特集/本誌より
ビジネスクラスでゆとりのロングフライト。ANAでワシントンD.C.から羽田へ
11月に発売を予定している「THE PILOT 2026」の取材で、米フロリダ州サンフォードを訪れた筆者。帰りはオーランドからワシントンD.C.を経由して羽田に向かうというルートでの移動となり、ワシントンD.C.から羽田はANAのNH101便、ビジネスクラスを使用した。そのレポートをお届けする。

弊社で毎年刊行しているパイロットになりたい人のためのムック本「THE PILOT」。この取材のために米サンフォードを訪れたのは、Xでもお伝えしたとおり。そのサンフォードでの話はムックの発売をお待ちいただくとして、この記事では、帰路で利用したANAビジネスクラスの旅を紹介していきたい。
米サンフォードで行なわれているANA自社養成パイロットの訓練を取材。単なるパイロット訓練所に留まらない、“エアラインのパイロット”の英才教育ともいえる数々の工夫が凝らされた現場でした。この模様は11月17日に発売を予定しているパイロット志望者の必携ムック「THE PILOT 2026」でお届けします。 pic.twitter.com/hfDEpqr5jA
— 月刊エアライン編集部 (@ikarosairline) September 4, 2025
取材先のサンフォードは、米フロリダ州オーランド近郊。そのアクセスにはオーランド国際空港を利用し、往復ともにワシントンD.C.を経由した。ANAのワシントンD.C.線といえば、同社が1986年に開設した路線で、ワシントンD.C.発便には「NH1」のトップナンバーが付与された。このNH1便は開設から今日まで成田着便に割り当てられているが運休中。現在は羽田線、NH101便のみが運航されている(羽田発便はNH102便)。
ワシントンD.C.の空港はもちろんダレス国際空港(IAD)である。オーランドからはユナイテッド航空を利用したのだが、到着はDゲートエリア。そこからは徒歩でCゲートエリアへ移動し、AeroTrainに乗ってNH101便が利用するBゲートエリアへ移動した。

ちなみにワシントンD.C.のエリア間は2つのシャトルサービスがある。一つはAeroTrainで、これは鉄道のような車両を利用したサービス。もう一つがモービルラウンジだ。往路のNH102便到着時にはこちらを利用したのだが、これはハイリフトローダーのようなエレベーター機構を備えたバス、と表現すると分かりやすいだろうか。元々、モービルラウンジに人を乗せ、そのまま旅客機のドアに接続して使われていたが、現在のダレス国際空港ではメインターミナルとサテライトを結ぶ交通手段として利用されている。
個人的に初めてモービルラウンジを利用したが、通常のバスとの違いはあまり感じなかった。ただ、通常のバスだと地上階と、PBB(旅客搭乗橋)と高度が近い2階あるいは3階とのフロア移動が発生する。モービルラウンジは2階相当のフロアに専用の発着ゲートが設けられているので、フロア移動を最小限に抑えられるのは、特にバリアフリーの観点でメリットになるだろう。車輪付きのキャリーバッグを持っていたら認識は変わったかも知れない。




さて、ビジネスクラス利用時の空港での楽しみといえばラウンジ。今回は「Turkish Airlines LOUNGE」が指定された。その名のとおりターキッシュ エアラインズが運営するラウンジである。少々混雑していたので長居はしなかったのだが、食事はビュッフェ形式で提供されており、サラダからシチュー(?)のような煮込み料理まで、かなりしっかりした料理を味わえる。スイーツなどもあったので、現地12時15分発のNH101便としては、そうした軽い食事も魅力的な選択肢だ。
設えとしては窓の広さが印象的だった。ラウンジは、この日NH101便がアサインされたB43ゲートの隣にあるので、これから乗る機体がまさに目の前に駐機しているのだ。搭乗待合スペースと機体の間にはガラスが2枚あるが、ラウンジは1枚。搭乗機を記念に1枚収めておくのにも魅力的な場所だった。






さて、ANAの羽田=ワシントンD.C.線にはボーイング787-8または787-9が使用されており、この日は787-8、JA806Aが充当されていた。
ビジネスクラスは「ANA BUSINESS STAGGERED(ビジネス・スタッガード)」。全席通路アクセス、プライバシーが保たれた隣席との距離感、フルフラットシートなど、今日のビジネスクラスシートのスタンダードといえる機能性を備えている。振り返れば、このシートの登場は2010年のこと。15年を経て、ディスプレイの解像度やUSBポートなどに時代を感じる点はあるが、シートの基本的な部分は十分に満足できるものだ。
電源周りはユニバーサルAC電源があるので、必要なUSB-ACアダプタを持っていけばカバーできる。フラッグシップの777-300ERは「THE ROOM」という後継シートに移行したものの、10時間を超えるフライトのビジネスクラスとして、まだまだ見劣りするとは言えないシートだろう。
個人的にこのシートは、特にテーブルが広く、安定感が抜群に優れているのが好きなポイントだ。また、サイドテーブルやその前のスペース、オットマン(フットレスト)の下部など、“ちょっと物を置ける”スペースが多いのも便利なところで、パイロットのあいさつの定番フレーズ「狭い機内」で過ごすにあたって、ストレスの軽減に大きく寄与していると思う。
また、先にディスプレイの解像度に触れたが、4Kなどと比べると、というレベルであって、機内プログラムを楽しむのに不足を覚えるかといえばそうではない。17インチというサイズも十分だ。


