連載

操縦免許 ~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
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【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

 月刊エアラインなどの記事では、分かりやすさを重視して厳密ではない言葉を使うことがある。例えば「操縦免許」という言葉だ。実は、そういう名前の免許はない。
 航空関係では、免許に近いものに「技能証明」がある。これは航空整備士も対象に含まれているが、パイロットに関しては「操縦士技能証明」となり、以下の4種類がある。

・自家用操縦士技能証明
・事業用操縦士技能証明
・定期運送用操縦士技能証明
・准定期運送用操縦士技能証明

 しかし、これらはあまり一般的な言葉とはいえない。長々と続く漢字は、書く側にすれば単語登録で一発変換もできるが、それを読まされる側はうんざりしそうだ。だから分かりやすく「自家用免許」や「事業用ライセンス」などと書くことが多いのである。

オーストラリアでは「ライセンス」という言葉を使っているが、飛行学校の看板には「サーティフィケート」ともある。どちらでも同じなのならば、日本でも馴染み深い「免許」としてくれた方がよかった。

 しかし、これらはあまり一般的な言葉とはいえない。長々と続く漢字は、書く側にすれば単語登録で一発変換もできるが、読まされる側はうんざりしそうだ。だから分かりやすく「自家用免許」や「事業用ライセンス」などと書くことが多いのである。

 では「免許」や「ライセンス」という言葉が間違っているのかというと、そうともいえない。アメリカでは操縦するための資格を「Pilot License」としており、これをカタカナで「ライセンス」と書いたり「免許」と訳してもおかしくはないだろう。ちなみに日本の技能証明には英語で「Certificate」と併記されている。

 なぜ日本では免許ではなく技能証明としたのかは分からない。これは文字通り飛行機を操縦する技能を証明するものだからだろうが、それは免許でも同じだ。ただ自動車の運転免許証と違うのは、技能証明だけを携行していても飛行機を飛ばすことはできないということだ。

 そのほかに身体条件(飛行機を飛ばせるだけの健康状態であること)を満たしていることを証明する航空身体検査証明の携行が必要になる。これは航空身体検査を受けて合格すると発行されるものだが、この航空身体検査証明と技能証明の両方が揃って、初めて飛行機を飛ばすことができるのである。

 とはいえこうした事情はアメリカなどでも同じで、やはりライセンスの他に航空身体検査を受けて発行される「Medical Certificate(メディカルと略すことが多い)」の携行が求められる。

 細かな違いをいえば、アメリカではメディカルがなくても教官が同乗していれば操縦することができるのだが、それがライセンスと技能証明の名前の違いの理由ではないだろう。ならば、やはり日本でも「免許」にしてくれた方が分かりやすかったのにとは思う。

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