連載

IFR(計器飛行方式)とVFR(有視界飛行方式)の違い ~ 連載【月刊エアライン副読本】

文:阿施光南 写真:阿施光南
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【連載】ヒコーキがもっと面白くなる! 月刊エアライン副読本
「空のエンターテインメント・メディア」として航空ファンの皆さまの好奇心と探究心にお応えすべく、航空の最前線、最先端技術などを伝えている月刊エアライン。そんな弊誌でテクニカルな記事や現場のレポートを中心に執筆に携わる阿施光南氏が、専門用語やテクノロジーをやさしく紹介するオリジナルコラムです。

IFRとVFR

 航空機の飛び方には、IFR(計器飛行方式)とVFR(有視界飛行方式)がある。ただ計器飛行といった場合は、飛行機の姿勢や高度、速度、位置や進路などを、外の景色に頼らずに計器だけを見て判断する飛行のことをいう。

一般向けには、盲目飛行という言葉が使われることもある。ただし計器飛行方式となると、少し意味が変わってくる。パイロットに計器飛行のスキル(資格)は必須だが、外が見える状況ならば積極的に外を見張ることを求められている。

一方の有視界飛行方式では、パイロットは主に外の景色に頼って飛ぶが、まったく計器を見ないわけではない。というよりは、計器も見なくては飛べない。つまり計器飛行方式も有視界飛行方式も、どちらも外と計器の両方を見て飛ぶのが基本である。

計器飛行の訓練では、訓練生(左席)は外が見えないよう視界をさえぎるフードをつけて、計器だけを頼りに操縦する。
計器飛行の訓練では、訓練生(左席)は外が見えないよう視界をさえぎるフードをつけて、計器だけを頼りに操縦する。チラリと横を盗み見することもできそうだと思うかもしれないが、それでは自分の力にならない。訓練の目的は自分を鍛えることだ。
視程5km、雲底300m以上でなくてはVFRでは飛ぶことができない。雨が降っていてもこれらの条件を満たす日はあるが、雲を突き抜けることはできないから雲の下をウロウロするしかない。
視程5km、雲底300m以上でなくてはVFRでは飛ぶことができない。雨が降っていてもこれらの条件を満たす日はあるが、雲を突き抜けることはできないから雲の下をウロウロするしかない。

 実際には雲の中というのは深い霧に包まれるのと同じで、特に面白いものではない。しかも外の景色から姿勢を判断することもできなくなるから、計器飛行のスキルがないパイロットには危険である。あるいは計器飛行の資格を持つパイロットでも、周囲の様子まではわからないから、他の航空機が接近していても衝突するまで気づかないかもしれない。そこで天気が悪いときには、パイロットの目視以外の安全対策が必要になる。それが航空管制であり、出発から到着まで、フライトのすべてのフェーズにおいて航空管制官に監視してもらい、その指示に従って飛ぶのが計器飛行方式なのだ。

管制画面(訓練用シミュレーター)では多くの航空機の動きを監視できるが、それぞれの航空機はこうした周囲の状況がわからない。だから管制官の指示や許可に従って飛ぶことで安全が確保されるのである。
管制画面(訓練用シミュレーター)では多くの航空機の動きを監視できるが、それぞれの航空機はこうした周囲の状況がわからない。だから管制官の指示や許可に従って飛ぶことで安全が確保されるのである。

 だから計器飛行方式では、パイロットはコース上に揺れそうな雲があるからといって、勝手に高度や進路を変えることはできない。事前に航空管制官の許可を得なくてはならないのだ。いささか窮屈なようだが、進路変更をしようとした先には別の航空機が飛んでいるかもしれない。航空管制官は、そうした周囲の安全を確認したうえで、変更の許可を出すのである。また、こうして航空管制官に見守られて飛ぶ安全性は、天気が悪いときだけでなく天気がいいときでも同じだ。だから旅客機は、天候に関わりなく計器飛行方式で飛ぶことになっているのである。

旅客機は、天候に関わりなく計器飛行方式で飛ぶことになっている。
旅客機は、天候に関わりなく計器飛行方式で飛ぶことになっている。
空を飛べるようになったら雲に触れたり突き抜けたりして遊びたいと夢見る人もいるだろうが、VFRでは雲に入ることは認められていない。
空を飛べるようになったら雲に触れたり突き抜けたりして遊びたいと夢見る人もいるだろうが、VFRでは雲に入ることは認められていない。雲から十分に離れて飛ばなくてはならないのだ。

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