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第5回 北陸新幹線 金沢~敦賀間延伸開業

文:新幹線EX編集部 写真:新幹線EX編集部
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芦原温泉駅で開催された出発式の様子。芦原温泉駅には、観光に利用しやすい時間帯に「かがやき」も停車することから、北陸新幹線に大きな期待が寄せられている。写真提供/JR西日本

延伸区間各駅で新幹線を歓迎

 2024年3月16日、北陸新幹線金沢~敦賀間が延伸開業した。1973年11月に全国新幹線鉄道整備法で、北陸新幹線(東京~高崎~金沢~大阪間)の整備計画が決定してから半世紀。ようやく延伸開業となった。
 とくに福井県にとっては、初の新幹線であり、東京直行の列車は、1982年11月の上越新幹線開業とともに姿を消した夜行急行「越前」以来、約40年ぶりの復活である。2015年3月の北陸新幹線金沢開業により、富山・金沢が東京と直結し利便性が向上したなか、福井県は空港もないこともあって、東京からはやや行きにくい印象があったが、この開業によって、東京~福井間は最速2時間51分で結ばれることとなった。
 延伸区間の各駅では、初列車に合わせて開業式と出発式が行われた。出発式は、各駅コンコースで開催され、国会議員や県知事などの来賓らによる挨拶などが行われ、その後プラットホームに上がり、テープカットやくす玉開花などが開催され、各駅は多くの人でにぎわったという。敦賀駅には約800人、福井駅・金沢駅には各々500人が来場し、開業を祝った。
 なお、整備新幹線のスキームにより、並行在来線の北陸本線金沢~敦賀間は第三セクターに移管され、石川県内(金沢~大聖寺間)はIRいしかわ鉄道に、福井県内(大聖寺~敦賀間)は新たに発足したハピラインふくいに継承された。

開業まで半世紀

 前述のとおり、北陸新幹線の整備計画自体は、1973年11月に決定しており、以来オイルショックによる停滞や、国鉄分割民営化による影響などから建設は遅々として進まず、最初の高崎~長野間が開業したのは、24年後となる1997年10月のことであった。その後、ミニ新幹線(在来線の軌間を新幹線と同じ1435㎜に改軌して直通させる)の案があったり、スーパー特急(新幹線企画の狭軌による鉄道)の案があったりしたものの、最終的にはフル規格での整備が決定している。
 今回の金沢~敦賀間は、2012年8月に着工しており、開業まで12年弱の期間を要している。この間、2015年1月には政府・与党で2023年春の開業が決定したものの、2020年3月には加賀トンネルにおいて盤ぶくれが発生し、追加工事が発生。2020年12月には開業が1年遅れの2024年春となることが決定している。
 なお、北陸新幹線を含めた整備新幹線は、鉄道・運輸機構の手によって建設され、その施設も鉄道・運輸機構が保有し、営業主体となるJR各社に有償で貸し出される形となっている。

北陸新幹線の整備効果

 北陸新幹線の延伸開業により、東京と石川・福井県内の往来が非常にしやすくなったメリットのほか、北陸3県内の移動がスムーズになったこともメリットとして挙げられよう。従来の特急「サンダーバード」に乗っていても、北陸3県内の相互利用が非常に多かったのが印象的であった。これにより、経済が活性化され、進学先の選択肢が広がるなど、北陸地方の生活様式がいっぺんすることだろう。
 整備新幹線の開業は、経済効果や速達性が注目されやすいが、一番のメリットは「国土強靭化」にあるといって過言ではない。新幹線は、在来線に比べて大雨や大雪、地震などの災害に対してきわめて強靭な乗り物である。その強靭な乗り物で北陸3県が結ばれたというのは、大きなメリットであろう。実際、大雪でほかの交通機関は完全にマヒしていても、新幹線だけは定時で走ることが多い。その強靭さを生かして、こうした災害の際に、医療関係では緊急の医薬品を手荷物として運ぶことだってあるという。
 さらに、敦賀は関西の交通網の最東端に位置する土地である。そこまで北陸新幹線が延伸したことにより。東海道新幹線のバイパスとして機能することも期待されよう。
 北陸新幹線は、新大阪まで到達して初めて完成する乗り物である。当面は敦賀駅での乗り換えが発生することになるが、1日も早い全線での整備が期待されるところである。

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