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ついに、最も小さなneoに会えた! 実は数が少ないエアバスA319neo@セントレア
世界的なベストセラー機、エアバスA320ファミリー。人気の機種だからいつでもどこでも見られる〜と思いきや、実は受注が2桁にとどまる派生型もあるのです。先日そのレアなA319neoにやっと遭遇することができました! ceoでは人気だったのに、なぜA319neoはここまで少ないのでしょうか。

実は中国の4社に20機だけのA319neo
2014年に初飛行、2016年に路線投入が開始されたエアバスのナローボディ機、エアバスA320neo(New Engine Option)ファミリー。すでに先代のA320ceo(Current Engine Option)ファミリーと同じくベストセラー機となっており、2025年5月末時点での受注数は、基本モデルのA320neoが4,054機(A320ceo:4,756機)、A321LR/XLRを含む長胴型のA321neoに至ってはなんと7,017機(A321ceo:1,784機)となっています。
その一方で存在感が薄まってしまったのが、短胴型のA319neo。A319ceoは受注数1,486機と派生型としては遜色なかったものの、A319neoはわずか57機の受注にとどまっています。政府系やビジネスジェット(10機)、そして非公表の顧客(14機)を除くと、チベット航空(13機)、中国国際航空(10機)、中国南方航空(9機)、中国西部航空(1機)という中国の4社のみが発注。これまでデリバリーされた機体は、4社合計で20機だけなのです。

6月末のセントレア取材時、「何か面白い飛行機は来ないかな〜」とFlightradar24の一覧を見ていると、見慣れない「A31N」のコード。「A310が新エンジンに換装されて復活したか? それともA330neoに超短胴型のA330-100が誕生したか?」と訳のわからない妄想が頭をよぎること数秒…「そうだ、A319neoだ!」。実は中国南方航空が、2025年6月7日から中部=広州線にA319neoを投入しているのです。日本への同型機の定期投入はこれが初めてと思われます。

エアバス自身のライバル機にも侵食されたA319の市場
それにしても、これだけA319の人気がなくなってしまったのは、一体なぜなのでしょうか。旅客機は一般的に同じファミリーやシリーズでも、長胴であるほど1席あたりの運航コストが低くなります。反対に、A319のように基本モデルを短くした派生型は、1席あたりの運航コストが高くなるのです。
特にA320neoファミリーではエンジンの低燃費化により全体的に運航コストが下がったことから、従来はA319を運航していたエアラインも、より多くの乗客や貨物を輸送できるA320neoやA321neoに大型化するケースが多く見られます。さらにceo時代はA319がファミリーの中で最長の航続距離を誇っていて、それを活かしたいエアラインの需要も一部ありましたが、今やA321neo、さらには従来のナローボディ機では成し得なかった長距離路線も飛行できるA321LRやXLRに、その座を譲りました。

そしてA319の人気が陰りを見せた最大の要因は、リージョナルジェット機の大型化です。元々70席〜100席規模を主戦場としていたこれらの機体が、A319と同等のサイズに。エンブラエルのE195-E2はもちろん、エアバス自身にもA220-300という、直接的なライバルが現れました。
E195-E2やA220-300はいずれもファミリーの中で最大のモデルのため、「A320neoを短胴化した機体」であるA319neoよりも座席あたりの運航コストも低く抑えられます。こうして、キャパシティの面でA319、つまり120席規模の機体を求める航空会社も、E2やA220を選択するようになったのです。


さて、A320ファミリーで受注数が少ない派生型といって思い出されるのは、A318。「ベビーバス」の異名を持つこの機体はわずか80機の受注にとどまり、neoではモデル設定すらされませんでした。
現状では、A319neoの受注数はA318にも及ばず、A318よりもニッチな機体という運命を辿ることになりそうです。とはいえ、現在も受注残が25機あり、5月には中国国際航空が初号機を受領するなど、これから日本で見る機会は増えるでしょう。

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