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20周年を迎えたVistaJet。その最新鋭機、グローバル7500の機内へ!

日本でも目にする機会が多いビジネスジェットオペレーター、VistaJet(ビスタジェット)。設立から20周年を迎えたにあたり、羽田空港で記者会見を実施した。同社が運航する大型ビジネスジェット、ボンバルディア・グローバル7500の機内の様子とともに紹介しよう。

文:ウォレンス雄太(本誌編集部) 写真:芳岡 淳
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20年で急成長を遂げたビジネスジェットオペレーター

 シルバーのボディに、スリムな赤いラインの機体。空港で飛行機を眺めていれば、一度や二度は見たことがある飛行機だろう。このカラーを身に纏った機体は世界に300機以上。大抵のエアラインをも凌ぐ保有機数ながら定期便は持たないこの会社の正体は、ビジネスジェットの世界最大級のオペレーター、VistaJet(ビスタジェット)だ。

 これだけの規模のエアラインともなれば、さぞ長い歴史があるのかと思いきや、そういうわけでもない。設立はわずか20年前の2004年で、そこから2008年にアジア、2010年に中東・アフリカ、2013年にアメリカマーケットに進出するなど、急成長を遂げている。

写真のグローバル7500のほか、同じボンバルディアのチャレンジャー・シリーズなど、短距離から超長距離まで対応できる多様な機種を運航。どの機体でも、シルバーのボディに赤いラインという塗装は共通だ。

世界を幅広くカバーするオペレーションで、顧客のニーズに応える

 ビジネスジェットを利用する場合、自分で機体を所有したり、その都度ビジネスジェットをチャーターする方法もあるが、前者は維持・管理のコストや手間がかかり、後者は必要な時に機体が手配できなかったり、利用のたびに機体や装備がバラバラだったりすることがデメリットになりうる。

 一方のVistaJetは欧州と北米・カリブ海に計6つの運航拠点を持ち、世界中に35のオフィスを設けるなど、世界の96%をカバー。顧客のニーズに応じて、300機以上のフリートで柔軟に応えることができるのが強みだ。またこれだけ多くの機体を運航しながら、どの機体に乗っても一貫した搭乗体験を得られるよう、運航機材の内外装のデザインを基本的に統一しているのも特徴である。

機体サイズの制約などによって多少の違いはあれど、顧客がどの機体に乗っても同じ体験を提供できるよう、異なる機体でも内装まで統一している。

日本の会員数は急増、今後もさらなる成長が見込まれる

 今回20年の節目を迎えたにあたり、VistaJetのアジア太平洋・中東・アフリカ地域マーケティング副社長、エイミー・ヤン氏が来日。羽田空港で記者会見に臨み、日本市場での同社の現状について語ってくれた。同社の「プログラム会員」と呼ばれる会員数は2024に入り、第3四半期までに日本で400%増加。総飛行時間も10%、フライト数も25%増えているという。今後も日本の超高所得者層は2028年までに12.9%増加する見込みであるほか、海外から収益を得る日本の製造業が多いこと、反対に海外から日本への投資も活発であることから、VistaJetの顧客もさらに増えると同社は予測している。

 また年間の飛行時間が200時間程度までであれば、機体を自己所有するのは経済的ではないというが、VistaJet会員の平均年間飛行時間は120時間ほどで、会員の多くが自己所有と比べてコストを抑えられている。また機内サービスなどのカスタマイズの内容によって料金は会員毎に異なるものの、会員向けには固定の時間単価でサービスを提供しており、運航に係るコストが予測しやすいのもポイントだという。

記者会見に臨んだVistaJetのアジア太平洋・中東・アフリカ地域マーケティング副社長、エイミー・ヤン氏。

ボンバルディアの最新ビジネスジェット、グローバル7500も運航

 この日の会見後には、VistaJetのボンバルディア・グローバル7500を実際に見学した。この機体はビジネスジェット専用機では最大級のサイズ、かつ最長の航続距離を誇る機体で、グローバル7500のフリートを保有して商業的に提供しているのはVistaJetだけだという。

 機体の全長・全幅はボーイング737-700やエアバスA319に相当し、客室の高さは1.88m、幅は2.44m。客室長は16mにおよび、ギャレーやクルーレストといった乗務員がメインで使うエリア、食事や仕事ができる座席が並ぶエリア、ソファ席とテレビが置かれたリビングのようなエリア、そしてラバトリー付きのベッドルームと、4つのコンパートメントに分かれている。座席は計14席あり、全員がベッドで横になる場合でも最大8人が搭乗できる。

見学用の機体として用意された、VistaJetのボンバルディア・グローバル7500(登録記号9H-VIL)。横から見るとその胴体長が際立つ。前日夕方に香港から飛来し、見学終了後の18時すぎ、再び香港へ向けて飛び立った。
3つ目のコンパートメントには、大きな液晶モニターとソファーが。なお機内Wi-Fiも装備するなど、地上と変わらず仕事ができる環境も整っている。

 航続距離はボーイング787-9などと同等の7,700海里、14,260kmにおよび、17時間の連続飛行が可能。ロシア上空をはじめ、国際情勢の影響で飛行できない空域が多い昨今では、この航続距離は非常に大きなアドバンテージになる。また特筆すべきは最大巡航高度で、一般的な旅客便の巡航高度(3万〜4万フィート)をはるかに上回る5万1,000フィートまで上昇が可能なのだ。高度が高いほど空気の密度が下がり抵抗が減るため、高高度での巡航は燃費の改善にもつながる。

 また燃費といえば、ビジネスジェットは環境負荷の面から批判の的になることも多いが、VistaJetではパートナー企業と協力して機内のシングルユース品を廃止したほか、SAFも積極的に取り入れている。さらにカーボンオフセット(温室効果ガスを排出する代わりに、削減する活動を行なったり、削減活動に投資したりすること)プログラムも提供し、顧客の85%がこのプログラムを選択。それ以外の顧客も自身で何らかのオフセットプログラムを実施しているケースが多いなど、利用者側も環境に対する意識を持っていることが窺える。

客室後部にあるベッドルーム。最後方には洗面台付きのラバトリーもある。
前方にある、主に乗務員が使用するエリア。ギャレーはオーブンや電子レンジなども装備。長距離を運航できる機体だけあって、クルーレスト(写真右の部屋)も設けられている。
日本でも目にする機会が多いビジネスジェットオペレーター、VistaJet(ビスタジェット)。設立から20周年を迎えたにあたり、羽田空港で記者会見を実施した。同社が運航する大型ビジネスジェット、ボンバルディア・グローバル7500の機内の様子とともに紹介しよう。

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