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13階に位置する飛行場管制業務の管制室。床面積は旧管制塔の2倍に増えて、足を踏み入れた瞬間から(過去の取材で訪れた他の官署と比較しても)その広さを感じた。なお、使用される管制卓は従来からのシステム(TAPS)で変わりない。
国際線ターミナル前の駐車場から撮影した新管制塔。空港内および半径約9キロ・高さ約900m圏内(管制圏)を飛行する航空機を管制する。管制室の下の階には、台風などの強風時に揺れを抑制する制振装置を備える。
飛行場管制席、地上管制席、管制承認伝達席、調整席を配置し、時間帯(便数)にもよるが、増設滑走路の供用開始後はおおよそ10人体制での勤務が基本になるという。なお、滑走路ごとに担当を分けるような運用は行なわない。
管制室の中央部分には、業務全体を見る統括席や事務スペースを配置する。
T-4など自衛隊機も発着する福岡空港だけに、両滑走路端にはオーバーランに備えたバリヤを設置。作動時は管制室から操作する。
この日は福岡のメディアを中心とした新管制塔の報道公開が実施されていた。福岡空港事務所の森島隆広 空港長は、「新しい管制塔が地域の方々に空港に興味を持っていただく、そのシンボルになれば嬉しいです」と想いを語る。
●新管制塔と滑走路の位置関係
新旧管制塔では滑走路を見る方角が逆転。つまり、左右の南北方向が変わるわけだから、航空管制官たちの慣熟訓練はシミュレーターを使用して入念に実施された。
①RWY16エンド(北)方向
新管制塔から左手方向を臨む。手前に海外エアライン各社の機体が並ぶ国際線ターミナル。滑走路長の異なる2本の滑走路だが、北側の末端は揃えて配置されている。
②国内線ターミナル方向
新管制塔からは滑走路を挟んだ向こう側に位置する国内線ターミナル。その右隣にあるグレーの建物が旧管制塔(旧航空局庁舎)で、ターミナルビルと高さがほぼ変わらないことがわかる。
③滑走路中央方向
ANA機が着陸滑走中の現滑走路と、(FUKUOKAの文字を挟んで)手前の新滑走路の中心線同士の間隔はわずか210mだから、同時出発や同時進入はできない。
ただし、現滑走路に着陸進入中の到着機がある場合にも、出発機をあらかじめ増設滑走路で待機させられるなど、2本化による運用効率の向上が期待できる。
④RWY34エンド(南)方向
新管制塔から右手方向を臨む。300m短い増設滑走路の末端は(現滑走路より)内側に入り込むような形状となっており、そうしたことを瞬時に、立体的に把握できる高さが新管制塔の90.9mであった。
⑤ほぼ完成状態の増設滑走路
供用開始前であるため誤着陸防止のバツ印が複数記されているが、増設滑走路そのものは3月末の運用に向けてほぼ完成しているように見受けられた。
管制塔だけではなく、福岡空港事務所の庁舎そのものが移転し、事務的な機能もこの取材日の前日(2024年12月2日)から稼働したとのことであった。気象庁の福岡航空地方気象台もここに同居する。
従来の福岡空港の飛行場管制は、コールサインこそ「タワー」ではあったが、「塔」ではなく国内線側の庁舎ビルの屋上に置かれた運用室で行なわれていた。高さは31.4mで、そこからの見え方は羽田空港の展望デッキからの眺望をイメージしたものに近い。
Photo:阿施光南