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スパム缶を買うために日帰りで沖縄へ行ったら、朝帰りになった話

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空港行きのバスの中で、全てを知る

遅延を知った時点でのFlightradar24の羽田空港のスクリーンショット。この時はまだ地上作業は再開されておらず、作業中断以降に着陸した飛行機が、誘導路上に滞留しているのがわかります。
遅延を知った時点でのFlightradar24の羽田空港のスクリーンショット。この時はまだ地上作業は再開されておらず、作業中断以降に着陸した飛行機が、誘導路上に滞留しているのがわかります。Courtesy of Flightradar24.com

 ディナーの後は再びバスで空港に向かいます。その道中にJALアプリを開くと、そこには「遅延」の2文字。搭乗予定だった20時30分発のJAL922便に使用される機材は、羽田を16時55分に出発するJAL923便で到着するのですが、この時点で923便の出発時間からはすでに2時間が経過。なのに、飛んでいなかったのです。

 Flightradar24で羽田空港を見ると、誘導路に到着機が無数に並んでいました。そう、この日は16時30分すぎ〜19時すぎまで、雷のため羽田の地上作業が全てストップしていたのです。翌日は予定があったので、できればその日のうちに帰りたかった筆者。923便が飛ばなければ機材がない=欠航になるリスクが高い922便とは異なり、1つ前のJAL920便の機材は那覇に到着済み。同便は満席だったものの、カウンターで空席待ちを入れていただき、とりあえずゲートに向かいます。

空席待ちは無事に成功、想像よりも早くボーディング開始

最近はもっぱらアプリで搭乗するため、久しぶりに見たJAL国内線の紙搭乗券。
最近はもっぱらアプリで搭乗するため、久しぶりに見たJAL国内線の紙搭乗券。

 幸い、JAL920便のラスト2席のうち1席をゲットできた筆者。しかし、隣のゲートではひとつ前のJAL918便もまだ搭乗開始しておらず、いずれの便も出発時刻未定となっていました。でもこの頃になると羽田空港の地上作業は再開されていて、ディレイの原因は羽田にこれ以上到着機が溢れないよう、航空管制による出発時刻(EDCT)の調整が入っているためです。とりあえず本日中に帰ることはできそうなので、気長に待とうとしたら…早くも20時10分ごろには搭乗を開始。結局、元のJAL922便と同じくらいの時間に帰れそうです。

帰れることに安堵しながら、ボーディング完了を待ちます。それにしても今回は反射を防ぐ忍者レフの必要性、そしてカメラはオーバーヘッドビンではなく手元に置いておくべきことを、何度も痛感しました(以降は全てスマホでの撮影です)。
帰れることに安堵しながら、ボーディング完了を待ちます。それにしても今回は反射を防ぐ忍者レフの必要性、そしてカメラはオーバーヘッドビンではなく手元に置いておくべきことを、何度も痛感しました(以降は全てスマホでの撮影です)。

フライトは至って順調、でも本当の試練は羽田に降りてからだった

 羽田に近づくにつれてFlightradar24を確認すると、まだまだ誘導路には多数の到着機が待機している状態。でもフライト自体は順調で、房総沖でのちょっとしたホールドを除けば、羽田までスムーズでした。しかし、本当の試練は着陸後に待っていたのです。

 RWY34LにタッチダウンしたJAL920便は、第1ターミナルとは反対の左側に滑走路を離脱。そして向かった先は、まさかの第3ターミナル方向でした。ここで機長から、駐機待ちの飛行機が多数いること、そして到着時間が未定だということがアナウンスされました。シートベルトサインが消灯し、自由に化粧室を利用できるようになったほか、客室乗務員の皆さんがドリンクサービスを実施。上空でスカイタイムを飲んでから時間が経っていたので、筆者もお茶をいただきました。

 その後、展望デッキ前を通過し“第3ターミナルツアー”を実施した搭乗機は、P誘導路上、P10とP11誘導路の間(第3ターミナルサテライト横)で停止。最終的にはこの位置で2時間ほど待機することに。特にファミリー層が多い週末の那覇線。待機中も客室乗務員の皆さんがこまめに巡回し、丁寧に乗客のケアにあたっていました。

国内線機が普段まず通ることのない、第3ターミナル目の前のV-TWYを通過。X(旧Twitter)を見ていると、この時のJA16XJと、その窓から顔を覗かせる筆者を展望デッキから捉えていた方が何名かいました。
国内線機が普段まず通ることのない、第3ターミナル目の前のV-TWYを通過。X(旧Twitter)を見ていると、この時のJA16XJと、その窓から顔を覗かせる筆者を展望デッキから捉えていた方が何名かいました。

着陸から3時間後、ついに「明日の翼」が流れる

 P誘導路上での待機開始から約2時間、第1ターミナル近くへの移動指示があったとのアナウンスが入り、再び乗員・乗客全員が着席。そしてA滑走路を横断すると、元々搭乗予定だった最終のJAL922便と並びました。ほどなくして「スポット12番に決定、まもなく到着見込み」と機長からアナウンスが!

 着陸から約3時間、那覇を出発してから5時間46分後の午前2時32分、JAL920便は12番スポットへ到着。まもなく流れ出したJAL降機時の音楽、「明日の翼」が、疲れた身体に染み渡ります。到着後、預け荷物がなかった筆者はそのまま到着出口へ。タクシースタンドは長蛇の列でしたが、配車アプリでは幸い3分で車が到着し、午前3時過ぎには無事に帰宅できました。

12番スポットで翼を休める搭乗機JA16XJ。降機後はあまりの珍しさに、ゲート付近の時計と記念撮影を楽しむ人の姿もありました。
12番スポットで翼を休める搭乗機JA16XJ。降機後はあまりの珍しさに、ゲート付近の時計と記念撮影を楽しむ人の姿もありました。

買ってきたスパム缶を早速調理! 沖縄まで行った価値はあったのか?

 帰宅して2日後、せっかく買ってきたので、早速お昼にスパム丼を作って食べました。ひと口食べたら、「これだけの時間とお金をかけて、沖縄まで買いに行った甲斐があったな」と思い…ませんでした! 正直。どれだけスパム缶を買っても、決して航空券代の元を取ることはできないと思うので、良い子は真似しないことをおすすめします(笑)。でもやっぱりスパムは美味しいですし、何より今回は帰りのフライトで色々とレアな体験ができたので、楽しい夏の遠足になりました。

 最後に、この日はすべての便がゲートに到着できたのが、午前4時30分すぎだったとのこと。欠航した便も多かったようで、大変な状況の中、帰宅できただけでも本当にラッキーでした。私たちを安全に目的地に届けるため、深夜、そして明け方までご尽力くださった乗務員の皆さん、地上スタッフの皆さん、OCCの皆さん、管制官の皆さんなど、全ての関係者の方々にこの場を借りて心から感謝申し上げます。

週明け月曜のお昼はスパム丼にしました。苦難を乗り越えて東京へやってきた特別なスパム。この日は夕方からラジオ出演があったので、上手くいくように願掛けも兼ねていただきました。
週明け月曜のお昼はスパム丼にしました。苦難を乗り越えて東京へやってきた特別なスパム。この日は夕方からラジオ出演があったので、上手くいくように願掛けも兼ねていただきました。
月刊エアライン編集部の日々のヒコーキ活動をユル〜く紹介する連載「ある日のヒコ活」。先日、スパムを買うために飛行機で沖縄に行ってきました。日帰りのちょっとした遠足となるはずが、まさかの事態で長くなった1日を振り返ります。

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