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不思議な世界が広がる出雲空港でのヒコーキ撮影と、気になるその行方
飛来する航空機の便数や種類だけでは言い尽くせない、日本各地のエアポートそれぞれにある撮影の魅力。たとえばここ、島根県の出雲空港はどうだろう。その“縮尺模型的風景”に魅せられて同地を訪れる、柏 博幸カメラマンが語る撮影シーンの先にある時代の変化。
まるで空港の中に家があるような不思議
トラフィックが少ない地方空港へはつい腰が重くなってしまうものの、それでも毎年通ってしまう魅力が出雲空港にはある。
出雲空港の魅力はなんと言っても民家(農家)が空港のすぐそばに並んでいること。着陸機が屋根の上を降りてきたり、離陸機が家の後ろから飛び出してきたりする様子は、まるでジオラマの世界に飛行機が飛び込んできたかのような面白さがあり、いつもコビトになった気分でロケハンに奔走している。
定期便はボーイング737やエンブラエル機が中心で、それでも望遠で圧縮すればそれなりに迫力は感じられるものの、やはり被写体が大きいに越したことはない。嬉しいことに羽田線の一部には767も投入されているため、これがメインターゲットとなる。
リフトオフのタイミングは便毎に異なるため、狙った民家と767が見事にハマってくれた時には喜びも5つ星となる。ただ、光線状態を含めるとチャンスは1日1度。そのため外れた時の悔しさも5つ星となり、気が付けば今年はひと月ほどの間に3回も遠征してしまった。
ターミナルのとなりには滑走路を見渡す公園がある他、宍道湖に面した東側の滑走路末端を通って空港のほぼ全方位から撮影できるのも嬉しく、せっかく良い空港を見つけたと思っていた矢先、民家の前で撮影中に農家の方から思わぬ話を聞いてしまった。
「この辺りの家はそのうち移転する」と。
報道によれば、空港の運用を1時間延長することで1日あたりの発着枠を10便増の50便とする計画があり、2026年度の運用開始を目指して滑走路近くの民家移転などを進めるという。
現在の出雲空港の運用時間は7時半~20時半。今年4月にはJALの羽田行き最終便が1分遅れで離陸して、島根県から過料5万円を科されたという問題も起きている。
民家の立ち退きは実質的な空港の運用拡張に伴う騒音対策ということのようだが、それにより出雲空港のランドマークである民家と撮影できなくなってしまうとすれば、とても残念なこと。このダイナミックでシュールなシーンを記録できるのも、あとどれぐらいだろうか。