特集/本誌より

ダグラスDC-8 - 幕開けたジェットの時代、あふれる名門の熱情と先進性(4)

特集「Jet Airliner Technical Analysis」

文:浜田一穂
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DC-8
1966年1月31日にロング・ビーチ工場でロールアウトしたDC-8-61(N8070U)は、3月14日に初飛行。当時のニュースリリースには“World’s largest commercial jet airliner”の文字が躍る。
Photo:Douglas

クック・クレイギー法

 DC-8はエアラインからの受注を待たず開発に着手したが、1955年10月にはパン・アメリカン航空から25機の受注を得ている。もっともパンナムは同じ日に707も20機発注している。要するに二股を掛けたわけだ。
 ダグラス社ではこれまでエアライナーはカリフォルニア州サンタ・モニカあるいはエル・セガンドの工場で生産してきたが、大型ジェット旅客機にはこれらの工場や付随する飛行場は手狭で、同州ロング・ビーチに持っていた軍用機工場を拡張してDC-8生産に充てることになる。隣の飛行場に長い滑走路も新設された。
 ボーイング社が生産型707とは随所で設計の異なるデモンストレーター、367-80を製作して飛ばしたのに対して、ダグラス社では試験用機を最初から量産用治具で製作した。当時軍用機ではクック・クレイギー法として取り入れられ始めた方式だが、民間の大型機では初めてだろう。設計に自信がなければ出来ないことである。
 ダグラスDC-8の1号機(N8008D、通称シップ・ワン)は、1958年の5月30日にロング・ビーチで初飛行した。ボーイング367-80の初飛行からは4年遅れだが、707の試作1号機からは半年遅れでしかない。試験用機(試作機というより先行量産機)はエンジンなど仕様の異なる9機が製作されて1959年7月までに進空し、いずれも試験後はエアラインに売却されている。
 最初の型DC-8-10は、初飛行から16か月後の1959年8月末にFAA(連邦航空局)の型式証明を取得して、9月15日にデルタ航空とユナイテッド航空で同時に就航した。
 ボーイング社が顧客の要望に応じて胴体や主翼の異なるさまざまな型(720も実質的には707の型の一つ)を繰り出して来ているのに対して、ダグラス社は一つの胴体一つの主翼で押し通した。DC-8-50までのシリーズの違いは、エアラインごとの内装の違いなどを除けば、搭載エンジンと燃料タンク容量の違いに過ぎない。貨物型はFを付けて呼ばれる(DC-8-55FあるいはDC-8F-55等)。
 エンジンは最初ターボジェットであったが、シリーズ40でロールスロイス・コンウェイ、シリーズ50でJT3Dと燃費の優れたターボファンが搭載されるようになり、航続性能が改善された。
(続く)

※ この記事は本誌連載「Jet Airliner Technical Analysis」、小社刊「ジェット旅客機進化論」より抜粋、再編集したものです。

ジェット旅客機進化論

ジェット旅客機進化論

著者:浜田一穂 著
出版年月日:2021/09/27
ISBN:9784802210706
判型・ページ数:A5・548ページ
定価:2,860円(税込)

イカロス出版 本書紹介ページ

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