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ANA、万博会場でJoby製eVTOL“空飛ぶクルマ”のデモフライト。10月1日からは毎日飛行予定
ANAホールディングスとJoby Aviationは、Joby製のeVTOL機、いわゆる“空飛ぶクルマ”のデモフライトを、大阪・関西万博の会場で実施。日本でのエアタクシーサービスの実現に向けたテイクオフだ。

ANAホールディングス(ANAHD)とJoby Aviationは9月30日、大阪・関西万博2025の会場に設けられたVertiport(垂直離着陸機の発着場)を舞台に、Joby製のeVTOL(電動垂直離着陸機)のデモフライトを実施した。日本における“空飛ぶクルマ”実現への期待を示すかのように、会場には多くの来賓も詰めかけた。




ANAHDが導入を検討しているのは、Joby製のeVTOL「Joby S4」で、乗員1名と乗客4名が搭乗可能。時速は最高200マイル(320km)、航続距離は160km。
6個のプロペラを備え、このプロペラがティルトすることで垂直離着陸を実現している。なお、このプロペラ自体が揚力を生み出すので「ローター」と表現するのがより適切であろうが、今回のJobyからの説明は常に「プロペラ」の語が使用されていたので、本稿もそれに準じている。そして、一部のプロペラが停止しても飛行が可能であることはもちろん、各プロペラには2系統のモーターを装備することで、より高い冗長性を持たせた。
さらに、バッテリーは4基を備え、こちらも、それぞれトラブルが発生した場合の冗長性確保が可能な仕組みであるという。姿勢制御はピッチをコントロールするエルロンと、V字型の垂直尾翼に備えたラダベーターが担う。







プロペラが6個、と聞くとさぞかし大きな音がするのではないかと思われるが、かなり静か。実際にデモフライトの際、上空には報道のヘリコプターが飛んでいたのだが、Joby S4のプロペラ音はより低い高度(つまり近い)にもかかわらず、報道ヘリの音にかき消されてしまうほど。そのヘリの音がない状態でも、モーター特有の唸るような音や、回転が上がったときには風切り音も聞こえてくるものの、人の会話が困難になるほどの音ではない印象だった。
9月30日のデモでは、11時09分に離陸して、万博会場の沖合いを時計回りに高度400フィート、速度170km/hで12分48秒間フライト。来場者によく見てもらおうと、通常よりも速度を落として飛行したという。
10月1日からは1日2回(11時~/14時~)に毎日でもフライトを実施予定。この際には円ではなく、8の字を描くように飛行する予定となっている。



2027年以降のエアタクシーサービス実現に向けて「確かな一歩」
このデモ飛行の実施にあたって行なわれた式典に登壇したANAHDの芝田浩二社長は、「この飛行は単なる実験ではない。Jobyはすでに64,000km、地球1.2周以上の飛行実績を重ねており、私たちが目指すエアタクシーサービスの社会実装に向けた確かな一歩」とコメント。「間もなく、このかつてない移動手段が皆さまの選択肢に加わる」と意気込みを示した。
ANAHDでは、首都圏をはじめ、関西圏、中部圏、地方、島しょ部などの日本各地で、2027年度以降にエアタクシーサービスを提供することを目指している。例えば東京都心から成田空港なら、地上交通では60~90分程度かかるところ、エアタクシーなら約15分で移動できる。さらに、価格についても今回の会見後に開かれた報道関係者向けの質疑応答のなかで、「タクシーなら3万円から5万円を切る料金。スピードという優位はあるが、それを付加しても10万円、20万円という料金では競争力がないと思う。できるだけ地上交通に伍していけるようなプランを実現していきたい」との考えを話している。
また、Jobyのジョーベン・ビバート(JoeBen Bevirt)CEOは、「万博は人類の英知が集結する場。人類がこれからどんな社会を作り出していけるのか、希望と変革、そして誇りの象徴である。モントリオール万博のモノレール、愛知万博の超電導リニア、上海万博の水素燃料電池など、過去の万博が未来を切り拓く革新的なアイディアを具現化してきたように、大阪万博は空のモビリティという新たな交通手段の時代の幕開けを担っている」とあいさつ。
そして、「このデモ飛行は、アメリカのイノベーションと日本のものづくりに対する精巧さと技術力が融合した時に変革が起こるとことを証明した、象徴的な瞬間だった。アメリカで開発され、トヨタ自動車の生産技術の思念によって作られ、それがANAの協力によって実現できたもの」と評した。
Jobyでは2026年にドバイで商用サービスを開始すべく開発を進めている。FAA(米国連邦航空局)の型式証明を取得することが当面のマイルストーンであり、その進捗についてビバートCEOは、「最終的な型式証明を取る機体の完成が今年末、順調にいけば来年からFAAによる飛行試験をスタートできると思っており、順調に進んでいる」との認識を示した。

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