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NASAのDC-8「空飛ぶ科学研究所」が2024年4月に退役。最後のミッションはアジアへ

現在もフライアブルな状態を保つ貴重なDC-8の1機、NASA(米航空宇宙局)が運用するN817NA。「空飛ぶ科学研究所」の名に相応しく科学の発展に貢献してきた同機は、現在実施中のアジアでのミッション、「ASIA-AQ」の後に退役する。

文:本誌編集部 写真:umayadonooil RYO.A(特記以外)
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NASAのDC-8(N817NA)の外観
ソウル近郊のオサン空軍基地に駐機するNASAの「空飛ぶ科学研究所」、N817NA。4基のエンジンはボーイング737などと同じCFM56シリーズに換装されている。

貴重な現役の「空の貴婦人」がまた1機、役目を終える

 かつてJALでも運航され、その美しいフォルムから「空の貴婦人」という愛称も与えられた4発ジェット機、ダグラスDC-8。1958年の初飛行から今年で66年間現役であるこの機種。今も飛行可能な機体があること自体が奇跡だが、その数は5機のみ。このうち最近の運航実績が確認できるのはアメリカの緊急援助支援団体「サマリタンズ・パース」が運航するDC-8-72CF(登録記号N782SP)と、NASA(米航空宇宙局)が運航するDC-8-72(N817NA)の2機のみだ。

 このうちNASAのN817NAは、現在実施中のアジアでのミッション後、2024年4月をもって退役することが決まっている。同機は1969年にDC-8-62H としてアリタリア航空にデリバリーされ、その後ブラニフ航空や、低騒音型ナセルを開発していたクワイエット・ナセル社のテスト機として渡り歩いたあと、1986年2月にNASAに加わった。現在ではエンジンがCFM56に換装され、DC-8-72型となっている。

L1ドアから機体後方を見る
L1ドアから機体後方を見る。胴体に見える突起物は大気を測定するセンサーで、各部位で測定する物質が異なる。

最後のミッションはアジアの大気汚染に関する調査

 NASAでは「空飛ぶ科学研究所(Airborne Science Laboratory)」として、地球の地表や大気の研究、およびそれらを測定するためのセンサーの開発などに使われてきた。N817NAから得られたデーターはこれまで科学の幅広い分野で活用されてきている。 今回のアジアミッションは「ASIA-AQ(Airborne and Satellite Investigation of Asian Air Quality)」という名称で、アジアの大気汚染の状況を調査するもの。2月にフィリピンからスタートしたミッションは現在韓国に移り、ソウルのオサン空軍基地を拠点に飛行している。さらに3月13日からはタイへと移動し、ウタパオ国際空港を拠点にミッションを続ける計画だ。

N817NAのコクピット
昔ながらのアナログ計器が並ぶコクピット。航空機関士も含めた3人乗務だ。
N817NAの機内
機内は測定用の機器が所狭しと並ぶ。センサーと同様、測定物質ごとにステーションが存在し、座席にはNASAのスタッフのほか、科学者なども搭乗する。乗務員席を除いた総座席数は42だ。

DC-8の跡は元JALの777が継ぐ

 今回のミッションを最後にN817NAは退役するが、後継機にも注目したい。次世代を担う機体は元JAL機(JA704J、現N774LG)だからだ。JALの777-200ER初の退役機となった同機は2020年7月1日に日本を離れていて、カリフォルニア州ビクタービルで保管されていたところNASAの買い取りが決まった。現在はバージニア州のラングリー空軍基地に移動して試験機となるための改修を受けている模様だ。2023年9月付けで正式にNASAに引き渡されていて、今後はN577NAの登録記号が与えられる。

JAL在籍時のJA704J
JAL在籍時のJA704J。2003年のデリバリー後、国際線を中心に活躍し、2020年に退役した。Photo:Fukazawa Akira
現在もフライアブルな状態を保つ貴重なDC-8の1機、NASA(米航空宇宙局)が運用するN817NA。「空飛ぶ科学研究所」の名に相応しく科学の発展に貢献してきた同機は、現在実施中のアジアでのミッション、「ASIA-AQ」の後に退役する。

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