インターネットが利用可能な「ANA WiFi Service」も、2024年8月からビジネスクラスは無料化されている。これはもはや必須のサービスといえるもので、インターネット接続がないと困るレベルだ。
ちなみに、ANAでは8月から767-300ERの国際線機材(JA625A)で、全クラスを対象とした、動画ストリーミング配信を視聴可能な高速インターネット接続サービスの無料提供を開始した。
Viasatのシステムを採用したこのサービスは767-300ER、777-9、787-9に順次導入することが発表されており、ANAでは「その他の機材についても順次、最新の機内インターネット機器へ改修を行ない、2030年末までに8割以上の国際線機材で“全クラス無料・高速機内インターネット環境”とする計画」としている。今回搭乗した787-8では、まだ具体的な計画は示されていないが、否が応でも期待は高まる。

シートのようなハードウェアとは関係ない機内サービスは、時代に応じて変化し続けている。
まず目に留まるのはアメニティ。現在は英国のETTINGER(エッティンガー)とコラボレーションしたポーチが使用されている。紙による包装や、天然資源由来の素材を使用する「AVEDA(アヴェダ)」のリップモイスチュアとボディローション、ANAオリジナルエコバッグの同梱など、環境へのこだわりを見せるキットだ。
そして食事。最初に記しておくと、約14時間というロングフライトだったとしても少々食べ過ぎた。一応、まだ仕事中というつもりで乗っていたので、飲む方は少し控えたが……。
ウェルカムドリンクは、最初ぐらいは、とばかりにスパークリングワインをチョイス。9月から期間限定で「Champagne Drappier 1er Cru brut」を提供しており、せっかくなのでいただいておこうと思った次第。




その後、アミューズに出たカナッペやマリネなどをいただいていると、さっそく1回目の食事の時間が訪れる。鮭の照り焼きをメインとした和食と、牛フィレ肉ステーキをメインとした洋食の二択。お肉は米国滞在で堪能したこともあって、ここは和食をチョイスした。そしてデザートもチョコレートケーキにフルーツ、チーズと、フルでオーダー。食後のドリンクには、ハーブティのKUSMI TEA(アクアローザ)をいただいた。
ちなみに、温かい飲み物を頼むと鎌倉の「MAISON CACAO」とコラボしたオリジナルショコラもいただけるのだが、これがまた美味で、甘さと滑らかさ、カカオの苦みが絶妙なバランス。このあと、たびたび温かい飲み物を頼んでは、このショコラをいただくことになった。ちなみにMASION CACAOコラボのショコラは海外発便のみで、日本発便では別のショコラが用意されているらしい。





さらに、照明が落とされている間に間食として“ANAオリジナルとんこつ風らーめん”(正式名称は「ANAオリジナル~香る福岡~ コク旨とんこつ風ラーメン」)を食す。
と、延々と食べ続けた挙げ句、さらにお菓子も。こちらも9月から提供されている「もち吉」とコラボした米菓子や、フレンチフライ専門店「AND THE FTIET」のポテト菓子もオーダー。これを緑茶(と一緒にMASION CACAOのショコラ)とともに味わって、ほっと一息である。
そして、着陸前には最後のお食事。鯖梅煮+ご飯をメインとする和食と、チキンのフリカッセ+ペンネをメインとする洋食。先ほどの和食で米国滞在ゆえの米不足は解消した気分だったので、洋食をチョイスした。




と、最後の方は食事写真のラッシュになってしまっているが、やはり14時間のロングフライトともなると、ビジネスクラスを存分に堪能できるのがありがたい。そして、日本に帰るときに乗るANAの国際線は、海外空港を出発した時点から日本に帰ってきたような安心感があり、このロングフライトの間も気を緩められる。
帰国を前に一足早く緊張を解いて、美味しい機内食をいただき、のんびりできるシートで過ごしているのだから、降りたあとに感じる疲労が少ないのも当然だ。その格別さを再認識した帰国便となった。

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