連載

旅客機の床下スペースを有効活用。機材ごとに特徴の異なる貨物室~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
X Facebook LINE



【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

747-8の床下貨物室。
747-8の床下貨物室。床面にはULDを移動するためのローラーや動力装置(PDU)、そして固定金具などが備えられている。

 存在はよく知られているのに、なかなか見る機会がないのが旅客機の床下貨物室(ベリー)だ。

 一般の人はもちろんだろうが、貨物専用機を取材する機会があっても公開されるのは自慢のメインデッキのみということが多い。取材では時間が限られているし、「ベリーは旅客型と同じですから」で済まされてしまいがちなのだ。いやいや、旅客機のベリーすら見る機会が少ないのですがと、チャンスがあればお願いしてきた。確かに飾り気のない空間かもしれないが、それも見てみなくてはわからない。

787の床下貨物室。
787の床下貨物室。747と比べると左右の幅がやや小さいため、側壁の垂直部分の高さが少し大きくなっていることがわかる。
747の床下貨物室にLD-3を収めた様子。
747の床下貨物室にLD-3を収めた様子。左右にまだ余裕があり、幅が大きなLD-1までを搭載できるようになっている。

 代表的なのは、やはりボーイング747だろう。ただ大きいからというだけでなく、航空用のULD(Unit Load Device。コンテナやパレットの総称)の国際標準規格は747の登場に合わせて作られたからだ。

 ただし747に合わせたLD-1は大きすぎて他の旅客機との互換性が低い。そこで、実際にはLD-1よりもやや幅が狭いLD-3が広く普及することになった。

LD-3を2列に搭載するために、客室後部の床を上げているA330。
LD-3を2列に搭載するために、客室後部の床を上げているA330。窓の並びが途中から高くなっていくことがわかる。

 LD-3を2列に搭載できる最小胴体径の旅客機はA300系列(A300と同じ胴体径を持つA310とA330、A340)だが、そのためにエアバスはかなり無理をした。

 細くなる胴体後方までなるべく多くのコンテナを積めるように、客室後方の床を高くしてベリーの広さを確保したのだ。そのため、これらの旅客機の客室窓の並びを見ると、後方がやや少し上がっている。

天井裏には十分なスペースがないA330やA340のために、ベリーに搭載できるように作られた可搬式のクルーレスト。
天井裏には十分なスペースがないA330やA340のために、ベリーに搭載できるように作られた可搬式のクルーレスト。
写真左はA340のクルーレストの内部。
写真左はA340のクルーレストの内部。横になって眠ることができるベッドや、客室とつなぐ階段などが設けられている。また、写真右のA340-600ではベリーのスペースにラバトリーを設けており、キャビンから階段で行き来できた。階段上部には転落防止のドアが設けられている。

 ただし長距離路線でクルーが仮眠できるスペース(クルーレスト)が要求されるようになっても、A300の胴体径では天井裏に十分なスペースを確保することができない。

 そこでエアバスは、長距離運航が可能なA330やA340の開発とあわせて貨物室に設置できるクルーレストを用意した。また胴体が長いA340-600では、ラバトリーまで床下に設けた。

ベリー後部の胴体が細くなっている部分は、バラ積み用の貨物室で、さらにネットでポジションが区切られている。
ベリー後部の胴体が細くなっている部分は、バラ積み用の貨物室で、さらにネットでポジションが区切られている。

 胴体が細くてコンテナを搭載できない最後部は、どの旅客機もバラ積み貨物室(バルク)として利用している。ここには小さな貨物ひとつひとつをグランドハンドリングスタッフが手作業で搭載する。

 もちろんこうした貨物も機体のバランス(重心)に影響するため、そして荷崩れを防止するために、バルクはネットで仕切るようになっている。

A321のベリーには、オプションでコンテナを搭載できるようにしている。
A321のベリーには、オプションでコンテナを搭載できるようにしている。ただしLD-3よりも高さが低いコンテナを使用する。
737-800のベリー。
737-800のベリー。最新の737MAXでもコンテナは搭載できないが、スライド式の床面を装備して搭載作業を効率化している。

 ナローボディ旅客機では、A320ファミリーのみがベリーにコンテナを搭載でき、737はすべてバラ積みだ。

 ワイドボディ旅客機と比べると天井が低く、搭載作業はかなり大変そうだが、スライド式の床を装備して少しでも効率的に作業を行えるようにしている。

737のベリー用のカーゴドアは内側に開く。
737のベリー用のカーゴドアは内側に開く。それだけ貨物スペースは小さくなるが、ドアの構造は簡単で軽量化できる。
777のULD用カーゴドア(外開き式)とバルク用のカーゴドア(内開き式)。
777のULD用カーゴドア(外開き式)とバルク用のカーゴドア(内開き式)。バルクはひとつひとつの貨物を手作業で積み込む。

 ちなみにコンテナを搭載できる貨物室とできない貨物室の違いは、カーゴドアが開く方向にも表れている。

 コンテナ搭載可能なカーゴドアは内部のスペースを圧迫しない外開きなのに対して、コンテナを搭載できない貨物室のカーゴドアは内側に開くようにして、簡単な構造で与圧に耐えられるようにしている。

関連キーワードもチェック!