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ANA、神戸空港に電動GSE導入。神戸市が急速充電器設置

ANAと神戸市が神戸空港で電動GSE車両のデモンストレーションを実施。航空会社が共用できる急速充電器を自治体が設置する国内初の取り組みで、GSEのEV化に伴う課題解決の先駆けとなることに期待がかかる。

文:竹信大悟 写真:竹信大悟
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 全日本空輸(ANA)と神戸市は10月14日、神戸空港においてGSE(航空機地上支援機材)向けの急速充電設備を新設し、電動GSE車両の運用を開始した。空港管理者である行政(神戸市)が制限区域内にGSE用急速充電設備を整備し、航空会社が共用するのは国内初の事例となる。

 今回導入された急速充電器は、米Ampure Charging System製「PosiCharge DVS330」。定格出力は33kW、最大電流500Aで、2台の車両を並列充電できるほか、1台の車両を倍速で充電するモードにも対応する。異なる種類の車両にも給電可能で、30〜50分程度でフル充電が完了する。

 神戸市は空港管理者としてインフラ整備を担当し、ANAが車両運用を担う。行政が設備を設け、民間航空会社が共用する全国の空港に先駆けた試みとなった。

神戸空港制限区域内に設けられた共用充電設備。全部で4基設置され、同時に8台の充電が可能。
神戸市が空港制限区域内に設置した充電設備と、ANAが導入したトヨタL&F製トーイングトラクター。

 ANAは急速充電設備の設置を受け、10月10日から神戸空港でEV GSE車両の運用を開始。現在は3台が稼働しており、年度内にさらに2台の導入を予定している。

 導入されたのは、トヨタL&F製の電動トーイングトラクター(通称TT車)2台と、TLD製の電動ベルトローダー1台。TT車はコンテナドーリーなどを牽引し、ベルトローダーは手荷物や貨物を航空機の貨物室へ搬入する際に使用される。実際に作業にあたるハンドリングスタッフによると、従来型TT車からの乗り換えでも違和感はなく、牽引時の発進もスムーズだという。

 ANAが神戸空港で保有するGSEは約100台(ドーリー台車などを含む)で、このうち動力をもつ車両は33台。今後は段階的に電動化を進めていく計画だ。

ANAが導入したEV GSE。トーイングトラクター(手前)と電動ベルトローダー(奥)。
EV GSE トーイングトラクター(通称TT車)に充電コネクターを差し込む。
充電器を起動させるANAグランドスタッフ。1台の充電器で車両2台の充電が可能。

 10月14日早朝、神戸空港制限区域内で開かれた発表会には、神戸市の今西正男 副市長とANAオペレーションサポートセンター長の岡 功士上席執行役員が登壇した。

 今西副市長は「神戸市では、2050年度までに空港からの温室効果ガスを100%削減し、カーボンニュートラルを目指す。まずは2030年度までに2013年度比46%削減を目標としており、今回の充電設備設置はその象徴的な取り組み」と語る。

 さらに、「2013年度時点で神戸空港全体のCO2排出量は年間約3,930トン。このうち施設由来は約3,580トンから約2,120トンまで減ったが、空港車両は約340トンから約390トンに増加しており、GSEの電動化が喫緊の課題」と指摘。「各社任せでは進みにくい分野を行政が一括整備で支えることで、一気に脱炭素化を進めたい。港湾ではすでに環境対応が進んでおり、空港でも必ず同じ流れが来る。地球温暖化対策に積極的に取り組むことが、世界から選ばれる空港につながる」と強調した。

報道陣の前で概要の説明をするANA 上席執行役員 オペレーションサポートセンター長 岡功士氏(左)と神戸市副市長今西正男氏(右)。

 一方、ANAの岡 上席執行役員は「数年前から神戸市様と脱炭素化に向けて検討を進めてきた。その結果として今回の急速充電設備の設置に至った」と経緯を説明。

 同氏によると、ANAグループでは全国で約180台のEV GSEを導入しているが、全体の4.5%にとどまっている。「急速充電設備の整備が進まないことが、導入の壁の一つになっている」とし、「GSE車両は1台あたり約20年使用されるため、早期の更新を進めたいが、設備投資負担も大きい。充電インフラが整っていなければEV化は進まない。今後は自治体との協力体制が不可欠。今回の神戸のように行政と民間が協働するモデルを全国に広げていきたい」と展望を語った。

 ANAでは航空機の運航だけでなく、地上支援・整備・運航管理など非航空機部門でも2050年度までにCO2排出量実質ゼロを掲げており、今回の神戸空港での取り組みを「行政と民間の連携による環境対応モデル空港の第一歩」と位置付けている。

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