実は同じモデル? まったく違うように見えても同じルーツを持つビジネスクラスシート
エコノミークラスのシートは、一人あたりのスペースが限られているため、個人用モニターの大きさなどに違いはあっても、“椅子”としての差は大きくありません。
一方、ビジネスクラスやファーストクラスのシートは、エアラインごとにデザインや仕様に個性が表れます。ですが実は、まったく別物に見えても同じモデルをベースにしているケースが少なくないのです。今回は、そんな“共通のルーツを持つシート”に注目してみましょう。


Photo:SAS
シートメーカーの基本モデルをベースに作られる
個性的でバラエティ豊かな航空機シートですが、なかでもビジネスクラスやファーストクラスのシートは、エアラインのサービス水準を象徴する存在として、多くの人から注目を集めています。見た目はもちろん、豪華な設備を備えたシートは、座ること自体が旅の目的のひとつになることもありますよね。移動時間を快適に楽しみたいと思うなら、シートは非常に重要な要素です。
ただし、安全性や性能が厳しく求められるため、製造できるメーカーは世界的に限られています。代表的なメーカーとしては、サフラン(フランス)、コリンズ・エアロスペース(米国)、レカロ(ドイツ)、ステリア(フランス)、トンプソン(英国)などがあります。日本では、ラバトリーの分野で世界的シェアを持つジャムコが、シンガポール航空のエアバスA350向けビジネスクラスシートを開発・製造するなど、国際的に活躍しています。
主要メーカーはクラス別に標準モデルを用意しており、航空会社はそのモデルをベースに、自社のニーズに合わせて仕様やデザインをカスタマイズするのが一般的です。シートカバーの素材や色、収納のデザイン、個人用モニターの機能やサイズなどはエアラインごとに異なりますが、実は同じモデルをもとに作られていることが多いのです。
トンプソン「ヴァンテージXL」の場合
英国トンプソンが用意するビジネスクラスの標準モデル「ヴァンテージ(Vantage)XL」は、長距離国際線向けの上位モデルで、座席を前後にジグザグに配置するスタッガード型を採用しています。人気の高いモデルで、日本路線ではスカンジナビア航空が2015年にエアバスA340へ導入したのをはじめ、エバー航空、カンタス航空、吉祥航空、南アフリカ航空なども採用しています。
さらに、デルタ航空の「デルタ・ワン スイート」や中国東方航空のエアバスA350に搭載されている、ドア付きの個室型シートも「ヴァンテージXL」をベースに開発されたものです。一見するとまったく別物に見えるシートも、実は同じモデルをルーツにしているのです。
つまり、基本は同じシートでありながら、エアラインごとに工夫されたカスタマイズやデザインによって独自のブランディングが生み出されているといえるでしょう。
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