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国際線では世界初! JAL、燃費を改善するリブレット塗装をボーイング787-9に施工
環境問題への対応がより一層強く求められている昨今の航空業界。中でも飛んでいる時間が長い国際線機材は、わずかに燃費が改善するだけでも大きな効果が見込める。今回、まさにこうした国際線機材に、空気抵抗を減らすリブレット塗装をJALが世界で初めて施した。
国際線機材、そして787-9では世界初のリブレット塗装
JAL、JAXA、オーウエルの3者は1月10日、リブレット塗装を施した国際線用ボーイング787-9(JA868J)を羽田空港の格納庫内で披露した。
リブレット塗装の「リブレット」とは、サメ肌形状にヒントを得た微細な溝を施した構造で、飛行中の抵抗のうち影響が最も大きいとされる表面摩擦抵抗を低減させる技術。抵抗を減らすことで燃費が最大2%程度改善すると言われており、CO2排出量削減に効果がある。今回リブレット塗装を施工したJA868Jでは、年間で約119トンの燃料消費量と、約381トンのCO2排出量削減が見込まれるという。
JALでは、2022年7月からボーイング737-800を2機使用し、リブレット塗装の実証実験を進めてきた。今回は次のステップとして、使用する機体を大型化し、乗客を乗せた国際線の定期便で検証を開始する。JALによると、リブレット塗装を施した機体の国際線への投入、および787-9への施工は、いずれも世界初とのことだ。
複数あるリブレット施工技術、今回は「Paint-to-Paint Method」を採用
機体にリブレット形状を施す技術は、塗装によるもののほかフィルムを使用した方法も存在するが、JALが実機で検証を進めているのは塗装での施工だ。フィルムによる施工と比較し、作業に熟練のスキルが必要ではあるものの、はがれ落ちるリスクがないなどのメリットがあるという。さらに塗膜にリブレット形状を形成する手法も、オーウエルが実施している「Paint-to-Paint Method」のほか、並行してニコンの技術により検証が続けられている「Laser Processing Method」が存在し、今回のJA868Jはオーウエルの「Paint-to-Paint Method」による施工となっている。
この「Paint-to-Paint Method」とは、リブレット形状の水溶性の型に航空機用塗料を重ね合わせてシート状にしたものを機体の塗膜に圧着し、水洗いをすることで型が溶けて流れ、リブレット形状の塗膜が機体に残るというもの。シートを圧着する前に機体の塗膜をわずかに削ることで、重量の増加がほとんど無い形での施工が可能で、これもフィルム分の重量が増加してしまうフィルム施工法にはないメリットだという。今回は実際にデモの形で施工の様子が公開され、水をわずかに含ませることで、水溶性の型がドロドロに溶けていくところを見ることができた。
対して「Laser Processing Method」のほうは、既存の塗膜へさらに塗料を重ね塗りし、膜厚を増した塗膜へ直接レーザー加工によってリブレット形状を形成する。2つの施工方法はそれぞれにメリットとデメリットがあり、それらの使い分けなども含めて今後も検証を続ける。
JALはこうしたリブレット技術開発の取り組みを「Refresh」プログラムと称し、脱炭素社会の実現に向けて環境にやさしい航空技術の発展を目指している。今後はリブレット塗装の施工範囲や適用機種を拡大し、さらなるCO2排出量削減に取り組んでいく。
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