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ANAとJAXA、定期旅客便で世界初の大気自動観測を開始
ANAとJAXAは、定期旅客便を活用した世界初の大気成分自動観測を開始した。衛星技術を応用し、温室効果ガス削減に役立つデータ収集を目指す。
文:本誌編集部
ANAホールディングス(ANAHD)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、衛星リモートセンシング技術を活用し、定期旅客便による大気成分の自動観測を開始した。定期旅客便を用いた恒常的な自動観測は世界初となる。
両者は、ANAが運航する国内線のボーイング737型機の客室内に、大気成分を観測する装置を搭載。航空機の客室内から都市域における大気成分等を観測する技術開発は「GOBLEU(ゴーブルー)プロジェクト」として推進中である。
装置は、JAXAが温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」で培った観測技術を応用し、ANAHDとJAXAが共同で開発した。従来の衛星観測に比べ、航空機による観測は高頻度かつ詳細なデータ取得が可能となる。ANAの国内線ネットワークを活用することで、日本列島全体を網羅的に観測できる点も特徴だ。
都市部は人為起源の二酸化炭素排出量が全体の7~8割を占めるとされており、都市域での排出量削減策の検討や効果検証に役立つと期待されている。両者は2020年から、航空機内に観測装置を持ち込む形で実証実験を進めてきたが、今回、機体の一部改修により恒常的な観測体制を構築した。衛星による広域観測と航空機による詳細観測を組み合わせることで、より高精度な温室効果ガス観測網の構築を目指す。
ANAHDとJAXAは今後、観測データの種類を拡大し、国際機関や政府、自治体、民間企業などのニーズに応じたデータ利活用事業を展開する方針だ。脱炭素社会の実現に向け、科学的エビデンスの提供を通じて温室効果ガス削減に貢献するとしている。