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飛行機・鉄道撮影の定番レンズがバージョンアップして2色に。キヤノン、RF70-200mm F2.8 L IS USM Zを発表

2024年10月30日、キヤノンからEOS RFシステムの新たなレンズ、RF70-200mm F2.8 L IS USM Zが販売された。飛行機や鉄道を撮る人の定番であるF2.8通しの70-200mmズームレンズ。従来のレンズからの進化、そして新たにつけられた「Z」が意味するものとは。月刊エアラインと同じイカロス出版が発行する日本唯一の高速鉄道専門誌「新幹線EX」の上野編集長が、実際のレンズ触れて見えたその進化点・特徴を紹介する。

文:上野弘介(新幹線EX編集長)
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Photo: Ueno Kosuke

「新幹線EX」編集長の上野です。10月30日、キヤノンで新型レンズの発表会がありました。登場したのは、RF70-200㎜ F2.8 L IS USM Z。鉄道写真や飛行機写真ではまさに「標準レンズ」といえるものです。そのディテールを紹介していきましょう。

静止画と動画の両方をカバー

 すでに、キヤノンではRF70-200㎜ F2.8 L IS USMを2019年11月に発売している。今回発表されたレンズと、焦点距離や開放値は全く一緒だ。違うのは「Z」という記号が付くか否か。この「Z」は、パワーズームアダプターに対応しているという意味である。スチール撮影ではパワーズ―ムの必要性はあまり感じられないが、動画の場合はスムーズなズーミングに必要不可欠なものである。また、フォーカス位置を変えたときに画角が変わるのを抑えるフォーカスブリージング抑制も強化されており、全体的に動画志向のレンズである。

 くわえて、先に発売されたRF24-105㎜ F2.8 L IS USM Zと鏡胴が全く同一の設計となっているのも特徴だ。動画撮影ではカメラとレンズにマットボックスやフォーカスギアを組み合わせるのが一般的だが、こうした撮影の際のレンズ交換を容易にするための設計でもある。

 また、動画撮影ではズームリングの回転角度が少ない方が撮影しながらのズーミングがしやすくなる。今回発表されたレンズでは、回転角が70度に設定されたのが特徴だ。動画を意識した設計ではあるものの、ズーミングの回転角度が小さいというのは、スチール撮影でもズーム流し撮りをするときなどには有益な改良点である。

パワーズームアダプターを装着した様子。

静止画でも素晴らしいレンズ

 もちろん、レンズ自体の解像度や画質も素晴らしい設計である。非球面レンズ3枚を使用しているほか、スーパーUDレンズ2枚、UDレンズ1枚を組み合わせて、色収差が良好に補正されているほか、色にじみも抑えられている。

 手ブレ補正は、レンズ単体で中央5.5段、ボディとの協調制御で中央7.5段、周辺7.0段を搭載している。従前のようにMODE1~3が設定されており、MODE2は流し撮り用となっている。

 また、スチール派にもうれしい改良点が、エクステンダーに対応したことだ。RFレンズのエクステンダーは、EF時代に比べて光学性能がかなり改良されているが、RF70-200㎜ F2.8 L ISM Zの解像度が高いこともあって、エクステンダーを使用しても画質低下は最小限に抑えられている。エクステンダーを使用すれば、400㎜ F5.6のレンズとしても使用が可能だ。

 おもしろいところでは、このレンズには“絞り環”のようなアイリスリングが設けられている。これは動画撮影時の絞り設定用に使うものだが、EOS R1とEOS R5 Mark IIでは、これをスチール撮影のときの“絞り環”として使用することも可能。マニュアルフォーカス時代から撮影を楽しむファンにとっては、ちょっと嬉しい点である。

RF70-200mm F2.8 L IS USM Zの光学構成図。

ホワイトとブラックの2色を用意

 キヤノンの“70-200mm F2.8”は、EFレンズ時代からホワイトをコミュニケーションカラーとしてきた。この新しいレンズも、もちろんホワイトが用意されたが、あわせてブラックも発売されることとなった。

 いわゆる“白レンズ”には、遮熱塗料が使用されており、高温下での使用でも画質への影響が最小限に抑えられているのが特徴だ。レンズの温度が上がると、レンズ内で“カゲロウ”のようなものが発生して、解像度が落ちてしまうことがあるという。

 一方で、今回はブラックバージョンも発売された。これは室内での動画撮影などの際に、カメラが目立ちすぎるのを抑えたり、反射による映り込みを抑えたりするためのもの。ホワイトかブラックかは好みによって使い分けてよいだろうが、基本的に屋外での撮影となる鉄道・飛行機写真の分野では、ホワイトの方がよさそうだ。

従来のRF70-200mm F2.8 L IS USMと同じホワイトに加え、動画撮影に配慮したブラックの2色をラインナップ。

従来のRF70-200㎜ F2.8 L IS USMも併売

 新しい“70-200㎜F2.8”が発表されたが、従来のRF70-200㎜ F2.8L IS USMも併売が続けられる。ユーザーにとっては、“エクステンダーが使えるZ”を選ぶか、“コンパクトさを求めた従来型”を選ぶか、2つの選択肢が得られることとなった。こうして同じようなレンズでも、使用方法に合わせて2種類を用意するというのは、良心的なメーカーである。

 従来型も、エクステンダーが使えなかったり、繰り出し式ズームであったりという点はあるものの、およそ“70-200㎜ F2.8”のレンズとは思えないコンパクトさが売りのレンズだ。新しい“Z”の方は少し大柄になったものの、EFレンズ時代の“70-200㎜ F2.8シリーズ”に比べれば、軽くコンパクトになっている。

 なお、今回発表されたRF70-200mm F2.8 L IS USM Zの重量は、ホワイトで約1,115g(三脚座含まず/ブラックは塗料の関係で約1,110g)。見た目は従来型より大きくなった印象だが、重量だけで見ると+40~45gの増加に収まっている。

 鉄道写真においても、飛行機写真においても、新標準といえるRF70-200㎜ F2.8 L IS USM Z。発売日は11月下旬の予定だ。参考価格は税込みで495,000円と決して安くはないが、その金額に充分見合った性能を持つズームレンズである。

2024年10月30日、キヤノンからEOS RFシステムの新たなレンズ、RF70-200mm F2.8 L IS USM Zが販売された。飛行機や鉄道を撮る人の定番であるF2.8通しの70-200mmズームレンズ。従来のレンズからの進化、そして新たにつけられた「Z」が意味するものとは。月刊エアラインと同じイカロス出版が発行する日本唯一の高速鉄道専門誌「新幹線EX」の上野編集長が、実際のレンズ触れて見えたその進化点・特徴を紹介する。

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