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阿施光南が見たJAL入社式 〜1年後、2年後のプロフェッショナルたちへ〜
航空業界でも多くの新入社員を迎えた4月1日。これまで、40年以上にわたり航空業界のプロフェッショナルたちを取材してきた阿施光南氏は、この日のJAL入社式で何を感じただろうか。
若者たちは、航空のプロの世界へ
4月1日、羽田空港のJAL格納庫においてJALグループ40社の合同入社式が行なわれた。
「初めての入社式」というのは、おかしな言葉かもしれない。ほとんどの人には、入社式というのは一生のうちに何度も経験するものではないからだ。転職をすることはあるだろうが、そのたびに入社式に出ることもなかろう。
だが僕にとっても、入社式に参加したのは(それがたとえ取材であっても)初めての経験だった。航空業界の仕事をするようになって40数年になるが、入社式の取材はいつも他のスタッフやカメラマンが担当していた。そして学生時代からフリーランスとして仕事をしていた僕は、自身の入社式というものにも無縁だった。だから取材を依頼されたときには、「ところで入社式って何?」というのが正直な気持ちだった。
会場であるM2格納庫に入ると、前日に到着したばかりのA350-1000の3号機(JA03WJ)に「おおっ」と思った。そして会場を埋めつくす、約2,600名という新入社員の数に圧倒された。その一人ひとりが、厳しい競争を勝ち抜いて憧れのJALグループの一員になったのかと思うと、「みんな、すごいぞ」と素直に感心した。
一方で、この人たちが将来のJALグループを担っていくというのがまだ信じられない気持ちもあった。僕はこれまで、新人からベテランまで数多くの航空会社のスタッフを取材してきた。パイロットやCA、整備士、グランドハンドリング、そして間接部門など、職種は違っても誰もが「プロの顔」をしていた。しかし、ここに集っている新入社員たちの顔は「ただの若者」にしか見えない。
「そりゃあ昨日まで学生だったんだから、無理もないよ」と笑われたが、では彼らはいつから「プロの顔」になるのだろう。
JALグループでは、入社するとまず職種共通の新人教育を受け、そのうえでさらに職種ごとの専門訓練や研修を受ける。そして現場でのOJT(実地訓練)などを経て一人立ちすることになる。とりわけ航空の世界ではすべてが安全に関わるため、新人だからという甘えは許されない。乗客の命を預かるための訓練には妥協がない。
僕は、「顔つきまでを変えてしまう訓練」を想像してみたが、うまくいかなかった。そうした訓練は何度も取材したが、カメラマンはあくまで傍観者にすぎない。そして、ここに集まった新入社員たちはこれから身をもってその厳しさを体験することになる。1年後、2年後には見違えるような「プロの顔」になっているはずだ。
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