海道の新拠点「NOS(ノース)」の稼働を7月から開始した。従来の首都圏一極集中体制を見直し、平時から羽田と北海道の二拠点で運航を管理する体制を構築。有事の際は即座に運航の司令塔を移譲し、空のインフラを死守する。
ANAは、大規模災害時にも社会的役割を果たせる規模の運航を維持するために、北海道の新拠点「NOS(呼称:ノース)」の稼働を7月から開始した。
ANAグループは、航空機の運航を統括・管理するオペレーションマネジメント機能やそれに伴う人的リソースを、効率性や経済性の観点から首都圏に一極集中している。それが羽田空港のOMC(オペレーションマネージメントセンター)で、ここではフライトプランの作成やダイヤ(スケジュール)の管理、運航の監視など、運航にまつわるさまざまな管理が行なわれている。また、FOC(フライトオペレーションセンター)、客室センター、整備センターなどのスタッフもOMCに常駐し、運航乗務員(パイロット)や客室乗務員(CA)、整備士といった人員の管理も行なわれている。
ANAの運航の中枢を担う組織であるため、当然ながらこれまでもBCP(事業継続計画)を考慮した体制を敷いてはいたが、これまでは、首都圏直下型地震のみを前提とした発災直後の対応や復旧を中心に策定していた。いわば原因事象と被害想定を特定しているのが従来のBCPであったが、想定外の影響が生じた場合の対応が困難になるという課題があった。
2021年2月に日本経団連から複合災害時でも事業継続を可能とする「あらゆるリスクに耐えうる“オールハザード型BCP”の整備を進めるべき」との提言がなされたことや、公的機関による被害想定の更新などをきっかけに、特定の災害にとらわれない平時からのPDCAサイクルの構築に向けた改定が進められてきた。
さらに、ANAは2026年3月に内閣総理大臣から災害対策基本法に基づく「指定公共機関」に指定された。大規模災害の発生時には、被災地への緊急物資や救援要員の輸送、避難者の移動サポートなど、航空インフラを活かした社会的責任を迅速かつ確実に果たす必要がある。
こうした背景があり、火災や電力喪失、テロ、武力攻撃などを含むあらゆる事由で既存の事業所が機能停止に陥っても、航空便の運航を中心とする事業を中断させない体制を構築すべく、北海道で新たなオペレーション拠点を稼働することになった。
新たなBCPの策定にあたっては、中央防災会議などが考える首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火が考慮された。過去の実績から南海トラフ地震発生後に富士山噴火が連動する可能性もリスク想定に含まれている。
検討の過程では各地域のリスクが精査された。このなかで、近畿・東海エリアは南海トラフ地震による広範囲の被災とライフライン・交通網の遮断が想定され、福岡や九州南部も津波による浸水や交通網の遮断により空港機能の喪失や物流停止のリスクがあった。本州との往来が困難になる沖縄も候補から外れた。
一方で、現在拠点を置く羽田・成田などの首都圏は、首都直下地震や富士山噴火の噴煙により周辺一帯が機能不全に陥り、通信規制によってリモート業務を行なうことも困難と分析された。これらANAグループが考慮するすべての重災害に対して被災影響がなく、一定程度まとまった人的リソースを配置して経営資源の継続性を維持できる場所として、北海道が最適であると判断された。
北海道に構築されたオペレーションマネジメント機能のBCP拠点は、施設名称を社内公募し、北の大地でANAのオペレーションを担う第二の重要拠点という意味を込めて「NOS(ANA Northern Operations Satellite、ノース)」と決定された。
NOSは単なる有事のバックアップ機能ではなく、平時から運用を行なう首都圏との「2拠点化(両輪)体制」を敷く。平時は首都圏と北海道の両拠点でオペレーションを分担・協働し、有事の際には被災して機能停止した首都圏の機能を北海道拠点で継続し、最低限必要なオペレーションを維持する設計となっている。
ANAの担当者によると、この施設は単なるバックアップではなく平時でも業務を行なっている場所であり、基本的にはこれまでも業務を行なっていた人員が入るため、特別な訓練がなくても業務が可能な体制となっているという。
羽田空港のOMCでは、約210名の体制で業務が行なわれていたが、このうち約60名がBCP要員としてNOSで勤務する体制へ移行。日々の飛行計画や便数調整を行なう「運航・ダイヤ管理部門」、客室乗務員やパイロットの勤務スケジュール作成や資格管理を担う「客室乗務員管理部門」「パイロット管理部門」、不具合発生時の就航判断や総合調整を行なう「整備統括部門」といった主な構成部署から人員が集められる。
NOSは2026年4月から体制の運用を開始しており、7月から全機能の稼働を開始する。安全の維持を大前提としながら、基本品質やサポート業務の範囲は限定し、社会的役割を果たすための運航規模を目安とした体制を整えているとしている。
平時におけるNOSの役割として、国内線に関しては小型機の一部便におけるオペレーションを担当し、国内線の約3割の運航管理を北海道で担い、約7割を羽田が担うことになる。また、国内線/国際線で一体管理が必要となる事項については、羽田と北海道の双方で連携して対応する。
有事の際は、被災地域への人の移動や出社、リモート業務が不可能となる初動7日間を想定して、社会的役割を果たすための運航を維持する。例えば、国内線は、被災地域を除く定期便路線や生活路線が中心に、要請に伴う人と物資の救援輸送に対応する。羽田・成田が被災した場合は、国際線の発着も困難となるため、海外からの定期便を関西など首都圏以外の国際線対応空港へ帰国させ、必要あるいは要請に応じて不定期便を設定する体制を敷くことになる。
また、社長の権限を代行して運航の責任を担うオペレーションディレクター(OD)については、羽田のOMCと北海道のNOSに有資格者がそれぞれ常駐。平時は羽田のOMCの有資格者がODとなるが、有事の際には北海道のNOSの有資格者にODとしての権限と責任が移譲されることになる。
今回のNOS稼働に際し、ANA代表取締役社長の平澤寿一氏は、「当社にとって安全運航の堅持は経営の基盤であり、社会への責務。自然災害が激甚化する現代において、航空機を安定的に運航し続けることが公共交通機関としての役割であると考えている。指定公共機関にも指定され、大規模災害発生時には航空インフラを活かした社会的責任を確実に果たす使命を担っている」と、NOS構築の背景にある同社の使命について言及。
「万が一、羽田の拠点が機能不全に陥った際には、即座に運航の司令塔をこのNOSへと引き継ぎ、運航を継続する。安全運航の堅持を大前提としながら、生活路線の確保や救援輸送など、社会的な役割を果たしていく。何が起きても日本の空のインフラをしっかりと守り抜いてまいる所存」と語った。
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