特集/本誌より

再びプライベートジェットで豪華旅へ。チャレンジャー850をチャーターして欧州を飛んだ!

すっかり本誌でおなじみとなった日本圧着端子製造株式会社(JST)。これまでハイフライ・マルタのエアバスA340-300チャーターに始まり、大阪の本社へのボーイング777フルフライトシミュレーター設置、カタール・エグゼクティブのガルフストリームG700で行く米国出張(本誌2025年9月号掲載)など、数々の特大ネタを提供していただいた。

今回は、再びプライベートジェットをチャーターして欧州出張へと出かけるとのことで、再びお誘いをいただき、密着取材を行なった。

文:芳岡 淳 写真:芳岡 淳
X Facebook LINE
ル・ブルジェ空港(パリ)では保安検査を通り抜けてすぐの場所に機体が駐機しており、徒歩での搭乗が可能。

パリからウィーンまで、AirX CharterのChallenger 850で飛ぶ

 今回の欧州出張は、往路がG700で関西からパリ(ル・ブルジェ)まで、復路がG650ERでミラノ(マルペンサ)から関西までという行程に加え、パリからウィーンまでの移動手段として、AirX Charter(エアXチャーター)のボンバルディアChallenger 850を利用した。

 航続性能にしばられない欧州域内の移動においては、日本発欧州行きよりもプライベートジェットの選択肢が非常に多いため、運航会社や機種選びから楽しめる。今回利用したAirX Charterは、エアバスA340-300(登録記号9H-BIG)も運用しており、同機は日本へも飛来実績があることから、会社名に聞き覚えがある方も多いのではないだろうか。

今回の出張における3回のフライトで唯一、この搭乗時だけはレッドカーペットで迎えられた。

 Challenger 850はボンバルディア社が開発・製造を手掛けるプライベートジェットだが、機体そのものはCRJ200をベースとしており、飛行機ファンにとっても馴染みのあるフォルムだ。

 今回の搭乗機である登録記号9H-BOOは、2005年11月にCRJ200として製造された機体で、当時ノースウエスト航空の傘下であったメサバ航空向けにデリバリーされる予定であったが、ノースウエスト航空の消滅により引き渡されることなく、2007年にChallenger 850への改修が行なわれた。2007年12月からアラブ首長国連邦(UAE)を拠点とするExecuJet Middle Eastにおいて登録記号VP-BSDとして運用された後、2015年7月に現在のAirX Charterへ移籍している。

 現在は主に欧州域内のチャーター便で運用されており、この日も我々が搭乗する前はニースから飛来し、ウィーンまで搭乗した後はマルタへと向かった。各フライトのターンアラウンドは約1時間と、プライベートジェットとしては非常にタイトなスケジュールでの運航が行なわれていた。

機体後部のコンパートメント。4席部分のところに長テーブルが配置されており、グループで食事を愉しむのに最適だ。
搭乗した9H-BOOの客室は、最大で15名が搭乗できる配置。独立したシートが12席と、3人掛けのソファが設置されている。
機内インテリアは、リニューアルが行なわれているため非常にモダンな雰囲気。しかし、機体自体は20年前に製造されたものであることから、各所のサインなどはレトロな雰囲気も感じられる。

ル・ブルジェ空港から搭乗。お洒落なラウンジで出発を待つ

 ル・ブルジェ空港は、シャルル・ド・ゴール空港、オルリー空港に次ぐパリ第3の空港で、主にプライベートジェットが発着している。空港としての歴史は3空港の中で最も古く、1919年に開港。1974年にシャルル・ド・ゴール空港が開港したことで定期便の発着は終了した。

 ル・ブルジェ空港は、飛行機ファンにとっても馴染み深い場所だ。同空港の敷地内にはル・ブルジェ航空宇宙博物館があり、コンコルドやA380、747-100など、航空史に名を残した機体が数多く展示されている。また2年に一度、西暦奇数年の恒例行事であるパリ・エアショーの会場としても知られている。

