特集/本誌より
ANAのボーイング787-10搭乗レポート。最新キャビンを堪能
2クラス/429席とハイキャパシティなANAのボーイング787-10。最新のキャビンプロダクトで得られる新たな旅の体験とは? ANAの協力を得て、プレミアムクラス、普通席それぞれへの搭乗を体験した。そのレポートをお届けする。
※本記事は月刊エアライン2024年6月号から抜粋したものです。
NH61便 羽田→新千歳
787-10に搭乗した感想と美点を集約するならば、国内線次世代フラッグシップと呼ぶに相応しい“完成度”に尽きる。搭乗したのは羽田=新千歳間で、運航機材はJA983A。就航から10日足らずとあって、羽田空港の搭乗ゲート付近から見える機体はひと際白く輝いて見えるが、なにより長い胴体による端正なたたずまいが目を惹く。429席という座席数ながら混雑もなくNH61便の機内へと進むと、ほのかに新車のような香りが漂うが、とりわけ強く感じたのはキャビンの広さだ。
機体の全長は68.3mだから、787-9より約5m長く、777-300より約5m短いが、客室の広さは777を凌ぐほどに感じる。もちろん“視覚的に”であるのは分かっているが、大きな窓と純白の客室ウォールパネルによる明るいキャビンはスペック以上の開放感がある。また往路の座席は通路側最後列である51Cとあって、客室内を見渡せるポジションゆえ、その広さが際立って感じられた。
NH64便 新千歳→羽田
復路であるNH64便はプレミアムクラスに搭乗した。機体前方に28席が用意される同クラスは、国際線の「THE Suite」、「THE ROOM」に通じる落ち着いたチャコールグレー基調のインテリアを採用する。
シートはすでに777-200の一部や787-9に採用されているが、手触りよく通気性に優れるシートカバー、コシのあるクッションは快適そのもので、シートの出来は歴代随一と言えるだろう。
また機外カメラほか充実したエンターテインメントシステム、機内食ほか行き届いたサービスと相まって、1~2時間のフライトではもったいないと感じるほどだった。
明るさが生み出す開放感。静粛性も優れる快適空間
羽田=新千歳間の往復を通じて、改めて実感したのは機内の静粛さだ。これは787-10に限らずシリーズ共通の美点であるが、以前に騒音計持参で787-9に搭乗した際は座席やシーンを問わず従来機より5~10%ほど音量が小さかった。今回はライン投入直後の新造機ゆえ、そうした特徴をより強く感じたのも事実だが、機内で仕事をするにせよ、休息の時間とするにせよ、この静かさはありがたい。
さて、787-10は客室空間の絶対的な容量こそ747-400Dや777-300には及ばない。だが、十分なスペースと視覚的な効果、最新のキャビンプロダクトを組み合わせた客室は“新参”らしからぬ完成度と安心感を湛えている。
そして787シリーズの特性を活かした心地よさは、次世代を担うフラッグシップ機としての大いなる魅力と言えるだろう。
月刊「エアライン」 2024年6月号
特集は「もっと航空管制が知りたい!」。空港を発着する、あるいは上空をゆく航空機たちの安全を守る「航空管制」の役割を知るべく、屈指の交通量をほこる新千歳空港と防空の要所・千歳基地を一元コントロールする管制塔から、最前線のレポートをお届け。このほか「航空管制のキホン講座」と題し、元航空管制官がレクチャーする知識集、航空保安大学校の実習現場訪問など、深部までを網羅します。
本稿で紹介しているANAのボーイング787-10については本誌冒頭に登場。フライトレポートのほか、機内外の解説、ボーイングのチャールストン工場現地で初号機の受領に携わったパイロット、整備士へのインタビュー、初便セレモニーの模様などを詳細にレポートしています。
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