連載
人力の補正が必要な気圧高度計の仕組み ~ 連載【月刊エアライン副読本】
【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

航空機の高度は、気圧を使って測っている。気圧は高度が高いほど低くなるから、ごく簡単には気圧計の目盛りを高度に変えてやれば高度計になるわけだ。
このような気圧高度計はフランスの物理学者ルイ・ポール・カイユテ(1832-1913)によって発明された。ちなみにライト兄弟が飛行機を発明したのは1903年のことだが、そのずっと以前から気球や飛行船は飛んでいたので、高度計の需要はあったのだろう。

ただし気圧には、天気や時間によってすぐに変わってしまうという問題がある。たとえば低気圧がくれば気圧は下がるため、そのままでは高度計は正しい値を示さない。
そこで1928年には、ドイツ系アメリカ人ポール・コールスマンがそのときの気圧値をセットすることで正しい高度を示せるようにした高度計を発明した。
現代でも機械式高度計には気圧値をセットするための窓があって、これをコールスマン・ウインドウと呼んでいる。もちろん発明者の名前からとったものだ。

パイロットは飛ぶ前に高度計を正しくセットする(それで高度計はその飛行場の標高を示す)が、目的地の気圧も同じであるとは限らないし、同じ飛行場に戻るとしても時間がたてば気圧は変わる。
そのため管制官はいつも最新の気圧値をパイロットに伝えるようにしているが、当然ながら気圧値を変えると高度計の指示も変化するので、飛行中のパイロットはそのたびに高度を修正する必要がある。

また旅客機のように高い高度(日本では1万4,000ft=4,267m以上)を飛ぶときには、地上の気圧に関わりなく高度計を標準大気圧(29.92㏌Hgあるいは1013.25hPa)にセットすることになっている。
高度計が示すのは正確な海抜高度とは限らなくなるが、ここで重要なのは正確な高度を知ることよりも周囲の航空機との間隔を保って衝突を防ぐことだ。だから、すべての航空機が同じ基準で飛ぶことが大切なのである。

気圧を測るための穴はたいてい胴体の横についており、スタティックポート(Static Port=静圧孔)と呼ばれている。
穴自体はとても小さなものだが、穴がふさがったり気流が乱れて正確な気圧が測れなくなったりすることがないよう、スタティックポートは塗装も禁じられている(金属がむきだしになっている)し、その周囲には枠組が標示されてクリーンに保つことが求められている。そのため大型旅客機においても、すぐにその場所を見つけることができるだろう。
また旅客機には、こうした気圧高度計の他に地面との距離を測る電波高度計を装備したものが多いが、これは主に着陸時に使用される。単純に高度あるいは高度計といった場合には、気圧高度や気圧高度計のことを指すと考えていい。


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