特集/本誌より

エンブラエル民間航空機部門CEO、アリアン マイヤー氏に訊く 〜ANA E190-E2選定の勝因〜

発売中の月刊エアライン5月号でも詳報している通り、ついにANAからの初オーダー、同時に日本市場におけるE-Jets E2シリーズの初オーダーを勝ち取ったのがブラジル航空機産業の雄であるエンブラエルだ。
4月8日に東京で開催された「エンブラエル航空機ファイナンスサミット」のため、エンブラエル商用航空機部門のアリアン マイヤーCEOら幹部が来日。この日、月刊エアライン/AIRLINE Web編集部がインタビューの機会を得た!

文:山田 亮(本誌編集部) 写真:ウォレンス雄太(本誌編集部)
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ANAが20機(うち5機オプション)をオーダーしたエンブラエルE190-E2。2028年度からの導入が計画されている。
Image:Embraer

世界的エアラインである、ANAに選ばれたことの意味

「私たちのE190-E2が世界的エアラインであるANAに選ばれたことは、他のカスタマーとの今後の商談においても、“あのANAにも選ばれた機体”として良い方向に働くでしょう」

 そう話すのは、KLMオランダ航空における前職からエンブラエル機と密接に関わってきた経験を持つ、エンブラエル商用航空機部門のアリアン マイヤー(Arian Meijer)CEOだ。エンブラエルには2016年に入社し、欧州や中東アフリカ市場などのマーケティングや販売、サポート、さらにはCCOを経て、2020年から現職にある。

 さて、皆さんもよくご承知の通り、2023年まで日本では三菱SpaceJet(旧MRJ、2020年10月より事業凍結)が開発されていて、なんといってもANAはそのキックオフカスタマーとして最重要の存在であった。当然、計画通りにSpaceJetが実用化へと進んでいたら、今回のE2発注は考えられなかった選択ということになる。

「私たちは三菱SpaceJetの開発や、同機と日本の航空各社の関係性をリスペクトしてきました。ANAにアプローチしたのはSpaceJetの開発中断後で、ANAのRFP(提案依頼書)提示とともに、本格的な提案に取り組むことになったのです」

インタビューに応じてくださったアリアン マイヤーCEO(中央)、ヴィクトーヴィエイラ ドス サントス氏(左)、洪 奭和 氏(右)。ANAのE190-E2に搭乗できる日を楽しみにしています!

「E2がANAに何をもたらすことができるのか、そのことをアピールしました(マイヤーCEO)」

 ここ数年を振り返ると、E-Jets E2あるいはエアバスA220のメーカー・デモ機がしばしば羽田空港などに飛来していたことをご記憶の方も多いと思う。察していた通り、やはりANAへの商戦でコンペティターとして位置付けられたのは、A220であったという。

「E2はA220とは違い完全な新規開発の機体ではありませんが、2004年から多くの航空会社で運航を重ねてきた従来型E-Jetsの高い信頼性をベースに、さらなる進化を遂げています。品質、技術、燃費などの検討プロセスにおいて、E2には最新の技術が投入されていること、そして何よりも、E2がANAに対してどのような価値をもたらすことができるのかをアピールした結果、今回の選定を勝ち取ることができました」

そのように、マイヤーCEOは振り返る。

 さらに、本取材に同席したリージョナルセールス・バイスプレジデントのヴィクトーヴィエイラ ドス サントス(Victor Vieira Dos Santos)氏はこうも説明する。

「航空会社の機材選定においては、投資によりもたらされる価値からその運用コストを差し引いたNPV(割引現在価値)が重視され、今回のANAによるE190-E2選定も、このNPVの優位性がポイントでした。機体のサイズを考えても、A220は737やA320と近すぎるという判断があったと思います」

E-Jets E2は複数回にわたりデモンストレーション機が来日し、こうした機会を通じて本邦各社へのPR活動を行なってきた。写真は2022年11月、E195-E2デモ機の飛来時。

そして、既存のE170/E175カスタマーに対してはどう動くか

 ANA以外の日本における既存のE-Jetsカスタマー、つまりFDA(E170/E175)とJ-AIR(E170/E190)については、今のところE2導入という判断を下していないが、乗員のライセンス面で従来型からの高い共通性を備え、より洗練された性能を持つE2シリーズには当然、各社ともに次世代の運航機材として熱い視線を注いでいる。こうした日本の顧客に、エンブラエルはどのようにアピールしているのだろうか。

 一方で、従来型のE170/E175クラスの進化版でありE2シリーズ最小のラインナップであるE175-E2については、メインの市場である米国の乗員労使協定であるスコープクローズの緩和が実現していないことから実用化を先送りし、2029年までは初飛行をしない方針が決定している。

 こうした点については、アジア太平洋地区セールス・ディレクターの洪 奭和(Hong Seokwha)氏が答えてくれた。

「E190-E2(最大114席)と従来型のE175(最大88席)では、機体規模も大きくは離れていません。ニーズが高い路線であれば、1席あたりのコストを上げることなくE190-E2を導入することが可能です。例えば最近、FDA松本路線の搭乗率の高さについて話を聞く機会がありました。こうした特定の高需要路線をE190-E2にアップグレードすることは、非常に効果的だと考えています」

 さて、このように濃密なインタビューが実現した今回の取材。日本市場のこと、E-Jets E2のこと、そしてエンブラエル自身のことについて、さらに深い話を聞くことができた。本インタビュー記事の完全版はぜひ、4月30日発売の月刊エアライン6月号でお読みいただきたい。 

発売中の月刊エアライン5月号でも詳報している通り、ついにANAからの初オーダー、同時に日本市場におけるE-Jets E2シリーズの初オーダーを勝ち取ったのがブラジル航空機産業の雄であるエンブラエルだ。 4月8日に東京で開催された「エンブラエル航空機ファイナンスサミット」のため、エンブラエル商用航空機部門のアリアン マイヤーCEOら幹部が来日。この日、月刊エアライン/AIRLINE Web編集部がインタビューの機会を得た!

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