特集/本誌より

名古屋発ヨーロッパへの直行便、フィンエアーAY080便でヘルシンキへ!

世界への玄関である中部国際空港(セントレア)において、欧州とのネットワークを担うのがフィンエアーだ。
週4往復で乗り入れ、機材はもちろん最新キャビンを備えるエアバスA350-900。
セントレアでは夜にしか見られない、その美しい機体に乗り込み北欧を目指した!

※本記事は月刊エアライン2025年6月号特集「エアポート24時」から転載したものです(一部、AIRLINE Web用に変更)。

文:芳岡 淳 写真:芳岡 淳
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ヘルシンキへの出発を待つOH-LWM。中部線を含めてフィンエアーの日本路線には全てA350-900が投入されている。航続距離に加えて広大な貨物スペースがアドバンテージだ。

Nagoya→Helsinki/AY080 Premium Economy

ひとつ上をゆく、ナイトフライトを堪能するくつろぎ

 日本とヨーロッパの距離を最も近づけてくれている存在が、フィンエアーだと言っても過言ではないだろう。

 もちろん、欧州各国の他のフラッグキャリア各社も、東京線を中心とした日本路線を展開しているものの、フィンエアーはそうした欧州勢の中でも突出して積極的な日本路線のネットワーク展開を行なっていることで知られ、首都ヘルシンキから羽田・成田の東京線、関西への大阪線、そして中部への名古屋線の計4路線、週に合計25便もの日本路線を最新のフラッグシップ機材であるエアバスA350-900で運航している。

 今回は、夏スケジュール開始の3月末から運航を再開した中部発ヘルシンキ行きAY080便へと搭乗した。AY080便の出発時刻は22時50分と、この日セントレアを出発する最後の旅客便になる。チェックインカウンターは、筆者が到着した3時間以上前からオープンしている様子であった。カウンターなどAY080便の地上業務を担当しているのは、スイスポートジャパンの皆さん。出発時刻の2時間ほど前がチェックインカウンターに並ぶ乗客数のピークとなるが、そうした中でも乗客一人ひとりに寄り添い、笑顔を絶やさずテキパキと心地よいチェックイン業務のせいか、列の進みは早く感じられた。

セントレアではチェックインカウンターEを使用。グランドハンドリングを担当するのはスイスポートジャパンの皆さん。この日、セントレアを発つ最後の出発便であったが、勤務終盤の疲れを見せることなく、温かい接客と真摯に業務に取り組む姿が印象的であった。
搭乗券および手荷物タグ。タグにはフィンランド生まれの「ムーミン」が描かれている。
この日、AY080便を担当したクルーの皆さんがセントレアのカウンター前に揃った。4名の運航乗務員と、8名の客室乗務員で構成されるチームだ。
出発ゲートは19番。昨今のインバウンド需要により欧州方面からの乗客が多いかと思いきや、見た限り8割ほどが日本人であった。

名古屋発という利点を享受する、パッセンジャーたちの顔ぶれ

 この日、AY080便の出発ゲートは19番。乗客はインバウンド旅行者が大半かと予想していたが、ゲートに集まった乗客の皆さんの姿を眺めると、8割ほどと思しき顔ぶれが日本人旅行者であることに驚かされた。

 旅行代理店が企画するパックツアーの参加者が多く、欧州各地を訪れるプランのようだ。このような旅行商品を企画できるのも、欧州から唯一セントレアへと乗り入れ、さらにヘルシンキから欧州各地へのコネクションにも優れたフィンエアーだからこそで、名古屋と欧州の距離を確実に近づけている。

AY080便プレミアムエコノミーの様子。2-4-2の計24席を配し、前方のビジネスクラスおよび後方のエコノミークラスとは仕切られた居心地の良い空間だ。
筆者はこの日、プレミアムエコノミー最後部の窓側座席を指定。シートの上には、同クラス専用のアメニティキットが用意されていた。
プレミアムエコノミーの利点であるリクライニングとフットレストを展開。ふくらはぎを支えてくれるフットレストは、特に長距離路線においてありがたい装備だ。
プレミアムエコノミー専用ネックピロー、アメニティキットもマリメッコのデザイン。アメニティキットは旅の記念にいただける。

エコノミークラスとは明確な差別化。プレミアムエコノミーがもたらす効能

 この往路便では、フィンエアーが2022年から行なっている客室リニューアルに合わせて導入されたプレミアムエコノミーを体験することにした。

 座席は2-4-2の配列で、前後3列の計24席を展開。エコノミークラスと比較して、シートピッチが17.5cmも広いことで、座った瞬間からゆったりとした空間であることを実感できる。そして何よりもフットレストが搭載されていることで、長距離飛行においても脚を伸ばしてくつろぐことができた。12時間を超えるフライトだけに、エコノミークラスからアップグレードするメリットは決して小さくない。

 乗客にはマリメッコがフィンエアー専用にデザインしたポーチとともにプレミアムエコノミー専用のアメニティキットも提供され、ヘルシンキに向かう機内からフィンランドの美しいデザインセンスを感じることもできた。また、Phitek製のノイズキャンセリングヘッドホンやネックピローも使用することができ、こうしたソフト面でもエコノミークラスとの差別化は想像以上という印象だ。

24時間運用のセントレアではあるが、旅客便としてはこの日最後の出発便となるAY080便。23時ちょうどにRWY36を離陸した。
1回目の機内食のメイン、筆者は「和風牛肉の蒸し煮 ゆず風味仕立て、豆腐、季節の野菜、ご飯、黒ごま添え」をチョイス。もう1品は鯛の蒸し物がメインの魚料理だった。
北極圏ルートの通過証明書も記念品として配付された。日本発の便はこのルートを飛行することが多いので、手に入れられる確率も高いだろう。

プレミアムエコノミー専用メニューの機内食に舌鼓

 離陸後ほどなくして提供される機内食についても、プレミアムエコノミー専用のメニューが用意されている。

 メインコースは2種類の和食からの選択で、筆者は牛肉料理をメインとしたメニューをチョイス。座席数が少ないプレミアムエコノミーでは、提供が早いこともメリットだと感じる。また、ヘルシンキ到着まで2時間半というところで朝食も提供された。こちらもイッタラ製の陶器の食器を使用して、エコノミークラスとは明確に差別化している。野菜のキッシュをメインにポテトと目玉焼きを添えた、朝食には最適なメニュー。

 フィンランド上空に差し掛かったところで機窓を眺めてみると、うっすらと緑色をした帯状のオーロラを見ることができた。オーロラのベストシーズンは秋頃とのことだが、春から夏へと移ろうこの季節、こうして目にすることができる最後のチャンスだったかもしれない。同時に、北極圏飛行ルートの「北極航路通過証明書」もフィンランドを代表する人気者であるムーミンのステッカーとともに配付され、“フィンエアーらしさ”を存分に感じられる充実したフライトを終えた。

フィンランド北部に差し掛かったところでふと外を眺めてみると、波打つオーロラの光景が。
2回目の機内食は朝食として提供。野菜のキッシュとフルーツの盛り合わせ。
到着したフィンエアーの本拠地、ヘルシンキ・ヴァンター空港。デザイン性の高さで知られるフィンランドだけに、空港ターミナルのデザインも「らしさ」を感じさせる。

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帰国便は独創性が光るビジネスクラス、「AirLounge」を堪能する南回りで