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セントレアの代替滑走路。深夜に実施されるその工事の最前線へ!

既存滑走路の大規模修繕への対応や、完全24時間化の実現のため、4月1日より代替滑走路の整備事業に着工したセントレア。既存の誘導路を滑走路に転用するこの工事は、航空機の発着回数が少ない夜間に実施されている。7月31日の深夜、本体工事が進行中の現場へと向かった。

文:中井俊治 写真:中井俊治
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トラフィックが多い昼間は資材搬入や航空灯火施設の敷設などを行ない、地盤改修など重機を使った工事は夜間に実施される。

滑走路2本で万全の体制に。将来のトラフィック増加に期待も

 開港から20年が経過し、航空機の離着陸により生じた路面のクラックやポットホール(穴)、轍掘れなどの経年劣化により、滑走路に蓄積されたダメージに対するケアが急務となっていた中部国際空港セントレア。滑走路のメンテナンスは週あたり10時間を基準に実施されているが、劣化した舗装面を切削して再舗装するといった大規模修繕が今後必要になる。その方法について検討が重ねられた結果、現滑走路に平行するA誘導路を転用する形で代替滑走路を整備することが決定。その工事が2025年4月から始まった。

 滑走路が2本あれば、現滑走路の大規模修繕期間中でも、もう1本の滑走路で航空機の発着が可能となる。また日々のメンテナンスについても、現在は深夜帯に滑走路を一時閉鎖して実施しているが、代替滑走路によって完全24時間化が可能となり、深夜早朝帯に運航されている国際貨物便の自由度が高まるほか、将来のトラフィック増加にも対応できるのだ。

現地で工事の説明をする中部国際空港テクニカルコネクト株式会社 執行役員の伊藤真弘氏。24時間発着がある空港の業務に支障がでないようにすることを第一に工事を進め、2027年度中の運用開始を目指している。
滑走路は既存の誘導路より幅が広いため、拡幅工事が必要となる。拡幅部分の地盤改修工事では、まず表土(草地)の除去を実施。粉塵飛散防止のためローラーによる転圧と薬剤の散布が行なわれたのち、舗装工事へと移行する。
工事は滑走路両端付近から進行中。夜間に実施される工事では、航空機の運用に影響がないよう、施工エリアの照明は最小限の範囲のみを照らす。

 離着陸が落ち着く深夜の時間帯に公開された工事の様子。既存誘導路を代替滑走路に転用するにあたり、路床·路盤の拡幅が必要となるが、現場では誘導路に隣接する緑地帯の表土をドーザーで削り、ローラーで転圧する作業が公開された。

 稼働中の24時間空港において、整備工事を同時進行させるプロジェクトは日本国内ではあまり例を見ない。取材中もフレイター機の離着陸があったが、夜間作業中は特に安全対策が徹底されており、すべての工事車両がGPS端末で一括管理されている。万が一工事車両がエリア外に入ってしまった場合、警告音が作動するなど誤侵入を検知。また航空機に対しても、大型の進入防止灯で注意喚起をしている。

 代行滑走路の工事は約2年で完了する予定。国土交通省航空局の飛行検査などを経て、2027年度からの供用開始を目指している。

閉鎖されている誘導路への航空機の誤進入を防ぐため、現滑走路とを結ぶ誘導路には視覚的にも有効な高輝度LEDを使った進入防止灯が設置されている。
工事車両が施工エリアへ出入りしたり、誘導路を横断したりする際の安全確保のため、現場監視員および先導・後尾警戒車が配置されている。工事車両はGPSを使った運行支援システムにより一元管理され、誤進入などを防止している。
日付が変わる直前にソウルから到着したDHLカラー機、カリッタ航空のK4 217便。使用機材はボーイング777F(登録記号N775CK)だ。
深夜0時、台北から到着したJALの貨物便、JL6718便。使用機材は767-300BCF(JA621J)。航空機が24時間行き交うエリアでの工事においては、安全管理が最重要課題だ。
代替滑走路整備事業の概要を表した図。整備完了後、現滑走路はRWY36L/18Rに、代替滑走路はRWY36R/18Lとなる。Image: CJIAC
既存滑走路の大規模修繕への対応や、完全24時間化の実現のため、4月1日より代替滑走路の整備事業に着工したセントレア。既存の誘導路を滑走路に転用するこの工事は、航空機の発着回数が少ない夜間に実施されている。7月31日の深夜、本体工事が進行中の現場へと向かった。

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