特集/本誌より
伊丹空港のヒコーキ撮影の名所、千里川土手の片岸が閉鎖。いよいよ本格化した豊中つばさ公園の整備工事
昔からファンに親しまれ、特に近年は多くの人が訪れる伊丹空港南端のヒコーキ撮影ポイント、千里川土手。2025年8月に一部開園が予定される「豊中つばさ公園“ma-zika”」の工事のため、滑走路側の土手が1月中旬から閉鎖された。現在の状況、そして撮影環境はどうなっているのか。公園ができた後の展望とともに、現地からレポートしよう。
いよいよ工事開始、豊中つばさ公園「ma-zika」
飛行機撮影の聖地とも言われる、大阪・伊丹空港南端に位置する「千里川土手」。2025年1月14日からいよいよ護岸整備工事が始まり、千里川土手の右岸(以下、滑走路側)が通行止めとなった。なお、左岸(以下、公園側)の土手はこれまで通り通行が可能となっている。
今回公園として整備されるのは、原田地区を流れる千里川の土手部分と、原田緑地と呼ばれる緩衝緑地の一帯で、豊中市、関西エアポート、大阪府の3者による整備事業となっている。豊中市のホームページによると、供用開始は2025年8月ごろを予定しており、この時点で公園の一部が開園。2027年3月に全面開園を目指すとしている。
公園の愛称は公募により、豊中つばさ公園「ma-zika」に決定。規模は約6ヘクタールにも及び、展望・芝生広場や、イベント広場、飲食施設に加え、バーベキュー施設、ドックランなどを供えた大規模なものとなる。もちろん駐車場も、それ相応の駐車可能台数を備えたものとなる予定だ。
古くからファンや地元住民に愛されたヒコーキ鑑賞スポット
千里川は箕面山にその源流をもち、豊中市内を流れたのち、猪名川に合流する淀川水系の一級河川。その流域、豊中市勝部地区から原田地区にかけては伊丹空港の南端を流れ、飛行機ファンの言う「千里川」もしくは「千里川土手」はこの付近を指す。ちょうど伊丹空港のB滑走路(RWY32L)を離着陸する飛行機を鑑賞できるスポットとして古くから地元住民や飛行機ファンに愛され、その昔、国際線の最盛期にはボーイング747などの大型機が頻繁に離着陸していた。当時、特にRWY32L側の末端にあるW1誘導路から滑走路にラインナップする機体が離陸滑走を開始するときの迫力は、すさまじいものがあった。いまでも着陸機が頭上30mほどの高さを時速約250キロ前後で通過するときの迫力は、思わず声を上げてしまうほど。至近距離で飛行機を感じることができる特別な場所なのだ。
また、2019年には世界最大級の旅行サイト、Trip Advisorにて「エクセレンス認証」を受けるなど、千里川土手は豊中市の貴重な観光資源となっている。一方で、トイレの未整備や駐車場不足などがたびたび指摘されており、観光スポットとして有効活用するにはこれらの整備が急務となっていた。
気になる今後の撮影環境の変化
飛行機ファンにとって気になるのは、今後どのように撮影環境が変わっていくのかだろう。公式発表では、土手全体が大規模に整備される計画だ。現在通行止めになっている滑走路側の土手は、広範囲にわたって階段状の護岸になる予定とされている。市が発表したイメージ図を見る限り、撮影環境がこれまでと大きく変わることはなさそうだ。ただし空港敷地との間のフェンスなどは、現時点でどのようになるのか不明で、場合によっては空港方向の撮影に影響が出る可能性も否定できない。
一方で、現在も通行することができる公園側の土手は、大きな変貌を遂げそうだ。河辺に降りることができる親水護岸になるとされており、スロープなどが設置される予定となっている。また、これまでは入る事ができなかった原田緑地側は芝生広場となる予定で、動線はかなり変わりそうだ。
千里川土手で撮影経験がある人なら分かると思うが、これまでは土手と滑走路面の高さが絶妙で、少し脚立で視線を高くするだけで空港側のフェンスをほぼクリアでき、いろいろな絵作りができた。公園として整備されることで、滑走路面との高さのバランスが変わってしまうことが若干懸念される。こればかりは空港の安全面が最優先されることであるので、現時点は未知数だ。
公園が開園すれば、周辺道路の渋滞など、懸念事項がないわけでないが、これまで以上に千里川土手が身近な存在になるのは間違いない。今回は公式発表を元に、現地で状況を見てきた範囲でお伝えしたが、今後取材などを通じて新たな情報などが分かれば、またお伝えしたい。
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