連載
パイロットも憧れるジャンボ。ルフトハンザのボーイング747-8に搭乗! 〜連載【パイロットが乗客に! マニアック搭乗記】
現役の機長が1人の乗客として海外エアラインのフライトに搭乗し、パイロットならではの専門的な視点でその模様を紹介する本連載。第6回となる今回は、フランクフルト空港から東京・羽田空港へ、ルフトハンザドイツ航空のボーイング747-8に搭乗した。飛行機ファンはもちろん、パイロットにとっても憧れの存在であるジャンボジェット。生産機数が少なく貴重なその最新の旅客型をプレミアムエコノミークラスで楽しみ、最後にはコクピットも見学した。

新エンジンながらも747らしく離陸・上昇。その安定感も先代譲り
今回は個人的にも初搭乗となるボーイング747-8の搭乗記をお送りします。機体はルフトハンザの登録記号D-ABYR。搭乗時点で機齢9年半ほどと、まだまだ新しい機材です。プレミアムエコノミークラスに搭乗し、747としては最新かつ最後のモデルとなったジャンボの素晴らしさを皆さんにお伝えできればと思います。個人的には以前747-400に乗って以来、約6年ぶりのジャンボ。最新の双発機と比べてどんな快適性を見せてくれるのか、非常に楽しみです。

離陸は新型の高バイパス比エンジン、ゼネラルエレクトリック製GEnx-2Bを搭載していることから、-400と比べると非常に静かです。しかし、A380ほどの静粛性はありません。よく言うと、飛行機らしい迫力の離陸サウンドが堪能できる機材です。上昇率も-400と比べると良いように思います。
時おり入る揺れは747らしく、あたかも前後に揺さぶられているかのような特有のものを感じます。上下動も穏やかで、柔軟な翼が揺れを吸収しているような感覚。概して揺れのレベル自体も低く、とても快適です。以前747に乗務していたパイロットは、「747に比べたら他機種の揺れは大きい」とよく言います。それだけ747は安定している旅客機なんですね。

巡航に入っても揺れが少なく、非常に快適です。しかし客席位置にもよるでしょうが、機内の騒音はある程度大きめと言わざるを得ません。この辺りは747らしいところでもあり、古さを感じる部分でもあります。
機体は最初の巡航高度3万1,000フィートから、3万3,000、3万5,000、3万7,000フィートとステップアップを繰り返し、最終的には3万9,000フィートまで上昇。長距離国際線では燃料消費とともに機体が軽くなるため、このようにより燃費の良い高高度へと段階的に上昇していくのが普通です。とはいえ最新の旅客機は、重量が重くても比較的高高度まで一気に上昇可能な性能があるため、やはり一世代以上前の旅客機である印象は拭えません。

最新の旅客機には見られない、“空の女王”のキャビンの余裕
ここで機内の様子についてもレポートしておきましょう。客室インテリアは787に準じた仕様で、OHS(オーバーヘッド・ストウェージ)や読書灯、シートベルト着用サインも787と同じです。機内照明もLEDとなり、色調の調整によって時差への順応も手助けしてくれそうです。しかしながら、サイドウォールの直立具合やドア付近、天井の形状にも747のボディー形状からくる「空間の余裕」が感じられます。
長時間のフライト中、ちょっと伸びをしたいとドア付近へ行く方も多いと思います。特にそんな時、747では他機種にはない大きな空間が、気持ち良い休息時間を提供してくれます。実際、747はこのドア周りの休憩スペースが密かな人気スポットとして認知されていて、2000年代に長距離国際線の主役が777に変わりつつあったころ、このスペースが狭くなり不評を買っていたという話を聞いたことがあります。すべてにちょっとした余裕がある。効率性重視の現代の飛行機には決して真似できない贅沢ですね。

後にファーストファーストクラスやビジネスクラスも見せていただいたのですが、さすがワイドボディの中でも特に広胴の747、座席の配列も余裕があります。ギャレーも大きく、働きやすそうな雰囲気ですが、客室乗務員の方にお聞きするとあんまり…というお話でした。しかしこの辺りは航空会社が独自に決定する座席、ギャレー、ラバトリーなどの配置が大きく影響してくるような気がするので、一概には言えなさそうですが。
効率化がどんどん進む現代、747が持つ空間的余裕はもしかすると無駄な部分なのかもしれません。しかしその無駄こそ、狭い機内に長時間閉じ込められる乗客への感覚的な安らぎを提供しているのではないかとも思うのです。そういった意味でも、747はやはり「特別」かつ「愛される」旅客機なのでしょう。

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