 プライベートジェットが多く発着する空港らしく、敷地内には多数のFBO(Fixed Base Operator、運航支援会社)が存在する。今回利用したのは「ADVANCED AIR SUPPORT」だ。乗客が出発前に待機するラウンジも、FBOごとに特色が大きく異なっており、ADVANCED AIR SUPPORTのラウンジは、まるで老舗ホテルのようなお洒落な雰囲気。広々とした落ち着きのある空間で、フランスらしさを存分に体感できた。

手荷物を預け、搭乗までの間はラウンジで待機。
ラウンジも広々としておりコーヒーなどを味わいながらゆったりと過ごすことができる。タイミングにもよるのかもしれないが、基本的にフライトごとの専用ラウンジとなる。

1時間半のショートホールながら、贅が尽くされたプライベートジェット旅

 パリからウィーンまでのフライトは約1時間半と、日本の国内線感覚の短さだ。プライベートジェットでは機内食メニューも自由に選択が可能で、この日オーダーされていたのはフルーツの盛り合わせ、サンドイッチ、スイーツであった。

 離陸後、ベルトサイン消灯とともにサービスが開始されたが、降下開始までは1時間に満たず、ゆっくり食事を愉しむ時間があまりない点が残念なところ。JST社では以前、関西=釜山間でプライベートジェットをチャーターしたこともあるそうだが、「サービス時間が確保できないほどあっという間だった」とのことで、これもプライベートジェットならではの贅沢な悩みと言えるだろう。

ル・ブルジェ空港RWY25より離陸。同空港では最も長い滑走路で3,000mを誇る。
機内食として提供されたフルーツの盛り合わせとサンドイッチ。軽食程度の内容でも、しっかりと盛り付けまでこだわっており、見た目にも美しい。
ウィーンまではドイツ上空を横断する飛行ルート。巡航高度は31,000ftであった。

強風ながらもスムーズなアプローチで、ウィーン国際空港に着陸

 1時間29分の飛行を経て、ウィーン国際空港RWY34へと着陸。客室からはコクピットの様子も確認できたが、遠目でもわかるほどのクロスウィンドが吹く中での着陸であった。そんな状況でも、CRJ特有の前傾姿勢からのフレア、タッチダウン直前のラダー操作と、困難さを感じさせないスムーズなランディングに、乗務員の技術力の高さがうかがえた。

 スムーズにオープンスポットへと到着した後、すぐにバスへ乗り込みウィーン国際空港のFBOへ移動。当然ながら受託手荷物を待つ必要もなく、一般の乗客とは完全に分かれた動線で空港の外へ出られる点は、やはりプライベートジェットならではのメリットだろう。


 今回は、パリに建設した新オフィスのオープニングセレモニーの開催および、イタリアを中心とした欧州各地の顧客訪問を目的とした出張であった。まさにワールドワイドにビジネスを展開する日本圧着端子製造だからこそ、出張先も豊富でプライベートジェットの活用も頷けるところ。

 飛行機マニアの同社取締役 西本氏のこと、マニア心を射抜く今後の挑戦にも大いに期待したいところだ。

容易に飛行中のコクピット撮影が可能なこともプライベートジェットならでは。CRJ200がベースになっていることから、コクピットのアビオニクスは90年代の雰囲気が感じられる。
ウィーン国際空港到着時の様子。同空港には、プライベートジェット専用の駐機エリアも存在するが、Challenger 850はプライベートジェット機の中では大型であるためか、旅客便と同じエプロンへの駐機になった。
ル・ブルジェ空港(パリ)のFBO「ADVANCED AIR SUPPORT」の入口。プライベートジェットの運航には、こうした運航支援会社の存在が欠かせない。
すっかり本誌でおなじみとなった日本圧着端子製造株式会社(JST)。これまでハイフライ・マルタのエアバスA340-300チャーターに始まり、大阪の本社へのボーイング777フルフライトシミュレーター設置、カタール・エグゼクティブのガルフストリームG700で行く米国出張(本誌2025年9月号掲載)など、数々の特大ネタを提供していただいた。 今回は、再びプライベートジェットをチャーターして欧州出張へと出かけるとのことで、再びお誘いをいただき、密着取材を行なった。