航空旅行

カラダ楽々、ANAエアバスA380「ANA COUCHii」のフライトレポート

ANAがハワイ線の専用機材として投入しているのがエアバスA380です。
総2階建てという巨体は唯一無二で、ANAではウミガメの特別塗装を施し「FLYING HONU」という愛称でも親しまれています。
今回は『航空旅行vol.43』から、エコノミークラスなのにフルフラットベッドでくつろげるカウチシート「ANA COUCHii」のフライトレポートを再編集してお届けしましょう。
※この記事は『航空旅行vol.43』(2022年10月発売)から抜粋・再編集したものです。

文:佐藤言夫 写真:深澤 明
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ANA_A380_2
成田行きNH183便としてC4ゲートに待機していたのはエメラルドグリーンの「FLYING HONU」2号機。

日本ではANAだけのシート

 ANAのエアバスA380「FLYING HONU」だけに搭載されるカウチシート「ANA COUCHii」は、各列に3席もしくは4席が並ぶエコノミークラスシートのレッグレストを水平位置まで跳ね上げることで座面をフルフラットのベッドに変形できる座席のこと。「FLYING HONU」ではメインデッキの最後方コンパートメントの計6列(60席分)に設置されている。1人で3〜4席を占有してもいいし、家族連れやカップルが複数人で利用してもいい。料金は利用人数によって設定が異なるので、ANAのホームページなどを参照して欲しい。
 搭乗するのはホノルルを昼の11時35分に出発する成田行きのNH183便。デイフライトなので必ずしも眠る必要はなく、小さな子供連れのファミリーなどはリビングの床で遊ばせるようにしてくつろいで過ごすことも可能だ。「予算的にファーストクラスやビジネスクラスは利用できない」という人でも、フルフラットでの移動を可能にした画期的なシートといえる。

cabin
メインデッキの再後方コンパートメント。緑のヘッドレストカバーが装着された6列がカウチシート対応の座席。

カウチ用の特殊なベルト

 成田からのNH184便は予定通りホノルルに到着したようで、コンコースへ向かう通路から巨大な「FLYING HONU」の垂直尾翼が見えていた。スポットに駐機しているのはエメラルドグリーンの2号機である。
 折り返し成田行きNH183便となった2号機は、ほぼ定刻にプッシュバック。旅の疲れでうつらうつらしていたのだが、あまりの静かさで動き出したことに気づかなかった。さすがはA380だ。「リーフランウェイ」と呼ばれる沖合の滑走路までのタキシングも安定感十分で、その後はホノルルの市街地を左手に見ながら東の空へ向かってゆったりと離陸した。
 宙に舞ったNH183便はすぐさま太平洋上へ右旋回。眼下にはワイキキの海岸線に次いでダイヤモンドヘッドの姿が現れた。この後はひたすら洋上飛行が続くので、機窓的にはこの日一番の見どころとなるだろう。さらば、ホノルル! アロハ、ハワイ!
 巡航に入ると、CAがカウチシートを利用する乗客にベルトを配布し始めた。このベルトはカウチシート専用のもので、ベッドにして横になる際に使う延長用の「ガドルベルト」と、身体を起こしているときに腰巻のようにしてシートベルトに接続する「ループベルト」の2種類である。カウチシートでは自由な体勢でくつろげるだけに、突然の揺れに備えるためのベルトにも工夫がいるのだ。
 なお、3列席を使用する場合は窓側に頭を向けて眠るようにも要請される。通路を歩く乗客と眠っている乗客の頭が接触して怪我することを防止するためだ。いままでにない装備やルールなのでいちいち興味深い。
 また、カウチシートだけのアメニティとして大型の枕とコンフォーター(掛け布団)が用意される。レッグレストを跳ね上げてベッド状態にし、枕を置けば直ちに「寝室兼リビング」が完成。1人利用ならば十分すぎる広さで、長距離国際線で使いたいほどであった。

takeoff
ランウェイ8Rから離陸して右旋回中に見えたワイキキ周辺とダイヤモンドヘッド。
belt
カウチシート用のベルトのセットと取扱説明書。眠る時と起きている時で異なるベルトを着用する仕組み。
amenity
カウチシートとして利用する乗客には、大型の枕やコンフォーターといった専用のアメニティが用意される。

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自由な体勢で少ない疲労

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