航空旅行

SQ671便・中部発シンガポール行き〜ボーイング787-10 part2

“最新鋭の翼とやさしいおもてなし”をポリシーとするシンガポール航空の名古屋(中部)〜シンガポール線は2019 年10月、就航30周年を迎えた。
この記念すべき年に名古屋線へ投入されているのは、同社がアジア域内用として導入を進めるボーイング787-10。
いつ乗っても期待を裏切らない安定のホスピタリティは、ますます磨きがかかっている。
※この記事は 『航空旅行vol.31』(2019年10月発売)から抜粋・再編集したものです。

文:本城善也 Text by Yoshiya Honjo  写真:大橋マサヒロ Photo by Masahiro Ohashi
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動線に優れる中部国際空港

 中部発シンガポール行きのSQ671便は10時30分(編集部注:2024年2月時点では10時20分発)に出発する。時差が1時間のシンガポール到着は16時20分(編集部注:2024年2月時点では16時15分発)で、昼から夕方への、日本での生活リズムをそのまま維持できる身体に負担が少ないデイフライトである。
 『航空旅行』では、毎号さまざまなエアラインの国際線フライトルポをお届けしているが、どうしても路線や機種などの関係で東京(羽田・成田)発着になってしまうことが多い。そのため地方在住の読者の皆さまからは「東京以外の路線も取り上げてほし
い!」というご意見をよく頂戴している。よって今回の中部出発はそんな期待に応えることができているのではないかと見込んでいるが……こんな難しいことを思わなくても、一取材者として単純に中部からの出発は新鮮だ。チェックイン、保安検査、出国審査とやっていることは東京発と何も変わらないのに、中部ならではの動線が興味深く、いつもよりそわそわしている。
 昨今、日本人の出国は自動化が進み、「顔認証ゲート」の利用が一般的になった。中部にも導入されていて、あっという間に出国できてしまったが、最近東京では省略しているスタンプを、中部から出国した記念が欲しくて思わず審査官がいるカウンターに立ち寄ってしまった。
 それにしても中部の動線はシンプルかつ、短くて楽チンだ。鉄道駅のあるアクセスプラザからは上下移動することなく搭乗ゲートまでたどり着くことができた。路線数に限りはあるものの、中部発着の海外旅行も悪くない。ターミナル内には“遊べる”施設も
たくさんあるので、むしろ積極的に活用したいと思うくらい好印象だ。

もう映画選びで迷わない

 ビジネスクラスの乗客が利用できる「スターアライアンスラウンジ」(編集部注:現在は「プラザ・プレミアム・ラウンジ」の利用)で少しくつろぎ、搭乗口の16番ゲートへと向かう。窓の外にはこれから搭乗する787‐10の姿が見え、グランドハンドリングスタッフが着々と出発準備を進めていた。
 10時、ボーディングが始まった。ビジネスクラスの入口となるL1ドア前で、日本人キャビンクルーの岸智子さんの出迎えを受け、自席に腰を下ろす。中距離用ということで、身長180㎝で大柄の筆者には座席幅こそ長距離用のエアバスA350-900やボーイング777-300ERのビジネスクラスと比べると若干狭い感じがするが、それでも幅は26インチ(66㎝)ある。そもそもシンガポール航空のビジネスクラスは座席幅が広すぎるくらいなので、787が特別狭いというわけでなく、他社のビジネスクラスと同じくらいになったというだけだ。
 アップライトポジションでも柔らかな印象を受けるラウンドシェイプのパーティションが頭部を覆うことにより、優しく包まれているような安心感も得られる。中部発のSQ671便もそうだが、デイフライトも多いアジア線では起きているときの快適性も大事なポイントだ。787のビジネスクラスは隣席の視線が気にならず、手の届く範囲にすべて揃っている感じがいい。
 ウェルカムドリンクのシャンパンをいただきながら、さっそくヘッドホンをセットし、機内エンターテインメント(IFE)「クリスワールド」とスマートフォンをペアリングさせる。するとあらかじめ予約しておいた映画の再生が始まった。
 シンガポール航空のみならず、昨今のIFEは進化が目覚ましく、搭乗直後から使うことができ、多言語対応でかつチャンネル数もあらゆるニーズに応えるために増加が続いている。「クリスワールド」も例にもれず映画、テレビ、音楽、ゲームなどのプログラム数は1800チャンネルを超え、日本語に対応しているプログラムも多いので存分に楽しむことができるのだが、一方で選ぶのに迷っているうちに、たっぷり時間はあったにもかかわらず1本しか映画を見られなかったということもあった。その点、787に導入されている最新の「クリスワールド」は、シンガポール航空のアプリをダウンロードしておくことであらかじめ出発前にプレイリストを作っておけるので、時間を無駄にすることがない。さらに予約に使ったスマートフォンはそのまま個人用モニターのリモコンになり、備え付けのコントローラーを使わなくてもワイヤレスでIFEを操作することができる。ただ単にプログラム数を増やすだけでなく、その先の使いやすさまで考えているのはさすがというほかない。なお、シンガポール航空のマイレージプログラム「クリスフライヤー」の会員であれば、タイムアップで途中までしか見られなかった映画を、次のフライトで頭出ししてくれる便利な機能もある。
 まだ機体はプッシュバックさえしてないが、すでにシャンパン片手に自分だけのリラックスタイムは始まっている。IFEは空の旅を劇的に変えたが、シンガポール航空の機内は、さらに一歩先の未来だ。

SQ_seat
丸みのあるデザインで、柔らかい印象を受けるシンガポール航空ボーイング787-10のビジネスクラスシート。優しく包まれているような安心感がある。
SQ_787IFE
ボーイング787-10に搭載されている機内エンターテインメント(IFE)はスマートフォンと連携でき、シンガポール航空のアプリをダウンロードしておくことであらかじめプレイリストを作っておいたり、スマートフォンそのものがIFEのコントローラーとして機能したりと、非常に多機能だ。
“最新鋭の翼とやさしいおもてなし”をポリシーとするシンガポール航空の名古屋(中部)〜シンガポール線は2019 年10月、就航30周年を迎えた。 この記念すべき年に名古屋線へ投入されているのは、同社がアジア域内用として導入を進めるボーイング787-10。 いつ乗っても期待を裏切らない安定のホスピタリティは、ますます磨きがかかっている。 ※この記事は 『航空旅行vol.31』(2019年10月発売)から抜粋・再編集したものです。

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