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ANA、2025年3月期は過去最高の売上高を記録。NCA連結化は「最終調整に注力」

ANAホールディングスが2025年3月期決算を発表。全体では過去最高の売上高を記録したほか、ANAブランドの国際線事業は初の売上8,000億円超え。主に航空事業が好調な結果となった。

文:本誌編集部
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 ANAHD(ANAホールディングス)は4月30日、2024年度(2025年3月期)の連結決算を発表した。同社本社で開催された会見には、ANAHD 代表取締役社長の芝田浩二氏、ANAホールディングス 取締役専務執行役員 グループCFOの中堀公博氏が列席した。

 連結対象の企業数は71社。連結売上高は前年から2,059億円増となる2兆2,618億円で、過去最高を更新。営業利益は112億円減の1,966億円、経常利益は75億円減の2,000億円、親会社株主に帰属する純利益は40億円減の1,530億円の増収減益となった。

 減益ではあるが2月に発表した計画を上回っていることに触れたうえで、その要因として、前年度にPeachの100%子会社化による繰延税金資産の計上があったことや、当期運航規模の拡大による営業費用増、減免・補助金の減少、税制上の支出増、そしてボーイング787とエアバスA320/321のエンジン点検に関するメーカーからの補償金が営業外収益に含まれていることなどが挙げられた。エンジン点検については現在一部の機材が非稼働状態にあるが、仮に全機稼働していた場合には、150~200億円程度の営業利益増であったと試算している。

ANAホールディングス 2025年3月期の連結業績。

 航空事業の売上高は2兆587億円(1,892億円増)、営業利益は1,991億(88億円減)。売上高の内訳は、ANAの国際線が8,055億円(同10.6%増)、ANAの国内線が7,039億円(同9.2%増)、Peachが1,393億円(0.9%増)、AirJapanが117億円(同803.9%増)となった。

 ANA国際線では初めて8,000億円を突破。旅客需要は依然として堅調で、旅客数はANA国際線が前年比13.1%増、ANA国内線が8.1%増となっている。

 Peachは訪日需要に応えるべく機材を国際線に振り向け、競争が激化した下期には国内線の運賃リニューアルや臨時便の設定を行なったことで増収を達成。AirJapanは座席利用率が通年で69.3%と苦戦は見られるものの、下期のみでは82%と改善傾向にある。

ANAホールディングス 2025年3月期の国際線、国内線実績。
ANAホールディングス 2025年3月期のPeach、AirJapanの実績。

 貨物事業は国際線貨物収入が1,873億円(前年比20.5%増)、国内線貨物収入が230億円(同2.4%増)と好調に推移。第4四半期は米国の関税引き上げ発表により一時的な混乱もあったものの、円安も要因となって増収となった。

 貨物関連では、4月25日にNCA(日本貨物航空)の連結子会社化のさらなる延期が発表されている。芝田氏は「NCAの連結化に向けた最終調整に注力する」と話しており、延期の要因となっている関係当局の認可取得について、「4月になって進展が見られたと思っている。(新たな株式交換の効力発生日として提示された)5月23日の予定日までには目途をつけたい」との希望を示している。

 今期(2026年度3月期)は、さらなる増収となる2億3,700億円、営業利益は減免や補助金減などによって減益となる1,850億円、計上利益は1,750億円、親会社株主に帰属する純利益は1,220億円を見込む。

ANAホールディングス 2025年3月期の貨物事業実績。
ANAホールディングス 2026年3月期の業績見通し。

 なお、トランプ政権の関税引き上げに関して芝田氏は、「まったく読めないが、日々の動きを注視している。航空業界は先々の予約状況などを前年度比較などで分析できる。今のところ大きな流れの変化はなく、細かな駆け込み需要はあったもののはこれは長く続くものではない。(米国の動向によって)貨物の中身がガラリと変わることもあるので、そういった変化に対応していくという日々の努力が必要だと思う。需要はどこかにあるので、それを取り逃さないようにしているところ」と話し、機動的に対応していく姿勢を示した。

 また、円安から円高へと傾向が変化している状況については、「よい面とわるい面があり、例えば国際線では50%を超える外貨収入があり、(円高によって)円換算後の収入は一定程度減る。ただ(外貨建ての支払いとなる)コスト面では有利に働くので収支はプラス方向に働くと思っている。現在は142円から143円程度だが、我々は150円を前提に計画を策定しているので、いまのレートで推移するとトランプ政権の関税政策で受ける影響も吸収できるのではないか」と説明した。

ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 芝田浩二氏。

 ところで2月25日に発表した77機の新規導入については、6月のパリ・エアショーで調印式を予定しており、芝田氏も訪仏するという。同ショーでは、4月に発表した787-9の新国際線シートのうち、未発表のビジネスクラスシートも披露される予定だ。

2025年度は欧州線を中心に国際線の生産量拡大を図る。12月から2月にかけて就航した新路線も好調だという。また、9月からはシンガポール航空とのジョイントベンチャーによる共通運賃の提供もはじまる。
2月25日に発表した77機の航空機の導入など、2030年度に320機体制とし、事業規模を拡大する。
2026年度に導入を予定しているボーイング787-9の新国際線仕様機に搭載するプレミアムエコノミーとエコノミークラスシート。6月のパリ・エアショーでビジネスクラスも披露される予定だ。
大阪・関西万博では、9月下旬から10月13日にかけてJoby AviationのAAM(いわゆる空飛ぶクルマ)による海上も含めたルートを周遊するフライトが予定されている。
ANAホールディングスが2025年3月期決算を発表。全体では過去最高の売上高を記録したほか、ANAブランドの国際線事業は初の売上8,000億円超え。主に航空事業が好調な結果となった。

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